東京悪夢物語

ヨッシー@

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アイスクリームの女

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東京悪夢物語「アイスクリームの女」

クソ暑い夜だ、
こんな暑い夜に、出歩くお客なんかいるのか?
飲み屋街も、人一人歩いていない。 
働いている奴はバカだ!
仕事なんかやってられない!
だが、もう一稼ぎしなきゃ、
歩合制のタクシードライバーは、つらいものだ……

空車で走っていると、
道端で手を上げる女性がいた。
キキーッ、
私は車を止め、ドアを開けた。
カチャ、
「〇〇まで…」
女性は、小さな声で行き先を告げた。
「はい、〇〇までですね」
ピッピッピッ、
ナビをセットし発進する。
「暑い夜ですね~あんまり暑いと溶けちゃいますよ~ハッハッハッ」(愛想笑い)
「……」無言の女性。
機嫌でも悪いのかな?
私は黙って、車を走らせた…

しばらく走っていると、
「あの~アイスクリーム食べますか~」
「えっ?」
女性がアイスクリームを勧めてきた。
「ありがとうございます。でも、仕事中なので遠慮しときますよ」
「そうですか…」
親切なお客だ。たまにお土産をくれるお客はいるがアイスクリームとは?さすがに運転しながらアイスクリームを食べるのは難しい。
気がつかないのかな?
しばらく道を走る。
「あの~アイスクリーム食べますか~」
「えっ?」
さっき断ったはずだが、聞こえなかったのかな?
「ありがとうございます。でも、仕事中なので遠慮しときますよ」
「あの~アイスクリーム食べますか~」
何なんだ、
私は、ルームミラーで後部座席を見てみた。

ドロッ、

女性の顔が溶けていた、
女性の顔が溶けて歪んでいた。
目の錯覚か?
再び見てみる。
ドロッ、
やはり、女性の顔は溶けていた。
「疲れているのかな、」
私は目を擦り、気を取り直して運転を続けた。
スピードを上げる。
ブルルルルーン…

「あれ、こんな道あったかな?」
私は、いつの間にか知らない道を走っていた。
慌てて、ナビを確認する。
地図では、民家の敷地内を走っていた。
「新しくできた道なのかな、ナビは合っているはずだが」
キキーッ、車を止める。
「すいません、お客さん」
「ちょっと道に迷ってしまって、今からもう一度ナビをセットし直しますね」
ピッピッピッ、
私は冷や汗をかきながら、ナビを操作した。
「おかしいな」
いくらやっても、ナビはエラーとしか出ない。現在地も知らない場所だった。
「変だな」
私は必死でナビを操作した。
「ここでいいですよ…」
女性が、小さな声で言った。
「いいえ、こんな見知らぬ場所で女性を一人で降ろしたら大変ですよ、お客さん」
慌てて答える。
「ここでいいですよ…」
女性は、再び小さな声で言った。
すると、
ガチャガチャ、ガチャ
無理矢理ドアを開けようとする女性。
ガチャガチャ、ガチャ
「お客さん、そんなに無理やり開けようとすると、ドアが壊れてしまいますよ!」
ガチャ、
私は仕方なくドアを開けた。
バタン、外へ出る女性。
「はい~お金~」
女性は、お金を差し出した。
「すいません、こんな所で」
ドロッ、
お金が濡れている。
その女性の手は、溶けたアイスクリームのように垂れていた。
「わわっ、」
私はビックリして、女性の顔を見た。
すると、
女性の目は垂れ下がり、鼻は曲がり、口は顎まで落ちていた。髪の毛もドロドロに溶けている。
「わぁあああぁぁ、」
私は慌ててドアを閉め、車を発進した。
「何なんだ、」
バックミラーで女性を確認する。
女性はその場に立ちすくみ、こっちを見ていた。その身体も、ドロリ、ドロリと溶けている。
「何なんだ、いったい」
私はアクセルを目一杯踏み込み、突っ走った。
ブルルルルーン…

しばらく走り、車を道路脇に止めた。
キキーッ、 
ハアハアハア、
私は冷や汗を拭き、シートに倒れ込んた。
「いったい何だったんだ、あの女は?」
「幽霊なのか、妖怪なのか?」
その時、
「あの~アイスクリーム食べますか~」
さっきの女が、後部座席に座っていた。
ギャーー
私は、慌てて車から飛び出した。
バタン、バタン、
転げ回りながら逃げ出す。
ハアハアハア、
「えっ?」
辺りは見たことのない景色だった。
「何処なんだ、ここは」
標識を見る。
「アイスクリーム町アイスクリーム番地」
「聞いたことのない町だ、いったい何処なんだここは?」
すると、

ドロッ、

足元がぬかっていた。
「何だ、これは?」
そこは、辺り一面が溶けた街だった。
道路も溶け、家も溶け、信号までも溶けていた。
ドロッ、ドロッ、
足元がぬかるみ、うまく歩けない。
「わわっ、」
転びそうになる。
ドロッ、ドロッ、
ぬかるんだ道路を、何とか歩き進む。
そこへ、
「アイスクリーム食べますか~」
「アイスクリーム食べますか~」
さっきの女が、つぶやきながら追いかけて来た。
女は、ぬかるんだ道路を平気で歩いている。
「助けてくれー」
逃げようとしても、足がぬかるんでいて上手く歩けない。
ドロッ、ドロッ、
目一杯の力で歩くが、前へ進めない。
「ああっ、」
そのぬかるみが深くなる。どんどん身体が沈んでいく。
ドロッ、ドロッ、
動けば動くほど、身体が沈んでいく。
動けない、
出られない、
ドロッ、ドロッ、
身体は、ますます沈んでいく。
「助けてくれー」
すると、
「アイスクリーム食べますか~」
女が、すぐ側に立っていた。
「わーっ」
女はもう、人の形さえも区別できないほどドロドロに溶けていた。
「アイスクリーム食べますか~」
「アイスクリーム食べますか~」
ドロッ、ドロッ、
ググッ、
女が、私の口を無理矢理開けさせる。
「うががっ、」
「はい、アイスクリーム美味しいよ~」

「ギャーー」

バッ、
いつの間にか私は、車の中で眠っていた。
ハアハアハア、
妙な夢を見た、
気持ちの悪い夢だ。
ハンカチで、冷や汗を拭く。
ベト、
「何だ、顔がベトベトするぞ」
私は、ルームミラーで自分の顔を確認してみた。
すると、

私の顔が、
ドロドロに溶けていた……
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