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第4章 旅立ち
Ⅴ
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災害級魔獣のバーサークベアをなんの苦労も無く倒してしまったシンジに呆れながらも、レアイアはマジックバックから強靭なロープを取り出しテキパキとバーサークベアの後ろ足に括りつけると近くの大きな木の太い枝に放り投げそのまま吊り上げてしまった。
シンジが上手く首を切り落としてくれていたのでそのままの状態を保ち血抜きを始める。
首から滴る大量の血は、予め掘られた穴の中にドンドン貯まっていく。
暫く三人はその状況を見つめていたがやがて血の出が少なくなると、レアイアがバックからガラスの小瓶を取りだし、中に入っていた青みがかった液体を数滴その血の中に垂らす。
すると、今までどす黒かった血の色が、鮮やかな血の色に変化していった。
「レアイア、これって青の精霊水? なの?」
その不思議な液体の入った小瓶を指差し尋ねると、レアイアは首を縦に振った。
「噂には聞いていたけど、始めて見たわ」
「青の森に住む精霊達の里から湧き出る水よ。その場所はエレノアール様だけしか知らないわ。だからクルデ村の住人か、エレノアール様が認めた人にしか持たせて貰えないからね」
「そうか、それもそうかもね。昔、お母様に聞いた事があるわ。この精霊水は魔素を取り込み過ぎて魔毒となった物質を正常化する貴重な物だって。そしてその効能を利用して人族が魔毒に侵された土地を正常化し、青の森を初めとする各地の魔の森に人が生活出来る環境を作りだそうとしたって」
「あ、それ僕も母様に聞いた事がある。それでその精霊水を手に入れる為に、母様のいるクルデに帝国軍が押し寄せた事があったんだって」
「そ、そんなことがあったの?!」
ルアルは帝国軍と聞いて内心穏やかではないようだ。
「うん、300人程度の軍隊だったから、コテンパンにやっつけて追い返したって。母様自慢そうに胸張って笑ってたよ?」
事もなげに言い切るシンジにレアイアとルアルの二人は顔を見合わせため息をつくしかなかった。
『シンジがシンジなら、エレノアール様もエレノアール様ね。やっぱり親子だわ』
そんな常識ハズレの親子の常識ハズレの強さを実感する二人だった。
もし、私がシンジくらい強かったらお母様やシズク達を救えたのかな?
そんな事をどうしても考えてしまうルアルだった。
暫くして血が抜けきり、穴に溜まった血を土をかけ蓋をすると、シンジのマジックバックにバーサークベアを丸ごと収納する。
マジックバックとは、その名の通り、バックの大きさに比べて異常な量の物を収納できる異空間バックである。
対象物を視線で固定し、魔方陣を発動させると、袋の中に転移する仕組みだ。ただし、生ものは収納出来ないらしい。あくまで加工物や無機質なものに限るらしい。
ちなみに、バーサークベアは、血抜き処理を施したので加工品となり収納可能だった。つまり、こういった魔獣や獣を街に運ぶ為には、最低限血抜きを行わないと、運ぶのが大変と云うわけだ。
マジックバックはそんなに珍しいものではないけど、使用する本人の魔力量次第で収納量も変わるらしいし、便利アイテムだけど変なところで融通の利かない魔道具だ。
それから三人は再びボルデンの街に向かい歩みを進めていた。
途中、CやBクラスの魔獣なんかも数匹出たものの、その数匹はレアイアとルアルの二人だけであっさり片付いてしまっていた。
レアイアは流石のBB(ダブルB)で剣技もパワー、スピードとも申し分なく洗練されていた。
一方ルアルは、剣もあるのだが基本素手で魔獣を張り倒していた。
一発拳が炸裂するとCクラス魔獣の腹が爆発し、回収するところが無くなってしまったという事は、三人だけの秘密させていただくことになったそうです。
そんなこんなで、順調に進む三人の目の前に馬車の轍が幾つか見える街道が現れた。
「結構早めに街道まで出れたね」
シンジがレアイアに、順調に進んでいることを確認する。
「そうね、ここからならボルデンまで歩いてあと3刻ぐらいかな? ここならもう森のハズレ出し、強い魔物も滅多に出ないだろうし、少し遅くなったけど昼ご飯にしようか?」
「やった! 勿論、レアイアのお弁当だよね?」
シンジが飛び跳ねながら喜ぶ姿に、レアイアは微笑ましく笑い、ルアルは不思議そうに見つめていた。
「レアイアのお弁当? まさかレアイアの作ったお弁当の事?!」
「そうだよルアル?」
「ちょっと、それって食べられるの?」
ルアルは完全に疑っていた。
鬼人の自分とタメをはれる人族の脳筋女の作るお弁当というのがイマイチ予想が出来なかったのでつい言葉に出してしまった。
「あら、別に嫌なら食わなくてもいいのよ?」
「私としてはシンジさえ喜んでくれたらそれで良いんだし」
完全に立場が上からの威圧を出しながらレアイアが話すのを、ちょっとムッとしながらも、お腹が減っているのには勝てなかった。
「ご、ごめんなさい。頂きます」
「そう、そう、そうやって素直になるのが一番よ。おほほほほほ!」
かなりむかつくルアルだったがそこは我慢するしかないと、自分を戒めていた。
三人はもう殆ど木々が少なくなった街道沿いの一角にちょうど越しかけるのに良い岩場を見つけたので、そこにレアイアがマジックバックから、敷物やお弁当の入った篭を数個、水や果樹酒が入ったいくつかの瓶を取りだし、岩場の上に並べると、手際よく三人分の取り皿やフォークや箸を取りだし渡していった。
ルアルはその渡された物の中に箸を見つけると、不思議そうに眺めていた。
「ルアル、どうしたの箸なんか見つめて?」
シンジの問いにルアルはその箸を突き出して尋ねる。
「これ、何?」
「ルアルは知らなかったの? これは箸って言うんだけど、食べる時に使う道具だよ」
「フォークとかスプーン見たいに?」
「そうだね? どっちかと言うとフォークとナイフの役割かな?」
「え? これで? どうやって使うの!?」
ルアルが思った以上に食いついてきたのでちょっと驚くシンジだったが、その表情が凄く可愛らしかったのでつい、自分もつい笑顔になっていた。
「な! シンジ! 馬鹿にしてるの?!」
「そ、そんな事無いって! そんな風に自然に驚いているルアルが可愛らしくてついね」
「!!」
今、目の前にいるルアルの顔が真っ赤に染まっている。
何故かレアイアとシンジにはそんな擬音が聞こえた様な気がした。
「ば!ばばば馬鹿な事言ってないでちゃんと説明しなさい!」
シンジが上手く首を切り落としてくれていたのでそのままの状態を保ち血抜きを始める。
首から滴る大量の血は、予め掘られた穴の中にドンドン貯まっていく。
暫く三人はその状況を見つめていたがやがて血の出が少なくなると、レアイアがバックからガラスの小瓶を取りだし、中に入っていた青みがかった液体を数滴その血の中に垂らす。
すると、今までどす黒かった血の色が、鮮やかな血の色に変化していった。
「レアイア、これって青の精霊水? なの?」
その不思議な液体の入った小瓶を指差し尋ねると、レアイアは首を縦に振った。
「噂には聞いていたけど、始めて見たわ」
「青の森に住む精霊達の里から湧き出る水よ。その場所はエレノアール様だけしか知らないわ。だからクルデ村の住人か、エレノアール様が認めた人にしか持たせて貰えないからね」
「そうか、それもそうかもね。昔、お母様に聞いた事があるわ。この精霊水は魔素を取り込み過ぎて魔毒となった物質を正常化する貴重な物だって。そしてその効能を利用して人族が魔毒に侵された土地を正常化し、青の森を初めとする各地の魔の森に人が生活出来る環境を作りだそうとしたって」
「あ、それ僕も母様に聞いた事がある。それでその精霊水を手に入れる為に、母様のいるクルデに帝国軍が押し寄せた事があったんだって」
「そ、そんなことがあったの?!」
ルアルは帝国軍と聞いて内心穏やかではないようだ。
「うん、300人程度の軍隊だったから、コテンパンにやっつけて追い返したって。母様自慢そうに胸張って笑ってたよ?」
事もなげに言い切るシンジにレアイアとルアルの二人は顔を見合わせため息をつくしかなかった。
『シンジがシンジなら、エレノアール様もエレノアール様ね。やっぱり親子だわ』
そんな常識ハズレの親子の常識ハズレの強さを実感する二人だった。
もし、私がシンジくらい強かったらお母様やシズク達を救えたのかな?
そんな事をどうしても考えてしまうルアルだった。
暫くして血が抜けきり、穴に溜まった血を土をかけ蓋をすると、シンジのマジックバックにバーサークベアを丸ごと収納する。
マジックバックとは、その名の通り、バックの大きさに比べて異常な量の物を収納できる異空間バックである。
対象物を視線で固定し、魔方陣を発動させると、袋の中に転移する仕組みだ。ただし、生ものは収納出来ないらしい。あくまで加工物や無機質なものに限るらしい。
ちなみに、バーサークベアは、血抜き処理を施したので加工品となり収納可能だった。つまり、こういった魔獣や獣を街に運ぶ為には、最低限血抜きを行わないと、運ぶのが大変と云うわけだ。
マジックバックはそんなに珍しいものではないけど、使用する本人の魔力量次第で収納量も変わるらしいし、便利アイテムだけど変なところで融通の利かない魔道具だ。
それから三人は再びボルデンの街に向かい歩みを進めていた。
途中、CやBクラスの魔獣なんかも数匹出たものの、その数匹はレアイアとルアルの二人だけであっさり片付いてしまっていた。
レアイアは流石のBB(ダブルB)で剣技もパワー、スピードとも申し分なく洗練されていた。
一方ルアルは、剣もあるのだが基本素手で魔獣を張り倒していた。
一発拳が炸裂するとCクラス魔獣の腹が爆発し、回収するところが無くなってしまったという事は、三人だけの秘密させていただくことになったそうです。
そんなこんなで、順調に進む三人の目の前に馬車の轍が幾つか見える街道が現れた。
「結構早めに街道まで出れたね」
シンジがレアイアに、順調に進んでいることを確認する。
「そうね、ここからならボルデンまで歩いてあと3刻ぐらいかな? ここならもう森のハズレ出し、強い魔物も滅多に出ないだろうし、少し遅くなったけど昼ご飯にしようか?」
「やった! 勿論、レアイアのお弁当だよね?」
シンジが飛び跳ねながら喜ぶ姿に、レアイアは微笑ましく笑い、ルアルは不思議そうに見つめていた。
「レアイアのお弁当? まさかレアイアの作ったお弁当の事?!」
「そうだよルアル?」
「ちょっと、それって食べられるの?」
ルアルは完全に疑っていた。
鬼人の自分とタメをはれる人族の脳筋女の作るお弁当というのがイマイチ予想が出来なかったのでつい言葉に出してしまった。
「あら、別に嫌なら食わなくてもいいのよ?」
「私としてはシンジさえ喜んでくれたらそれで良いんだし」
完全に立場が上からの威圧を出しながらレアイアが話すのを、ちょっとムッとしながらも、お腹が減っているのには勝てなかった。
「ご、ごめんなさい。頂きます」
「そう、そう、そうやって素直になるのが一番よ。おほほほほほ!」
かなりむかつくルアルだったがそこは我慢するしかないと、自分を戒めていた。
三人はもう殆ど木々が少なくなった街道沿いの一角にちょうど越しかけるのに良い岩場を見つけたので、そこにレアイアがマジックバックから、敷物やお弁当の入った篭を数個、水や果樹酒が入ったいくつかの瓶を取りだし、岩場の上に並べると、手際よく三人分の取り皿やフォークや箸を取りだし渡していった。
ルアルはその渡された物の中に箸を見つけると、不思議そうに眺めていた。
「ルアル、どうしたの箸なんか見つめて?」
シンジの問いにルアルはその箸を突き出して尋ねる。
「これ、何?」
「ルアルは知らなかったの? これは箸って言うんだけど、食べる時に使う道具だよ」
「フォークとかスプーン見たいに?」
「そうだね? どっちかと言うとフォークとナイフの役割かな?」
「え? これで? どうやって使うの!?」
ルアルが思った以上に食いついてきたのでちょっと驚くシンジだったが、その表情が凄く可愛らしかったのでつい、自分もつい笑顔になっていた。
「な! シンジ! 馬鹿にしてるの?!」
「そ、そんな事無いって! そんな風に自然に驚いているルアルが可愛らしくてついね」
「!!」
今、目の前にいるルアルの顔が真っ赤に染まっている。
何故かレアイアとシンジにはそんな擬音が聞こえた様な気がした。
「ば!ばばば馬鹿な事言ってないでちゃんと説明しなさい!」
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