29 / 30
アイスクリームの女
しおりを挟む
東京悪夢物語「アイスクリームの女」
クソ暑い夜だ、
こんな暑い夜に、出歩くお客なんかいるのか?
飲み屋街も、人一人歩いていない。
働いている奴はバカだ!
仕事なんかやってられない!
だが、もう一稼ぎしなきゃ、
歩合制のタクシードライバーは、つらいものだ……
空車で走っていると、
道端で手を上げる女性がいた。
キキーッ、
私は車を止め、ドアを開けた。
カチャ、
「〇〇まで…」
女性は、小さな声で行き先を告げた。
「はい、〇〇までですね」
ピッピッピッ、
ナビをセットし発進する。
「暑い夜ですね~あんまり暑いと溶けちゃいますよ~ハッハッハッ」(愛想笑い)
「……」無言の女性。
機嫌でも悪いのかな?
私は黙って、車を走らせた…
しばらく走っていると、
「あの~アイスクリーム食べますか~」
「えっ?」
女性がアイスクリームを勧めてきた。
「ありがとうございます。でも、仕事中なので遠慮しときますよ」
「そうですか…」
親切なお客だ。たまにお土産をくれるお客はいるがアイスクリームとは?さすがに運転しながらアイスクリームを食べるのは難しい。
気がつかないのかな?
しばらく道を走る。
「あの~アイスクリーム食べますか~」
「えっ?」
さっき断ったはずだが、聞こえなかったのかな?
「ありがとうございます。でも、仕事中なので遠慮しときますよ」
「あの~アイスクリーム食べますか~」
何なんだ、
私は、ルームミラーで後部座席を見てみた。
ドロッ、
女性の顔が溶けていた、
女性の顔が溶けて歪んでいた。
目の錯覚か?
再び見てみる。
ドロッ、
やはり、女性の顔は溶けていた。
「疲れているのかな、」
私は目を擦り、気を取り直して運転を続けた。
スピードを上げる。
ブルルルルーン…
「あれ、こんな道あったかな?」
私は、いつの間にか知らない道を走っていた。
慌てて、ナビを確認する。
地図では、民家の敷地内を走っていた。
「新しくできた道なのかな、ナビは合っているはずだが」
キキーッ、車を止める。
「すいません、お客さん」
「ちょっと道に迷ってしまって、今からもう一度ナビをセットし直しますね」
ピッピッピッ、
私は冷や汗をかきながら、ナビを操作した。
「おかしいな」
いくらやっても、ナビはエラーとしか出ない。現在地も知らない場所だった。
「変だな」
私は必死でナビを操作した。
「ここでいいですよ…」
女性が、小さな声で言った。
「いいえ、こんな見知らぬ場所で女性を一人で降ろしたら大変ですよ、お客さん」
慌てて答える。
「ここでいいですよ…」
女性は、再び小さな声で言った。
すると、
ガチャガチャ、ガチャ
無理矢理ドアを開けようとする女性。
ガチャガチャ、ガチャ
「お客さん、そんなに無理やり開けようとすると、ドアが壊れてしまいますよ!」
ガチャ、
私は仕方なくドアを開けた。
バタン、外へ出る女性。
「はい~お金~」
女性は、お金を差し出した。
「すいません、こんな所で」
ドロッ、
お金が濡れている。
その女性の手は、溶けたアイスクリームのように垂れていた。
「わわっ、」
私はビックリして、女性の顔を見た。
すると、
女性の目は垂れ下がり、鼻は曲がり、口は顎まで落ちていた。髪の毛もドロドロに溶けている。
「わぁあああぁぁ、」
私は慌ててドアを閉め、車を発進した。
「何なんだ、」
バックミラーで女性を確認する。
女性はその場に立ちすくみ、こっちを見ていた。その身体も、ドロリ、ドロリと溶けている。
「何なんだ、いったい」
私はアクセルを目一杯踏み込み、突っ走った。
ブルルルルーン…
しばらく走り、車を道路脇に止めた。
キキーッ、
ハアハアハア、
私は冷や汗を拭き、シートに倒れ込んた。
「いったい何だったんだ、あの女は?」
「幽霊なのか、妖怪なのか?」
その時、
「あの~アイスクリーム食べますか~」
さっきの女が、後部座席に座っていた。
ギャーー
私は、慌てて車から飛び出した。
バタン、バタン、
転げ回りながら逃げ出す。
ハアハアハア、
「えっ?」
辺りは見たことのない景色だった。
「何処なんだ、ここは」
標識を見る。
「アイスクリーム町アイスクリーム番地」
「聞いたことのない町だ、いったい何処なんだここは?」
すると、
ドロッ、
足元がぬかっていた。
「何だ、これは?」
そこは、辺り一面が溶けた街だった。
道路も溶け、家も溶け、信号までも溶けていた。
ドロッ、ドロッ、
足元がぬかるみ、うまく歩けない。
「わわっ、」
転びそうになる。
ドロッ、ドロッ、
ぬかるんだ道路を、何とか歩き進む。
そこへ、
「アイスクリーム食べますか~」
「アイスクリーム食べますか~」
さっきの女が、つぶやきながら追いかけて来た。
女は、ぬかるんだ道路を平気で歩いている。
「助けてくれー」
逃げようとしても、足がぬかるんでいて上手く歩けない。
ドロッ、ドロッ、
目一杯の力で歩くが、前へ進めない。
「ああっ、」
そのぬかるみが深くなる。どんどん身体が沈んでいく。
ドロッ、ドロッ、
動けば動くほど、身体が沈んでいく。
動けない、
出られない、
ドロッ、ドロッ、
身体は、ますます沈んでいく。
「助けてくれー」
すると、
「アイスクリーム食べますか~」
女が、すぐ側に立っていた。
「わーっ」
女はもう、人の形さえも区別できないほどドロドロに溶けていた。
「アイスクリーム食べますか~」
「アイスクリーム食べますか~」
ドロッ、ドロッ、
ググッ、
女が、私の口を無理矢理開けさせる。
「うががっ、」
「はい、アイスクリーム美味しいよ~」
「ギャーー」
バッ、
いつの間にか私は、車の中で眠っていた。
ハアハアハア、
妙な夢を見た、
気持ちの悪い夢だ。
ハンカチで、冷や汗を拭く。
ベト、
「何だ、顔がベトベトするぞ」
私は、ルームミラーで自分の顔を確認してみた。
すると、
私の顔が、
ドロドロに溶けていた……
クソ暑い夜だ、
こんな暑い夜に、出歩くお客なんかいるのか?
飲み屋街も、人一人歩いていない。
働いている奴はバカだ!
仕事なんかやってられない!
だが、もう一稼ぎしなきゃ、
歩合制のタクシードライバーは、つらいものだ……
空車で走っていると、
道端で手を上げる女性がいた。
キキーッ、
私は車を止め、ドアを開けた。
カチャ、
「〇〇まで…」
女性は、小さな声で行き先を告げた。
「はい、〇〇までですね」
ピッピッピッ、
ナビをセットし発進する。
「暑い夜ですね~あんまり暑いと溶けちゃいますよ~ハッハッハッ」(愛想笑い)
「……」無言の女性。
機嫌でも悪いのかな?
私は黙って、車を走らせた…
しばらく走っていると、
「あの~アイスクリーム食べますか~」
「えっ?」
女性がアイスクリームを勧めてきた。
「ありがとうございます。でも、仕事中なので遠慮しときますよ」
「そうですか…」
親切なお客だ。たまにお土産をくれるお客はいるがアイスクリームとは?さすがに運転しながらアイスクリームを食べるのは難しい。
気がつかないのかな?
しばらく道を走る。
「あの~アイスクリーム食べますか~」
「えっ?」
さっき断ったはずだが、聞こえなかったのかな?
「ありがとうございます。でも、仕事中なので遠慮しときますよ」
「あの~アイスクリーム食べますか~」
何なんだ、
私は、ルームミラーで後部座席を見てみた。
ドロッ、
女性の顔が溶けていた、
女性の顔が溶けて歪んでいた。
目の錯覚か?
再び見てみる。
ドロッ、
やはり、女性の顔は溶けていた。
「疲れているのかな、」
私は目を擦り、気を取り直して運転を続けた。
スピードを上げる。
ブルルルルーン…
「あれ、こんな道あったかな?」
私は、いつの間にか知らない道を走っていた。
慌てて、ナビを確認する。
地図では、民家の敷地内を走っていた。
「新しくできた道なのかな、ナビは合っているはずだが」
キキーッ、車を止める。
「すいません、お客さん」
「ちょっと道に迷ってしまって、今からもう一度ナビをセットし直しますね」
ピッピッピッ、
私は冷や汗をかきながら、ナビを操作した。
「おかしいな」
いくらやっても、ナビはエラーとしか出ない。現在地も知らない場所だった。
「変だな」
私は必死でナビを操作した。
「ここでいいですよ…」
女性が、小さな声で言った。
「いいえ、こんな見知らぬ場所で女性を一人で降ろしたら大変ですよ、お客さん」
慌てて答える。
「ここでいいですよ…」
女性は、再び小さな声で言った。
すると、
ガチャガチャ、ガチャ
無理矢理ドアを開けようとする女性。
ガチャガチャ、ガチャ
「お客さん、そんなに無理やり開けようとすると、ドアが壊れてしまいますよ!」
ガチャ、
私は仕方なくドアを開けた。
バタン、外へ出る女性。
「はい~お金~」
女性は、お金を差し出した。
「すいません、こんな所で」
ドロッ、
お金が濡れている。
その女性の手は、溶けたアイスクリームのように垂れていた。
「わわっ、」
私はビックリして、女性の顔を見た。
すると、
女性の目は垂れ下がり、鼻は曲がり、口は顎まで落ちていた。髪の毛もドロドロに溶けている。
「わぁあああぁぁ、」
私は慌ててドアを閉め、車を発進した。
「何なんだ、」
バックミラーで女性を確認する。
女性はその場に立ちすくみ、こっちを見ていた。その身体も、ドロリ、ドロリと溶けている。
「何なんだ、いったい」
私はアクセルを目一杯踏み込み、突っ走った。
ブルルルルーン…
しばらく走り、車を道路脇に止めた。
キキーッ、
ハアハアハア、
私は冷や汗を拭き、シートに倒れ込んた。
「いったい何だったんだ、あの女は?」
「幽霊なのか、妖怪なのか?」
その時、
「あの~アイスクリーム食べますか~」
さっきの女が、後部座席に座っていた。
ギャーー
私は、慌てて車から飛び出した。
バタン、バタン、
転げ回りながら逃げ出す。
ハアハアハア、
「えっ?」
辺りは見たことのない景色だった。
「何処なんだ、ここは」
標識を見る。
「アイスクリーム町アイスクリーム番地」
「聞いたことのない町だ、いったい何処なんだここは?」
すると、
ドロッ、
足元がぬかっていた。
「何だ、これは?」
そこは、辺り一面が溶けた街だった。
道路も溶け、家も溶け、信号までも溶けていた。
ドロッ、ドロッ、
足元がぬかるみ、うまく歩けない。
「わわっ、」
転びそうになる。
ドロッ、ドロッ、
ぬかるんだ道路を、何とか歩き進む。
そこへ、
「アイスクリーム食べますか~」
「アイスクリーム食べますか~」
さっきの女が、つぶやきながら追いかけて来た。
女は、ぬかるんだ道路を平気で歩いている。
「助けてくれー」
逃げようとしても、足がぬかるんでいて上手く歩けない。
ドロッ、ドロッ、
目一杯の力で歩くが、前へ進めない。
「ああっ、」
そのぬかるみが深くなる。どんどん身体が沈んでいく。
ドロッ、ドロッ、
動けば動くほど、身体が沈んでいく。
動けない、
出られない、
ドロッ、ドロッ、
身体は、ますます沈んでいく。
「助けてくれー」
すると、
「アイスクリーム食べますか~」
女が、すぐ側に立っていた。
「わーっ」
女はもう、人の形さえも区別できないほどドロドロに溶けていた。
「アイスクリーム食べますか~」
「アイスクリーム食べますか~」
ドロッ、ドロッ、
ググッ、
女が、私の口を無理矢理開けさせる。
「うががっ、」
「はい、アイスクリーム美味しいよ~」
「ギャーー」
バッ、
いつの間にか私は、車の中で眠っていた。
ハアハアハア、
妙な夢を見た、
気持ちの悪い夢だ。
ハンカチで、冷や汗を拭く。
ベト、
「何だ、顔がベトベトするぞ」
私は、ルームミラーで自分の顔を確認してみた。
すると、
私の顔が、
ドロドロに溶けていた……
0
あなたにおすすめの小説
どうしてそこにトリックアートを設置したんですか?
鞠目
ホラー
N県の某ショッピングモールには、エントランスホールやエレベーター付近など、色んなところにトリックアートが設置されている。
先日、そのトリックアートについて設置場所がおかしいものがあると聞いた私は、わかる範囲で調べてみることにした。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/13:『ものおと』の章を追加。2025/12/20の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/12:『つえ』の章を追加。2025/12/19の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/11:『にく』の章を追加。2025/12/18の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)
本野汐梨 Honno Siori
ホラー
あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。
全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。
短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。
たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる