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第66話 情報戦の基礎知識
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「速攻です」
サーガが最初に口を開いた。一同は次の言葉を待つ。
「こちらへ来た敵兵は、マルさんが全員始末しました。『オルヴァリオさんが裏切りの裏切りをした』と知られる前に、突撃を仕掛けるべきです」
「そうだな。確かに今しかねえ」
エフィリスも同意した。クリューとリディも頷く。
「ど、どういうこと? 今まで慎重にやってきたのに」
「ああ。説明しよう」
マルがまた控えめに挙手をした。そしてまた、クリューが説明する。
「この前話したことの、延長線だ。オルヴァの裏切りによってこちらの情報が相手に筒抜けなのは非常に不利で危険。だが今はチャンスなんだ。何故ならオルヴァが、もう一度裏切ってこちらに帰ってきたからな」
「……ネヴァンの情報が、わたし達にも筒抜け?」
「その通り。今、ネヴァンはオルヴァがこちらに付いたことを知らない。さらに場所も知られた。知られたことも知らない。……だが、時間が経てば気付かれる。その前に、速攻を仕掛けて一気に勝負を決めるんだ」
「うん。分かったわ。ありがとう」
このような情報戦は、太古の昔から、いつの時代でも行われてきた。たったひとりの裏切りで、一気に形勢は逆転する。そして敗者は、負けるその時までそれに気付かない。
「……前から思ってたがよ。『それ』、ラビアの教育なのか? 随分と実戦的だ」
そして、『情報が重要』だと知らなければそもそも話にならない。何の教育もなく気付く者は稀である。多くのトレジャーハンターには教養が無い。彼らはハンターであり、軍人ではないのだ。だが、クリューとオルヴァリオ、そしてリディは。
「ラビア王国が平和なのは、国民が『戦争』を理解しているからだ。……よく言われる言葉でな。まあ確かに、教育レベルは他国と比べて高いかもしれん」
本来ならトレジャーハンターなどしなくても良い階級で育ったからこそ、最初から『対組織戦』の基本知識が身に付いていた。
「サーガも、俺達より教養がありそうだが。罠や仕掛け、毒の知識は少なくとも俺には無い」
「私のは独学ですからねえ。貴方がたより長く生きていますので、それだけですよ。そしてそれも、エヴァルタさんには遠く及びません」
「えっ」
不意に、名を呼ばれたエヴァルタがぽかんと口を開けた。
「……うーんと。私はもう引退してるからさ。何も盗まれてないし、ここも守ってもらったし。便利そうだから罠は残しておこうかなって。撤去にも時間掛かるでしょ? 速攻ならもう、明日には出ないとね、皆」
「……それは助かる。サーガのやつ調子に乗ってあらゆる箇所に仕掛けまくってるからな」
「一番ノリノリだったのはエフィリスです」
「ぬぐっ……」
結局、護衛の依頼は完遂となった。エヴァルタの所有する、ネヴァン信仰の『白い杖』も奪われなかった。今回は完全勝利と言える。
「でも、友達の特級ハンター達は結構やられてるからね。国や美術館じゃなくて、自分で管理しとけばよかったって嘆いてる手紙が来るよ」
「……へぇ。俺みたいに自ら立ち上がる奴は居ないのか」
「まあ、特級ハンターって暇じゃないしね。既にハントし終わったトレジャーだし、相手は誰も捕まえられないネヴァン商会だし。結局は警察に任せるしかないよね」
「ヘタレだな。俺ァ俺自身で奴らを突き止めねぇと気が済まねえ。ありゃ『俺の』トレジャーだ!」
エフィリスが立ち上がった。拳を突き出す。瞳には炎が見えた。
「…………良いこと考えたぜ。サーガ! 手配してくれ!」
「?」
「はいはい。また悪巧みですね」
瞳を燃やしたまま。エフィリスとサーガの口角が上がった。
サーガが最初に口を開いた。一同は次の言葉を待つ。
「こちらへ来た敵兵は、マルさんが全員始末しました。『オルヴァリオさんが裏切りの裏切りをした』と知られる前に、突撃を仕掛けるべきです」
「そうだな。確かに今しかねえ」
エフィリスも同意した。クリューとリディも頷く。
「ど、どういうこと? 今まで慎重にやってきたのに」
「ああ。説明しよう」
マルがまた控えめに挙手をした。そしてまた、クリューが説明する。
「この前話したことの、延長線だ。オルヴァの裏切りによってこちらの情報が相手に筒抜けなのは非常に不利で危険。だが今はチャンスなんだ。何故ならオルヴァが、もう一度裏切ってこちらに帰ってきたからな」
「……ネヴァンの情報が、わたし達にも筒抜け?」
「その通り。今、ネヴァンはオルヴァがこちらに付いたことを知らない。さらに場所も知られた。知られたことも知らない。……だが、時間が経てば気付かれる。その前に、速攻を仕掛けて一気に勝負を決めるんだ」
「うん。分かったわ。ありがとう」
このような情報戦は、太古の昔から、いつの時代でも行われてきた。たったひとりの裏切りで、一気に形勢は逆転する。そして敗者は、負けるその時までそれに気付かない。
「……前から思ってたがよ。『それ』、ラビアの教育なのか? 随分と実戦的だ」
そして、『情報が重要』だと知らなければそもそも話にならない。何の教育もなく気付く者は稀である。多くのトレジャーハンターには教養が無い。彼らはハンターであり、軍人ではないのだ。だが、クリューとオルヴァリオ、そしてリディは。
「ラビア王国が平和なのは、国民が『戦争』を理解しているからだ。……よく言われる言葉でな。まあ確かに、教育レベルは他国と比べて高いかもしれん」
本来ならトレジャーハンターなどしなくても良い階級で育ったからこそ、最初から『対組織戦』の基本知識が身に付いていた。
「サーガも、俺達より教養がありそうだが。罠や仕掛け、毒の知識は少なくとも俺には無い」
「私のは独学ですからねえ。貴方がたより長く生きていますので、それだけですよ。そしてそれも、エヴァルタさんには遠く及びません」
「えっ」
不意に、名を呼ばれたエヴァルタがぽかんと口を開けた。
「……うーんと。私はもう引退してるからさ。何も盗まれてないし、ここも守ってもらったし。便利そうだから罠は残しておこうかなって。撤去にも時間掛かるでしょ? 速攻ならもう、明日には出ないとね、皆」
「……それは助かる。サーガのやつ調子に乗ってあらゆる箇所に仕掛けまくってるからな」
「一番ノリノリだったのはエフィリスです」
「ぬぐっ……」
結局、護衛の依頼は完遂となった。エヴァルタの所有する、ネヴァン信仰の『白い杖』も奪われなかった。今回は完全勝利と言える。
「でも、友達の特級ハンター達は結構やられてるからね。国や美術館じゃなくて、自分で管理しとけばよかったって嘆いてる手紙が来るよ」
「……へぇ。俺みたいに自ら立ち上がる奴は居ないのか」
「まあ、特級ハンターって暇じゃないしね。既にハントし終わったトレジャーだし、相手は誰も捕まえられないネヴァン商会だし。結局は警察に任せるしかないよね」
「ヘタレだな。俺ァ俺自身で奴らを突き止めねぇと気が済まねえ。ありゃ『俺の』トレジャーだ!」
エフィリスが立ち上がった。拳を突き出す。瞳には炎が見えた。
「…………良いこと考えたぜ。サーガ! 手配してくれ!」
「?」
「はいはい。また悪巧みですね」
瞳を燃やしたまま。エフィリスとサーガの口角が上がった。
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