メスガキくえすと♡

伊勢池ヨシヲ

文字の大きさ
2 / 7

第2話 女王様だというメスガキをわからせた!

しおりを挟む
 薄っすらとパイプオルガンの音色が聞こえる。曲調からしてバロック音楽か何かだろうか。

「う、う~ん……」

 くらくらする頭を押さえつつ俺はのそりと上体を起こす。

 ――っつ。
 
 眉間と左胸、それから右のわき腹あたりに鈍い痛みが走る。まるで銃で撃たれたかのような。いや、撃たれたかのようじゃない。本当に撃たれたんだ!

 記憶が徐々に蘇ってくる。

 ネトゲで徹夜明けの俺は、自分の部屋でテレビを観ながらカップラーメンを食べていた。

 そしたら玄関のチャイムが鳴って、ドアを開けたらそこに女の子が立っていたんだ。年の頃はそう、今目の前にいる女の子と同じくらいの……。

 って、ええっ!?

 寝ぼけ眼を見開くと、そこにはなんと金箔と宝石で装飾された仰々しい玉座に、小学○年生くらいと見られる金髪の女の子が座っていた。

 さらに辺りを見回すと、中世ヨーロッパのどこかのお城を思わせる重厚かつ絢爛豪華な空間が広がっている。さしずめここは国王の謁見の間といったところか。

 というと、目の前の玉座に座る女の子が王様ってこと?

 眩い宝石が散りばめられた王冠をかぶり、ゴージャスな衣装を身に纏ってはいるものの、どう見てもただのガキにしか見えない。

「あっ、やっと目覚めた♡ 氷河期のお・じ・さ・ん♡」

 女の子は肘掛に片肘をつき、その碧い瞳に侮蔑の色を湛えながら俺を見下している。

 だ、誰が氷河期のおじさんだ! ま、まぁ間違っちゃいないけど。

「それにしてもあのクソ女神、まーたこんなざこを送り込んでくるなんて。これで何人目だっけ~?」

「確か35人目かと」

 玉座近くに控える大臣と思しき男がぼそりと答えた。土気色のやつれた顔をしたその男からは、どこか俺と同じ氷河期の臭いが漂う。

「きゃは♡ 35って語呂がじゃん♡ マジでウケる~♡」 

 女の子は玉座の上で腹を抱えて笑い転げた。

 ……くっ、何なんだこのガキ。さっきから氷河期だのざこだの馬鹿にしやがって。

「今度はチートな武器を与えて送るって言ってたけど、見たところそれらしい武器も無いただのクソざこじゃん」

 チートな武器? っていうか、こいつは何者でここは一体どこなんだ??

 状況から察するに、どうやら俺は異世界にでも転生させられたようだが。

「きゃはは♡ ここがどこなのかって顔しててウケる♡ ねぇねぇ、ここがどこだか知りたい? あたしが誰だか知りたい? 教えてあげよっか、氷河期のクソざこおじさん♡」

 女の子は侮蔑に満ちた笑顔で煽ってくる。
 
 このクソガキ……。いや、こういうのをメスガキというのか。

 怒りが込み上げてくるのと同時に、何かこう、ざわざわとした感覚が沸き起こってくる。

「まぁ、あんまり時間ないし~、ざこなおじさんにも分かるようにさくっと説明するね♡ ここはヨーツンヴァイム王国で、あたしは女王のイザベル♡ それでね、じつはジポルキンっていう魔王が現れて、世界はセンシティブで覆われちゃって大変なことになってるの。そこで、日本からいらなくなった氷河期のおじさんをこっちに転生させて、魔王を倒して世界を救ってもらおうってことなの♡」

 自ら女王と称しイザベルと名乗るそのメスガキは、小憎らしい笑みを浮かべながらさらに話を続けた。

「これまでに何人もの氷河期のおじさんが送りこまれてきたんだけど、ざこばっかりで全然役に立たなかったんだよね~。ウケる♡ おじさんも見た感じクソざこっぽいから無理そうだけど~♡ きゃははははは♡」

 俺を指差して笑い、玉座から転げ落ちそうになるイザベル。

 このメスガキ……。わからせたい。ガツンと一発わからせてやりたい。大人をからかうと、ていうか氷河期を馬鹿にするとどうなるかってことを!

 ぐっと拳を握りしめたその時、フッと目の前にウインドウが浮かび上がった。

 コマンド内のちからを見ると、レベル1、ちから4、すばやさ3、最大HP15、最大MP0、攻撃力4、守備力2とある。

 た、確かにクソざこだわ、俺……。
 
 ん? 道具一覧にあるこれは何だ??

 ――《わからせ棒》――

 こ、これだ!

「きゃはは♡ レベル1ってマジウケる♡ これまでのどの氷河期のおじさんよりもざこじゃん♡ もうお前、ざこ決定ー♡ 最弱なのに最強のクソざこ♡ きゃはははははは♡」

 そうやって笑っていられるのも今のうちだ、このメスガキ!

 俺は《わからせ棒》を使った。

「え? ちょ、待って、何それ? あっ、だめっ……」

 俺は《わからせ棒》を使った。

「あ、あたしにこんなことしてタダで済むと思ってんの? 氷河期のクソざこのくせに……」

 俺は《わからせ棒》を使った。

「ひゃん♡ そ、そこは……だめっ! そ、そんなのムリムリ、絶対にムリ! やめ……て、あ゛あ゛あ゛……」

 俺は《わからせ棒》を使った。

「お゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ はっ♡ ひっ♡ はひっ♡ ふっ♡ ふひゅ♡ ……もっと、もっとお願ぁーい!」

***

「……ふ、ふん。ざこだけどなかなかやるじゃない♡ いいわ、それじゃあ、魔王をさっさと退治してきてね♡ 氷河期のクソざこお・じ・さ・ん♡」

 上気した顔で身なりを整えるイザベルの言動から、すでに侮蔑だけではない何かが感じられるようになった。

 どうやら俺はこのメスガキの女王様をわからせることができたようだ。

「あ、そうそう♡ 旅に出る前にそこにある宝箱を開けてもいいよ♡ あたしをこんなにしたおじさんへのご褒美♡」

 そう言うとイザベルは玉座の脇にある重厚な宝箱を足で指し示した。

「あっ、陛下! その中身は……」

 側にいた大臣が慌てて制止するよりも前に俺は宝箱を開けた。

 中には苺柄のおパンツが入っていた。

「えっ? ちょ、そ、それはだめえええええ!」

 イザベルは宝箱の中にはした金と薬草くらいしか入っていないとでも思ったのだろう。だがもう遅い。

 俺はイザベルのおパンツを握りしめ、そそくさと謁見の間を後にしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

部屋で寝てたら知らない内に転生ここどこだよぉぉぉ

ケンティ
ファンタジー
うぁー よく寝た さー会社行くかー あ? ここどこだよーぉぉ

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

処理中です...