GLACIER(グレイシア)

弓チョコ

文字の大きさ
93 / 99

第93話 花咲く夜

しおりを挟む
「……で、結局保留にしちゃったのね」
「…………うん……」 

 その日の夜。リディが使用している寝室に、女性陣が集まっていた。つまりリディ、シアに加えて、エヴァルタとマル、そしておまけでサスリカだ。
 シアはリディのベッドの上で、三角座りをしながら悩みを打ち明けた。

「でも受ける気なんでしょう?」
「!」

 皆にお茶を淹れたエヴァルタが、切り込んだ。

「…………わかんない」

 シアは自分の抱えた両足の間に顔を埋めて答えた。

「クリューが嫌って訳じゃ無いでしょ。毎日あんなに甲斐甲斐しくお世話されちゃって。もうお姫様扱いじゃない。あんなクリュー、見たことないわ」
「そうだよねえ。彼、あんまり表情に出さないし、普段冷静で真面目そうだから、ギャップがあるよねえ」
「そうそう。ああ、本当にこいつ、この子好きだったんだってやっと腹に落ちた感じ。今まで旅の途中で何度も好きだって言ってたけど、普通の顔してすまーして言うんだもん。本当か? って思うわよね」

 リディとエヴァルタがやいのやいのと語る。どんどん、シアの顔は埋もれていく。

「サスリカ。あんたはどう思う?」
『どうせ受けるのなら何故保留にしたのでしょう』
「!」

 サスリカも、ずぶりと切り込んだ。

「ね。薄々感じてたでしょシアも。クリューから好意持たれてるって」
「……うん」
「気付いていながら、毎日一緒に居たのよね」
「……うん」
「クリューは本当に本気よ? 実際あんたはどうなの。シア」
「…………」

 なんというか。シアは、アウェーだった。全員の【心】が、クリューを応援していると伝わってくる。当然だろう。彼は大切な仲間なのだから。

「…………なんていうか。まだもう少し、ふわふわした関係で居たいかな~って」
「何それ」
「……ぅっ」

 恐らくこれが、カルチャーショックなのだろうとシアは思った。相思相愛だと判明したのならば一緒にならない理由が無い。相手の気持ちが変わる前に行動しなければチャンスを逃してしまうぞ、という圧を感じる。

「…………クリューさんかあ」

 正直、嫌う点が無い。色々と気遣ってくれるし、リハビリに付き合ってくれている。高身長で、筋肉質。シア視点で容姿も好ましい。それが、自分をずっと好いてくれているようで、しかも。
 銃を使う戦士で、頼りになり、家は大商人でそこの長男。
 性格はドが付く真面目で、不貞など彼に限っては決してありえないと、彼を知る全員が口を揃えて断言できる。

「……かっこいいなあ」

 ひと言で感想を言うなら、こうなる。

「はい。もう結論出てるじゃない。明日にでも返事しなさいよ。あいつ、大胆だけど慎重だからね。あんたから返事しないと一生進まないわ」
「…………ぅん」
「さて。じゃあ次はマルね」
「ひぇっ!?」

 不意打ちを食らったように、マルが声を上げた。

「どうなのよ。あのエフィリスは」
「ど、どうって……。どうも、ないわよ。いつも通り」
「それじゃ駄目でしょ。想いは伝えたことあるの?」
「ひっ。……そんなこと。……だって、エフィリスからしたらまだわたしは、子供だもの……」
「今いくつよ」
「……今度、14になるけど」
「ふぅん。もう少し小さいと思った。あたしがそのくらいの頃はもうひとりで旅してたわ」
「で、確かエフィリス君が32? 3? だっけ。倍以上違うねえ」
「でも、もうすぐ大人じゃない。2、3年したら夜這いでもしたら良いと思うわ。……その2、3年で身体付きがもっと大人になれば」
「…………よ、よば」

 マルも、煙が出そうなほど真っ赤になってしまった。

「で。実は私が一番気になってるのが、貴女なのよ。リディちゃん」
「……へっ?」

 キョトンとしたリディに。
 エヴァルタが切り込む。

「オルヴァリオ君でしょ?」
「はあ!?」
「結構バレバレだよねえ? サスリカ」
『ハイ』
「はあ!? 何言ってんの!? ば、馬鹿じゃないの!?」
「あはは。必死になっちゃって」
「いやちょっ。……ちがっ……!」
「あっはっは」

 女性陣の中での、力関係が決定した夜であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

氷結の夜明けの果て (R16)

ウルフィー-UG6
ファンタジー
Edge of the Frozen Dawn(エッジ・オブ・ザ・フローズン・ドーン) よくある異世界転生? 使い古されたテンプレート? ――そうかもしれない。 だが、これはダークファンタジーだ。 恐怖とは、姿を見せた瞬間よりも―― まだ見えぬまま、静かに忍び寄るもの。 穏やかな始まり。ほのかな優しさ。 だが、石の下には、眠る獣がいるかもしれない。 その時が来れば、闇は牙を剥く。 あらすじ 失われた魂――影に見つめられながら。 だが、英雄とは……本当に常に“光”のために戦う者なのか? 異国の大地で、記憶のないまま、見知らぬ身体で目を覚ます。 生き延びようとする本能だけが、彼を前へと突き動かす。 ――英雄か、災厄か。それを分けるのは、ただ一つの選択。 冷たく、謎めいた女戦士アリニアと共に、 彼は武器を鍛え、輝く都市を訪れ、古の森を抜け、忘れられた遺跡へと踏み込んでいく。 だが、栄光へと近づく一歩ごとに、 痛みが、迷いが、そして見えない傷が刻まれていく。 光の道を歩んでいるかのように見えて―― その背後で、影は静かに育ち続けていた。 ――これは、力と希望、そして自ら築き上げる運命の物語。 🔹 広大で容赦のない世界が、挑む者を待ち受ける。 🔹 試練と沈黙の中で絆を深めていく、二人の仲間。 🔹 「居場所」を探す旅路の果てに待つものとは――。 ヴェイルは進む。 その選択はやがて、一つの伝説を生み出すだろう。 それが光か、闇か。――決めるのは、あなた自身だ。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...