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第62話 翡翠の一族
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エヴァルタ・リバーオウル。深緑色の髪と瞳をした、女性のトレジャーハンターだ。女性の細身でありながら、特定のチームを組まず、単独で活動し、特級となった。
見た目は20代後半程度——だが、年齢不詳。中央大陸の大国『ベルーナ』にその名前が登録されたのは、今から100年前である。彼女はその頃から、外見が一切変わっていない。
どころか、どんなに酷い怪我を負ってもいずれ元通りになるのだ。怪獣討伐の際に腕を喰われて失った時さえ、『生えてきた』。
しかしその治る速度は一般人と同じ程度で、彼女の体質を『再生』とは言えない。失った腕が完治するには、8年の時を要した。
だが、それでも不死身。彼女はどんな無茶もして、自身を顧みず、特級へと駆け上がった。
本人曰く、特級トレジャーを身体に取り込んだとのことらしいが、真偽は定かではない。
「伝説のハンターって訳だ。大先輩だな」
「…………そうね。探求心のままに生きてきたら、いつの間にかこんな所まで来ちゃった。時間も忘れて、旅をしていたなあ」
屋敷の2階に案内された。エヴァルタはこの屋敷に、ひとりの使用人も雇っていないらしい。それでいて、隅々まで清掃が行き届いている。少し不気味にも感じる空間だった。
「それでね。多分、ネヴァン商会が狙っているのは1階の展示品じゃなくて、『これ』だと思う」
ネヴァン商会がこの屋敷に送りつけてきた黒羽根。これは布告状である。例えこれまで無かったことで、明らかにエフィリス達を呼びつけるものだとしても、この場所を選んだ理由はある筈だ。
エヴァルタが、部屋の奥から白い杖を持ってきた。随分と古そうな、木製の杖だった。
「それは?」
「『王の杖』という、彼らの宗教で神聖視されているものなの」
「……何故、貴女が」
「ある未開地の遺跡にあったのよ。壁にそう書いてあったわ」
「書いてあった、って。古代語じゃないの?」
「ええ勿論」
エヴァルタはキョトンとする一同に、ウインクで応えた。
「古代語はもう、解読済みだからね」
「!」
この時代。世界地図の完成していないこの世界では、トレジャーハンターが活躍している。未開地には1万年前の滅んだ文明の遺跡があるのだ。そこから発掘される『トレジャー』は、現代の文明を進歩させる超技術が使われている。
遺跡各所に刻まれた古代文字は、まだ完全に解読されていない。筈である。
「あっ。これ内緒にしていてね。私はもう、この時代の発展に関わらないと決めてるから。個人的には良いけど、ギルドとか国には内緒でお願い」
「…………エヴァルタ。貴女は」
「これ以上は内緒。さ、屋敷に罠を仕掛けるんでしょ? 皆でさっさとやっちゃお」
それ以上、エヴァルタは何も言わなかった。包まれた謎が、古代文明レベルで遥かに大きいことは分かったが、本人も詳しくは言いたくない様子だったので、クリュー達もそれ以上は訊けなかった。
「……世界は広い。どれだけ広いか、まだ分かってない。『あんな人も居る』と、理解するしかないな」
「100年生きてお肌ツルツルの体質ねえ。羨ましいったらありゃしないわ」
旅の途中も常に自身のケアを欠かさないリディからも溜め息が出た。
「罠、と言ったな。ネヴァン用にか」
「ああ。サーガの腕の見せ所だぜ。なあ」
「そこまで言われると照れますがね。まあやれるだけやりましょう。幸い、周囲の森には素材が沢山あります」
ともかく、この屋敷にネヴァン商会が来る。迎え撃つ準備をしなくてはならない。あの杖を守ることは当然だが、『氷漬けの美女』とサスリカを取り戻す切っ掛けを作らなくてはならない。ここへ彼女を連れてくるような愚行はしないだろうが。
「いつでも来い」
「ああ。暴れたくて仕方ねえ」
ともかく、決戦である。
見た目は20代後半程度——だが、年齢不詳。中央大陸の大国『ベルーナ』にその名前が登録されたのは、今から100年前である。彼女はその頃から、外見が一切変わっていない。
どころか、どんなに酷い怪我を負ってもいずれ元通りになるのだ。怪獣討伐の際に腕を喰われて失った時さえ、『生えてきた』。
しかしその治る速度は一般人と同じ程度で、彼女の体質を『再生』とは言えない。失った腕が完治するには、8年の時を要した。
だが、それでも不死身。彼女はどんな無茶もして、自身を顧みず、特級へと駆け上がった。
本人曰く、特級トレジャーを身体に取り込んだとのことらしいが、真偽は定かではない。
「伝説のハンターって訳だ。大先輩だな」
「…………そうね。探求心のままに生きてきたら、いつの間にかこんな所まで来ちゃった。時間も忘れて、旅をしていたなあ」
屋敷の2階に案内された。エヴァルタはこの屋敷に、ひとりの使用人も雇っていないらしい。それでいて、隅々まで清掃が行き届いている。少し不気味にも感じる空間だった。
「それでね。多分、ネヴァン商会が狙っているのは1階の展示品じゃなくて、『これ』だと思う」
ネヴァン商会がこの屋敷に送りつけてきた黒羽根。これは布告状である。例えこれまで無かったことで、明らかにエフィリス達を呼びつけるものだとしても、この場所を選んだ理由はある筈だ。
エヴァルタが、部屋の奥から白い杖を持ってきた。随分と古そうな、木製の杖だった。
「それは?」
「『王の杖』という、彼らの宗教で神聖視されているものなの」
「……何故、貴女が」
「ある未開地の遺跡にあったのよ。壁にそう書いてあったわ」
「書いてあった、って。古代語じゃないの?」
「ええ勿論」
エヴァルタはキョトンとする一同に、ウインクで応えた。
「古代語はもう、解読済みだからね」
「!」
この時代。世界地図の完成していないこの世界では、トレジャーハンターが活躍している。未開地には1万年前の滅んだ文明の遺跡があるのだ。そこから発掘される『トレジャー』は、現代の文明を進歩させる超技術が使われている。
遺跡各所に刻まれた古代文字は、まだ完全に解読されていない。筈である。
「あっ。これ内緒にしていてね。私はもう、この時代の発展に関わらないと決めてるから。個人的には良いけど、ギルドとか国には内緒でお願い」
「…………エヴァルタ。貴女は」
「これ以上は内緒。さ、屋敷に罠を仕掛けるんでしょ? 皆でさっさとやっちゃお」
それ以上、エヴァルタは何も言わなかった。包まれた謎が、古代文明レベルで遥かに大きいことは分かったが、本人も詳しくは言いたくない様子だったので、クリュー達もそれ以上は訊けなかった。
「……世界は広い。どれだけ広いか、まだ分かってない。『あんな人も居る』と、理解するしかないな」
「100年生きてお肌ツルツルの体質ねえ。羨ましいったらありゃしないわ」
旅の途中も常に自身のケアを欠かさないリディからも溜め息が出た。
「罠、と言ったな。ネヴァン用にか」
「ああ。サーガの腕の見せ所だぜ。なあ」
「そこまで言われると照れますがね。まあやれるだけやりましょう。幸い、周囲の森には素材が沢山あります」
ともかく、この屋敷にネヴァン商会が来る。迎え撃つ準備をしなくてはならない。あの杖を守ることは当然だが、『氷漬けの美女』とサスリカを取り戻す切っ掛けを作らなくてはならない。ここへ彼女を連れてくるような愚行はしないだろうが。
「いつでも来い」
「ああ。暴れたくて仕方ねえ」
ともかく、決戦である。
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