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生肉(レア)
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東京悪夢物語「生肉(レア)」
八俣精肉店、
私の店では、昔から焼き肉弁当を売っている。
美味しくて評判だ。
基本、注文を聞いてから作る。
最近、まめに買いに来てくれるお客さんがいる。
歳の項は25歳ぐらい女性、色白やせ型。
あっ、
今日も買いに来た。
「焼き肉弁当、一つ…」か細い声。
「はい」
「いつもありがとうございます~」笑顔。
……
「あの~」
「はい」
「肉は、なるべくレアで….」
「そうですか、わかりました」
……
「はい、焼き肉弁当出来ました~」
張り切って渡す。
「780円になります~」
財布から、お金を出す女性。
白い、本当に色白だ、手も青白い。
女性は静かに焼き肉弁当を持って、帰って行った。
後ろ姿、
長い髪が、湿っている…
数日後、
また、女性が買いに来た。
「焼き肉弁当、一つ…」か細い声。
「あの~、肉はレアで…なるべく、火を通さないで…」
「お客さん~火を通さないと食中毒になっちゃうよ、ハハハ」
「……レアで、お願いします」
「はい、」(冷や汗)
私は言われた通り、レアで焼き肉弁当を作った。
「出来ました~」
女性はまた、焼き肉弁当を持って、静かに帰って行った…
数日後、
再び、あの女性がやって来た。
「いつも、ありがとうございます~」(笑顔)
「……焼き肉弁当、一つ…レアで…火を通さないで」
「えっ?」
「火を通さないんですか?」
「それは、出来ませんよ~」
「いくらウチが新鮮な肉で作っているって言ったって、本当に食中毒になったら大変ですよ」
「レアで…」
「レアで、レアで」
「ちょっと、出来ませんよ~」(冷や汗)
「レアでーーーー!」怒鳴りだす女性。
ガガッ、
女性が、店主に掴みかかる。目が赤く血走っていた。
「痛い、」
女性の長い爪が、腕に食い込む。
「む、無理です、無理ですよ。法律で禁止されていますし」
「……」
手を離す女性。
「これ下さい…」
女性は、白い指で食肉ケースを指差した。
牛モツ、
「は、はい」
「一人前700円です」
お金を出す女性。
牛モツを渡す。
ババッ、
女性は、いきなり包みを開け牛モツを食べ始めた。
クチャ、クチャ、
「何を?」
素手で牛モツを美味そうに食べる女性。
クチャ、クチャ、クチャ、
クチャ、クチャ、クチャ、
ゴクン、ゴクン、
……
……
食べ終わった。
ペロ、ペロ、
美味そうに、指を舐める。
「ごちそうさまでした….」か細い声。
そして、
ゆっくり、ゆっくりと帰って行った。
それから…
あの女性はピタリと来なくなった。
街で、長い髪の女性を見かけると思い出してしまう。
湿った髪、「レアで…」
八俣精肉店、
私の店では、昔から焼き肉弁当を売っている。
美味しくて評判だ。
基本、注文を聞いてから作る。
最近、まめに買いに来てくれるお客さんがいる。
歳の項は25歳ぐらい女性、色白やせ型。
あっ、
今日も買いに来た。
「焼き肉弁当、一つ…」か細い声。
「はい」
「いつもありがとうございます~」笑顔。
……
「あの~」
「はい」
「肉は、なるべくレアで….」
「そうですか、わかりました」
……
「はい、焼き肉弁当出来ました~」
張り切って渡す。
「780円になります~」
財布から、お金を出す女性。
白い、本当に色白だ、手も青白い。
女性は静かに焼き肉弁当を持って、帰って行った。
後ろ姿、
長い髪が、湿っている…
数日後、
また、女性が買いに来た。
「焼き肉弁当、一つ…」か細い声。
「あの~、肉はレアで…なるべく、火を通さないで…」
「お客さん~火を通さないと食中毒になっちゃうよ、ハハハ」
「……レアで、お願いします」
「はい、」(冷や汗)
私は言われた通り、レアで焼き肉弁当を作った。
「出来ました~」
女性はまた、焼き肉弁当を持って、静かに帰って行った…
数日後、
再び、あの女性がやって来た。
「いつも、ありがとうございます~」(笑顔)
「……焼き肉弁当、一つ…レアで…火を通さないで」
「えっ?」
「火を通さないんですか?」
「それは、出来ませんよ~」
「いくらウチが新鮮な肉で作っているって言ったって、本当に食中毒になったら大変ですよ」
「レアで…」
「レアで、レアで」
「ちょっと、出来ませんよ~」(冷や汗)
「レアでーーーー!」怒鳴りだす女性。
ガガッ、
女性が、店主に掴みかかる。目が赤く血走っていた。
「痛い、」
女性の長い爪が、腕に食い込む。
「む、無理です、無理ですよ。法律で禁止されていますし」
「……」
手を離す女性。
「これ下さい…」
女性は、白い指で食肉ケースを指差した。
牛モツ、
「は、はい」
「一人前700円です」
お金を出す女性。
牛モツを渡す。
ババッ、
女性は、いきなり包みを開け牛モツを食べ始めた。
クチャ、クチャ、
「何を?」
素手で牛モツを美味そうに食べる女性。
クチャ、クチャ、クチャ、
クチャ、クチャ、クチャ、
ゴクン、ゴクン、
……
……
食べ終わった。
ペロ、ペロ、
美味そうに、指を舐める。
「ごちそうさまでした….」か細い声。
そして、
ゆっくり、ゆっくりと帰って行った。
それから…
あの女性はピタリと来なくなった。
街で、長い髪の女性を見かけると思い出してしまう。
湿った髪、「レアで…」
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