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第86話 開花
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「……!」
オルヴァリオが剣から手を離した。クリューは銃を放り投げて、すかさず彼の首根っこを掴みに掛かる。
「ぐぅっ!」
「来い!」
ガラン、と大きな音がする。オルヴァリオは今度こそ、抵抗しなくなった。クリューはそのままオルヴァリオを、『彼女』の前まで引き摺っていく。
「お前はずっと、グロリオの傀儡だった。いつからか知らないが、生来の物だと思っていたよ。その瞳の色。……今解くぞ。俺と同じように、彼女を見れば解ける筈だ。【心を浄化】して貰え」
「…………!!」
首を、頭を掴んで、ずるずると『彼女』の目の前へ差し出した。クリューも全身そこかしこから流血している。左腕は動かない。
「…………ぅ。……ぐぉっ」
右手でオルヴァリオの頭を抑える。彼はガタガタと震え始めた。
「や、やめろ……っ」
「黙れ。いくら親でも、子を洗脳支配して良い訳は無い。例えお前が親から支配されて育っていようとな」
グロリオの悲痛な叫びを一蹴。オルヴァリオに『彼女』を凝視させる。
『ますたー。もう解けます』
「……分かった。ありがとうサスリカ。ようやくだな。……髪も服装も整えたいが、仕方ない」
——
煌めく煙が、氷塊の底から湧き始めた。ひやりとした冷気が部屋を包む。風が舞い起こる。クリューの灰髪が靡く。
『彼女』を包み込んでいた氷塊は、ガラスのような透明な壁だった。ガコンという駆動音と共に、中の液体が流れ出てくる。空色の液体は煙と星明りで煌めいて、まるで床に天の川が現れた錯覚がした。
ガラス——と言っても、現代科学ではどうやっても傷ひとつ付けられなかった超物質だが。その箱が、開いていく。ゆっくりと、蕾が花開くように、上部の頂点から辺が分かれていって。
「…………げほっ」
「!」
『彼女』は、初めに咳をした。
『……もう、意識が』
「ごほっ。うっ。…………?」
そして、目を開ける。長年、謎だった彼女の瞳は。
髪と同じく、全てを吸い込むような漆黒だった。
「…………」
第一声。彼女はぼんやりとした意識の中、ぼやけた視界に入ったのは。
「………………かなた、君…………?」
「——!」
「げほっ」
『シロナ様っ!』
そう、ひとつ呟いて。咳と共に、崩れ落ちた。サスリカが駆け寄る。
「……ぅ。私、は……」
『シロナ様。ここは1万年後の世界。貴女様はコールドスリープで眠っていらっしゃったのです』
「…………えっ。なに、それ……。ぅ」
サスリカは現代語ではなく、1万年前の言葉で話し掛ける。
今。
全員が彼女に注目している。だが彼女だけは、逆方向が見えていた。
「……!」
「今しか無いっ。……最後に勝つのは俺だっ!」
グロリオが。
這いつくばりながら、なんとか精神支配の武器である宝玉を広い、ここまでやってきていた。
「『精神憑依』!!」
全員が集まっている。オルヴァリオも再度支配すれば良い。紫の光が、天の川を汚染していく。
『シロナ様! 能力を!』
「————っ!」
勿論サスリカに精神支配は効かない。今、グロリオを止められるものがあるとすれば。
「……っ! 『強制遮断』!」
彼女の中心から光の束が拡散し、グロリオの身体を吹き飛ばした。
「っ!?」
彼女の元から、今度は暖かい空気が流れ込んでくる。温度ではない。暖かいと感じる『何か』が、放出されたような気がしたのだ。
「…………!」
「オルヴァ!」
クリューの手からオルヴァリオも離れ、数メートル飛んで倒れた。彼は気絶してしまったようだ。
「ぐおお! うあぁっ!!」
グロリオの紫珠は砕けて割れ、彼はそのまま吹き飛んでガラスの壁を突き抜けて。
「ああああああっ!」
城の下へと落ちていった。
「……ぅっ」
『シロナ様っ!』
それを見送ったのも束の間、彼女もふらついて倒れた。サスリカが抱えるも、彼女も気を失ったようだ。
「………………なんだ、これは」
『……ますたー……』
その間。
クリューは、予想外の事が起きすぎて何もできなかった。ただ見ているしかなかった。
この場には、彼と彼女と、サスリカのみが残された。
オルヴァリオが剣から手を離した。クリューは銃を放り投げて、すかさず彼の首根っこを掴みに掛かる。
「ぐぅっ!」
「来い!」
ガラン、と大きな音がする。オルヴァリオは今度こそ、抵抗しなくなった。クリューはそのままオルヴァリオを、『彼女』の前まで引き摺っていく。
「お前はずっと、グロリオの傀儡だった。いつからか知らないが、生来の物だと思っていたよ。その瞳の色。……今解くぞ。俺と同じように、彼女を見れば解ける筈だ。【心を浄化】して貰え」
「…………!!」
首を、頭を掴んで、ずるずると『彼女』の目の前へ差し出した。クリューも全身そこかしこから流血している。左腕は動かない。
「…………ぅ。……ぐぉっ」
右手でオルヴァリオの頭を抑える。彼はガタガタと震え始めた。
「や、やめろ……っ」
「黙れ。いくら親でも、子を洗脳支配して良い訳は無い。例えお前が親から支配されて育っていようとな」
グロリオの悲痛な叫びを一蹴。オルヴァリオに『彼女』を凝視させる。
『ますたー。もう解けます』
「……分かった。ありがとうサスリカ。ようやくだな。……髪も服装も整えたいが、仕方ない」
——
煌めく煙が、氷塊の底から湧き始めた。ひやりとした冷気が部屋を包む。風が舞い起こる。クリューの灰髪が靡く。
『彼女』を包み込んでいた氷塊は、ガラスのような透明な壁だった。ガコンという駆動音と共に、中の液体が流れ出てくる。空色の液体は煙と星明りで煌めいて、まるで床に天の川が現れた錯覚がした。
ガラス——と言っても、現代科学ではどうやっても傷ひとつ付けられなかった超物質だが。その箱が、開いていく。ゆっくりと、蕾が花開くように、上部の頂点から辺が分かれていって。
「…………げほっ」
「!」
『彼女』は、初めに咳をした。
『……もう、意識が』
「ごほっ。うっ。…………?」
そして、目を開ける。長年、謎だった彼女の瞳は。
髪と同じく、全てを吸い込むような漆黒だった。
「…………」
第一声。彼女はぼんやりとした意識の中、ぼやけた視界に入ったのは。
「………………かなた、君…………?」
「——!」
「げほっ」
『シロナ様っ!』
そう、ひとつ呟いて。咳と共に、崩れ落ちた。サスリカが駆け寄る。
「……ぅ。私、は……」
『シロナ様。ここは1万年後の世界。貴女様はコールドスリープで眠っていらっしゃったのです』
「…………えっ。なに、それ……。ぅ」
サスリカは現代語ではなく、1万年前の言葉で話し掛ける。
今。
全員が彼女に注目している。だが彼女だけは、逆方向が見えていた。
「……!」
「今しか無いっ。……最後に勝つのは俺だっ!」
グロリオが。
這いつくばりながら、なんとか精神支配の武器である宝玉を広い、ここまでやってきていた。
「『精神憑依』!!」
全員が集まっている。オルヴァリオも再度支配すれば良い。紫の光が、天の川を汚染していく。
『シロナ様! 能力を!』
「————っ!」
勿論サスリカに精神支配は効かない。今、グロリオを止められるものがあるとすれば。
「……っ! 『強制遮断』!」
彼女の中心から光の束が拡散し、グロリオの身体を吹き飛ばした。
「っ!?」
彼女の元から、今度は暖かい空気が流れ込んでくる。温度ではない。暖かいと感じる『何か』が、放出されたような気がしたのだ。
「…………!」
「オルヴァ!」
クリューの手からオルヴァリオも離れ、数メートル飛んで倒れた。彼は気絶してしまったようだ。
「ぐおお! うあぁっ!!」
グロリオの紫珠は砕けて割れ、彼はそのまま吹き飛んでガラスの壁を突き抜けて。
「ああああああっ!」
城の下へと落ちていった。
「……ぅっ」
『シロナ様っ!』
それを見送ったのも束の間、彼女もふらついて倒れた。サスリカが抱えるも、彼女も気を失ったようだ。
「………………なんだ、これは」
『……ますたー……』
その間。
クリューは、予想外の事が起きすぎて何もできなかった。ただ見ているしかなかった。
この場には、彼と彼女と、サスリカのみが残された。
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