傷持つ姫と僕

ユウヒ シンジ

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第4章 旅立ち

XⅢ

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「それであなた達の素性を聞きたいのだけど?」

未だに不機嫌そうな顔を隠しもせずに、正座するリルダさんとフィティさんにガンを飛ばし威圧していた。

「その、ですね。私の素性をお話すると、あなた達に大変迷惑をお掛けする事になりますので、どうかここは何も聞かずに私達を見逃していただけませんでしょうか?」

少しフラムに怯えながらも、真っ直ぐに僕の目を見つめて、はっきりと訴えて来るリルダさん。
どう見ても、普通の女の子と言うのは無理がある。
それに、ここまで関わってしまったのに、そんな事を言われて、はいそうですか、とはいかないのだけど・・・ルアルの事もあるからあまり目立ちたくはないのだけど・・・どうしたものかな?

そんな事を僕が想い悩んでいると、ルアルが僕の方に近づいて来た。

「シンジ、私、この人達を見捨てる事は出来ない。たぶん追われている。行き場が無いのだと思う。だから見捨てたくない」

真剣な眼差しで、僕に訴えかけてくる。
ルアルにとっては、他人事には思えないのだろうな。

「大丈夫。僕も事情は知らないけど、命を狙われている人を簡単には見捨てるつもりはないよ。それに悪い人にも見えないもの」

僕の答えに、ルアルの表情が一気に明るくなった。

「どうしてそこまで、私達の事を考えて下さるのですか? どう見ても厄介ごとにしか見えませんでしょうに?」

リルダさんが真剣な眼差しで僕に尋ねてくる。

「さっきも言ったけど、命を狙われている人をほっとけないし、それによく母様が女の子が苦労しているのに何もしない男は最低だって言われているからね」
「は、そんな事だけの理由なのですか?」

そうとうに驚いているみたい。
でも僕にとってそれが理由の全てだからなぁ。

「それだけの理由で十分だよ」
「・・・・・・・・・・・・」

そうとう困惑しているみたいだ。

「リルダさん、でしたよね? シンジがこう言ってくれているのだから甘えちゃいなさい。それに頑固よ、シンジは。一度言ったら折れないからね。何が何でもあなた達を助けるわよ? 私達としてはあまり綺麗な女の子がシンジの傍に居るのは、嬉しくないけどね」

レアイアが、フォローしてくれる。けど僕ってそんなに頑固だろうか?

「私も、本音を言ったら関わってほしくないけど、シンジだからね。おせっかいが大好きだから諦めなさい。私も諦めるから」

ルアル、僕が融通が利かない、頑固者みたいに言わないでほしいな。
リルダさん達を説得してくれるのは嬉しいけど。

「・・・・姫様、ここはシンジ様達を信用して、お願いしてみてはどうでしょう?」
「フィティ! でもそれでは・・・」
「今の私達だけでは、生きるだけでも相当に難しい。ここはシンジ様達に甘えさせていただき、先ずは生き延びる事だけを考えませんか?」

フィティさんの言葉に、顔を俯かせ必死に何かと戦っている様に見えるリルダさん。

「分かりました。改めてお願いいたします。私達に是非お力をお貸しください」

そう言って、リルダさんが深々とお辞儀をすると、それに合わせてフィティさんも同じように僕にお辞儀をしてきた。

「そ、そんなに畏まらないで下さい!」
「いえ! ここはケジメとしてこれくらいはさせて下さい。それとただ甘えるだけでは本当に申し訳ありませんので、私達の護衛として雇わせていただく形にさせて下さい」
「護衛ですか?」
「はい、私達を、ノーダス領の領主殿の所まで送っていただき、そこまでの護衛をお願いしたいのです」
「で、でも・・」
「いえ! 決めました! シンジ様も頑固でしょうが私も負けておりません! これは決定事項です!」

言いきるリルダさん。
その表情は決意に固く、曲げそうには見えない・・・仕方ないか。

「ただ、シンジ様、今は持ち合わせがございませんので、ノーダス領に着きましたらその時点で護衛の料金を支払わせていただいますので」

別にお金が欲しい訳じゃないけど、その方がお互い気兼ねないかもね。

「分かりました。それで良いですよ」
「やりましたね、姫様! こんな形で冒険者の方々を雇えたのはラッキーでした」
「そうですね。私達もまだまだ運気に見放されてないという事でしょう」

二人は喜び合っている。
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