東京悪夢物語

ヨッシー@

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ヒトミル

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東京悪夢物語「ヒトミル」

私は以前、
シロイルマという妖怪に出会ったが、
また、
妙な生き物に出会ってしまった…

ある朝、
いつものように会社へ出勤する途中、側溝から何かが頭を出した。
ヒョコ、
それは白く、小さな頭をしていた。
何だ、ハクビシンか?
最近、都会でもハクビシンが出没するという話を聞いたことがあるが、この町にもいるんだ。
その小さな生き物は、二つの眼でジッと見つめていた。
「私を見ているのか?」
「まあ、いい」
私は気にもせず、会社へと向かった…

夕方、帰り道
側溝近くを歩いていると、
ヒョコ、
また、白い小さな生き物が頭を出した。
今度は、今朝よりも長く飛び出していた。
よく見ると、身体は細長くツルツルとしていて、毛は一本も生えていない。眼だけが異様にギラギラとしている。
「ハクビシンではないようだが、白ヘビか?」
私は、恐る恐る近づいてみた。
ヒュッ、
その生き物は、側溝の中へと逃げ込んだ。
「あっ、逃げた」
私は急いで、側溝の中を覗いてみた。
暗い、中は何も見えない。
ササッ、何か動いた。
暗闇の中、二つの眼だけが光っている。
ジッと私の方を見つめている。
「人間の眼みたいだ」
私は、それ以上、その生き物を気にもせず家へと帰って行った…

自宅、
ザッパーン、
風呂に入る。
「今日は奇妙な生き物を見た。一体あれは何だったんだろう?ハクビシンでもないし、ヘビでもないし、あんな生き物がいるんだろうか。明日、奥田にでも聞いてみるか」
私は湯船に深く浸かった。
カタッ、
風呂窓の隙間から、何かが覗いていた。
ヒョコ、
何だ、さっきの生き物か。家までついて来たんだ。
その生き物は二つの眼で、ジッと私を見つめていた。
そんなに私が好きなのか?
私は、そっと近づき観察してみた。
やはり、身体は細長くツルツルとしており、毛は一本も生えてない。眼だけが異様にギラギラしている。
「人間の眼のようだ」
ギラギラ、ギラ
「気持ちの悪い眼だ」
シッシッ、バタン
私は、その生き物を手で追い払い、窓を閉めた。
窓の外、生き物の影が映る。
「一体、何なんだろう」
風呂に浸かる…

会社、
「奥田、ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「何ですか、根本先輩」
奥田は都市伝説が大好きだ。いつもネットで検索している。たまに、その場所に行ってはYouTubeに上げている都市伝説ユーチューバーだ。
「白くて細長くて小さくて、目だけがが異様にギラギラしてる生き物って何かな?」
「それは、ヒトミルですね」
「ヒトミル?」
「ヒトミルは都会の側溝の中に住んでいて、人間の寿命を少しだけ吸い取る妖怪ですよ」
「寿命を吸い取る!」
「はい、ほんの少しだけですけどね。いろいろな人間の寿命を、ほんの少しだけ吸い取り自分の寿命にするんです」
「なんか、怖い妖怪だな」
「でも、数秒ぐらいですから大丈夫ですよ」
「いや、しかし…何回も吸い取られたらどうなるんだ」
「それは…しまいには…死んてしまいますかね~」
「ええっ、」
「何か、心当たりでもあるんですか根本先輩?」
「いや別に…」

自宅、
ネットでヒトミルを調べてみた。
【ヒトミル】都会の側溝の中に住んでいる妖怪。人間の寿命を少しだけ吸い取る。
いろいろな人間の寿命を吸い取り、自分の生命にする。吸い取られた人間はほぼ気づくことは無い。滅多に人前には現れず、暗闇の中からジッと二つの眼で吸い取る。
「二つの眼!」
あの眼だ、
あのギラギラとした眼が、私の寿命を吸い取っていたんだ。
「しまいには、死んてしまいますかね~」(回想)
奥田の言葉のとおりだ。
そう言えば、あの日以来、何だか肌がカサカサしてシワっぽい。以前と違う感じがする。
きっと、寿命を吸い取られているんだろう。
確か、吸い取られた人間が気づくことは無く、滅多に人前には現れないはずだ。
何故、私のことばかり付き纏う?
このまま何回も吸い取られたら、いずれ寿命を全部吸い取られてしまうかも、
困った…

日曜日、朝
残業の疲れで、ベッドでウトウトしていると、
ヒョコ、
ヒトミルが、私を覗き込んでいた。
「うわわっ、」
私は、慌てて飛び起きた。
シュッ、
ヒトミルは、素早くベッドの角へと隠れた。
「こいつ、何で私ばっかり付き纏うんだ。私の寿命を吸い取るなんて、とんでもない奴だ。どっか他の人間に取り憑けよ」
シッシッ、
私は、掃除の棒で追い払った。
パシッ、
手元が狂い、ヒトミルに当たってしまった。
ギャーァ、
ヒトミルは、人間のような叫び声を上げた。
ギャーァ、
「大きな声だ、まるで人間みたいだ」
耳を塞ぐ。
ギャーァ、
「うるさいなぁ、ちょっと叩いただけじゃないか」
ギャーァ、
「うるさい!」
私は頭にきて、再びヒトミルを叩いた。
パシッ、
ギャーァ、ギャーァ、ギャーァァァ……
グッタリとしているヒトミル。まったく動かない。
死んだのか?
恐る恐る、ヒトミルを掴んでみた。
柔らかい、
まるで人間の肌のような感触だ。
「気持ちが悪い」
私はヒトミルをビニール袋に入れて、ゴミ箱へと捨てた……

数日後、会社
私が机で仕事をしていると、
ヒョコ、ヒョコ、
今度はヒトミルが二匹、机の横に現れた。私を覗き込んでる。
「うわわっ、」
私は、慌てて手で追い払った。
シッシッ、
ヒトミルは、素早く机の角へと隠れた。
「また来たな。何故、私ばっかり付き纏う」
私は物差しを構え、叩いた。
パシッ、バシッ、
ギャーァ、ギャーァ、
ヒトミルは、また、人間のような叫び声を上げた。
「うるさい!」
耳を塞ぐ。
ギャーァ、ギャーァ、
「やっぱり大きな声だ、まるで人間みたいだ」
ギャーァ、ギャーァ、ァァァ…
ぐったりしている。
二匹のヒトミルは死んでしまった。
「やっぱり、簡単に死ぬんだ。弱いんだ」
私は、また、二匹をゴミ箱へと捨てた……

自宅、
ザッパーン、
風呂に入る。
「いったい何故、私にばかり付き纏うんだ」
「そんなに、私の命が美味しいのか?」
風呂で考え事をしていると、
ヒョコ、ヒョコ、ヒョコ…
今度は、たくさんのヒトミルが風呂桶の回りに現れた。
「ああっ、10匹はいる」
ヒトミルたちは、ジッと私の方を見つめていた。眼だけが異様にギラギラしている。
「やめろ、私を見るな!」

ギラギラ、ギラ
ギラギラ、ギラ

みな一斉に、私を見つめている。
「やめろー」
バシッ、バシッ、バシッ、
私はヒトミルを素手で掴み上げ、床に投げつけた。
ギャーァ、ギャーァ、ギャーァ、
ギャーァ、ギャーァ、ギャーァ、
再び、人間のような悲鳴を上げるヒトミルたち。
「やめろーうるさい!」
ギャーァ、ギャーァ、ギャーァ、
ギャーァ、ギャーァ、ギャーァ、
「その人間のような悲鳴をやめろー」
ギャーァ、
ギャーァ、
ギャーァ、
「聞きたくない、」
「やめろ、やめろ、やめてくれーー」
私は、叫び続けた……

気がつくと、
私は、病院のベッドに横たわっていた。
うっ、
腕には点滴が刺してある。
「動いちゃダメですよ、根本さん。大変だったんですから、重度の栄養失調でしたよ」
「どうして、こんなに食事を取らなかったんですか?」
私が、食事を取らない?
そんなワケはない。キチンと毎日、朝ご飯さえ食べている。
節々が痛い、
確かに私は骨と皮だけになっており、体重も半分に減っていた。
そんなバカな、
そうだ、あのヒトミルに吸い取られたんだ。
ベッドの回りを確認する。
ああっ、
隣のベッドの患者の回りに、100匹以上のヒトミルがいた。
ギラギラ、ギラ、
あの二つの眼で、隣の患者を見つめている。
ギラギラ、ギラ、
ピッピッピッピーーー
隣の患者の心電図が止まった。
「どうしたんですか、神谷さん!」
ドクターたちが慌ててやって来る。
「さっきまで、あんなに元気だったのに」
ガラガラガラガラーーー
集中治療室に運び込まれる隣の患者。
その後を、追いかけ行くヒトミルたち。
パッ、治療室のランプが点く。
手術中、
そうか、私に取り憑くのをやめたんだ。
あの患者の方が、命を吸い取りやすかったんだ、
「しかし、助かった」
私は、ホッと胸を撫で下ろした。
カタッ、
物音がした。
まさか、
部屋にはまだ、一匹だけヒトミルが残っていた。
ジッと私の方を見ている。
「私を見るな、私の命を吸い取るな」
ヒトミルは、黙って私を見続けている。
「やめろ…」
シュン、
ヒトミルは突然ドアの方を向き、病室から出て行った。

ギャーァ、
ギャーァ、
ギャーァ、

遠くで、ヒトミルの悲鳴が聞こえた。
何処からだ?
もしかして、

ギラギラと、ギラギラと、
人間のような眼で……
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