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第92話 クリュー・スタルース
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それから、シアのリハビリが始まった。彼女の筋肉は目に見えて少なく、とても痩せていた。食事と睡眠と運動。まずは『健康』にならなければならない。
「いたっ」
「おいおい。大丈夫か」
クリューが、その間付きっきりで看てくれた。今も、どたりと転けた彼女を抱きかかえて立たせた。
「……ごめんねクリューさん。付き合わせちゃって。お仕事大丈夫?」
「今はな、色んな事後処理中なんだ。ネヴァン事件の。全員拘束と言ったが、総勢25000人も居る。盗品のトレジャーは膨大な数がある。調査機関が『断崖線』を行き来しているが、それにも時間が掛かる。世界規模での被害と犯行で、しかも何十年も前からだからな。俺達も一応、療養という名目でこの屋敷に釘付けなんだ。と言っても解決の立役者だ。何もせずとも報酬は入ってくる」
「……ふぅん。エフィリスさんは忙しそうだけど」
「ああ。俺達が、手柄を全部エフィリスに押し付けたからな。あの男はルクシルアの英雄から、世界の大英雄に出世した。当分は冒険に行けないだろうな」
既に、シアは大陸語を修得している。彼女はそういう能力がある。精神力をエネルギーとして使う文明の生き残りだ。話す相手の【心】を敏感に感じることで、意思疎通を円滑にしている。
「報酬っていくらくらい?」
「100億だ」
「凄いじゃん」
「ああ。俺が、君を買おうとした額だ。今となってはもう、必要ないけどな」
「…………」
国際政府は、彼ら7人に巨額の報酬を支払うことになった。全世界の加盟国が、ネヴァン討伐を望んでいたからだ。
「……ねえ。じゃあ訊いて良い?」
「なんだ?」
シアは、クリューの肩を借りながら。少し頬を染めて、彼と目を合わせた。
「どうして私を買おうとしたの? 解かそうとしたの? こんなに怪我して。実家も飛び出したんでしょ? 銃まで使って。敵の本拠地に乗り込んで」
「…………」
クリューは。彼は、視線を全く外さなかった。シアの顔がどんどん赤くなっていく。
「それは、俺が君に一目惚れしたからだ」
「!」
一切、もったいぶらず。真っ直ぐ視線を合わせたまま彼は答えた。
「君は美しい。君を初めて見たのは10年前……いや、そろそろ11年になるな。その日からずっと、俺は君の氷を解かそうと考えていた。話がしたい、妻にしたい、とな」
「…………!!」
シアは。
弱々しく、クリューから離れた。壁に寄りかかり、ぺたんと座り込んでしまった。
両手で顔を覆う。
「ちょ……。待って」
「?」
「…………あの、ね。クリューさん」
「ああ」
確かに、彼女から振った話だが。ここまで、こんな、これだとは思わなかった。
「…………シロナの生まれた、私の知ってる国じゃね。急に真面目にそんなこと言われるなんて、無いから。……耐性が無いよ」
「……済まない。しかしどう伝えたものか」
「いや待って。……えっとね」
シアは、どう言えば良いか考える。クリューはその間、微動だにしない。彼女から離れたのだ。1ミリも、近付こうとはしない。彼女は動揺している。落ち着くのを待つ。
「……嬉しいよ? 嬉しい。えっと。だけどね。……ひと一目惚れって……。外見、だよね」
「ああ。だが目覚めた君は俺の想像していた100倍、魅力的な声や性格だった。どんどん好きになる」
「~~~~っ!!」
ちらりと指の間から見ると、常に目が合った。真剣な眼差し。一切の冗談は無いとはっきり分かる。
「だが、君は自由だ。シア」
「……えっ?」
「俺は、君が好きだ。君の嫌がることは絶対にしたくない。もし嫌なら言ってくれ。言いづらいならサスリカやエヴァルタを通して良い。俺は君が望むなら、君との関係性は友人でも他人でも良い」
「…………っ」
「だが、伝えなければならない。俺の本心は、願いは君の心を手に入れることだ」
「!」
真剣である。不純物は一切無い。塵芥ひと摘み分すら、挟める余地は無い。
今。この瞬間の為に。クリュー・スタルースという男は存在している。
「俺の妻になってくれ」
「…………!」
シアの思考と眼球が、果てしなくグルグルと回り始めた。
「いたっ」
「おいおい。大丈夫か」
クリューが、その間付きっきりで看てくれた。今も、どたりと転けた彼女を抱きかかえて立たせた。
「……ごめんねクリューさん。付き合わせちゃって。お仕事大丈夫?」
「今はな、色んな事後処理中なんだ。ネヴァン事件の。全員拘束と言ったが、総勢25000人も居る。盗品のトレジャーは膨大な数がある。調査機関が『断崖線』を行き来しているが、それにも時間が掛かる。世界規模での被害と犯行で、しかも何十年も前からだからな。俺達も一応、療養という名目でこの屋敷に釘付けなんだ。と言っても解決の立役者だ。何もせずとも報酬は入ってくる」
「……ふぅん。エフィリスさんは忙しそうだけど」
「ああ。俺達が、手柄を全部エフィリスに押し付けたからな。あの男はルクシルアの英雄から、世界の大英雄に出世した。当分は冒険に行けないだろうな」
既に、シアは大陸語を修得している。彼女はそういう能力がある。精神力をエネルギーとして使う文明の生き残りだ。話す相手の【心】を敏感に感じることで、意思疎通を円滑にしている。
「報酬っていくらくらい?」
「100億だ」
「凄いじゃん」
「ああ。俺が、君を買おうとした額だ。今となってはもう、必要ないけどな」
「…………」
国際政府は、彼ら7人に巨額の報酬を支払うことになった。全世界の加盟国が、ネヴァン討伐を望んでいたからだ。
「……ねえ。じゃあ訊いて良い?」
「なんだ?」
シアは、クリューの肩を借りながら。少し頬を染めて、彼と目を合わせた。
「どうして私を買おうとしたの? 解かそうとしたの? こんなに怪我して。実家も飛び出したんでしょ? 銃まで使って。敵の本拠地に乗り込んで」
「…………」
クリューは。彼は、視線を全く外さなかった。シアの顔がどんどん赤くなっていく。
「それは、俺が君に一目惚れしたからだ」
「!」
一切、もったいぶらず。真っ直ぐ視線を合わせたまま彼は答えた。
「君は美しい。君を初めて見たのは10年前……いや、そろそろ11年になるな。その日からずっと、俺は君の氷を解かそうと考えていた。話がしたい、妻にしたい、とな」
「…………!!」
シアは。
弱々しく、クリューから離れた。壁に寄りかかり、ぺたんと座り込んでしまった。
両手で顔を覆う。
「ちょ……。待って」
「?」
「…………あの、ね。クリューさん」
「ああ」
確かに、彼女から振った話だが。ここまで、こんな、これだとは思わなかった。
「…………シロナの生まれた、私の知ってる国じゃね。急に真面目にそんなこと言われるなんて、無いから。……耐性が無いよ」
「……済まない。しかしどう伝えたものか」
「いや待って。……えっとね」
シアは、どう言えば良いか考える。クリューはその間、微動だにしない。彼女から離れたのだ。1ミリも、近付こうとはしない。彼女は動揺している。落ち着くのを待つ。
「……嬉しいよ? 嬉しい。えっと。だけどね。……ひと一目惚れって……。外見、だよね」
「ああ。だが目覚めた君は俺の想像していた100倍、魅力的な声や性格だった。どんどん好きになる」
「~~~~っ!!」
ちらりと指の間から見ると、常に目が合った。真剣な眼差し。一切の冗談は無いとはっきり分かる。
「だが、君は自由だ。シア」
「……えっ?」
「俺は、君が好きだ。君の嫌がることは絶対にしたくない。もし嫌なら言ってくれ。言いづらいならサスリカやエヴァルタを通して良い。俺は君が望むなら、君との関係性は友人でも他人でも良い」
「…………っ」
「だが、伝えなければならない。俺の本心は、願いは君の心を手に入れることだ」
「!」
真剣である。不純物は一切無い。塵芥ひと摘み分すら、挟める余地は無い。
今。この瞬間の為に。クリュー・スタルースという男は存在している。
「俺の妻になってくれ」
「…………!」
シアの思考と眼球が、果てしなくグルグルと回り始めた。
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