東京悪夢物語

ヨッシー@

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老人の街

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東京悪夢物語「老人の街」

会社と言うものは、勝手なものだ。

「一週間以内に転勤?」
ひどすぎる。
部長命令、課長も逆らえない。
パワハラじゃないのか?
亡霊の様な老人役員は、会社を去るべきだ。
定年延長、断固反対!
老害ニッポン!……

ガタン、
慌ただしく運んだ荷物も、やっと、ひと段落した。
天気もいい。
私は町に慣れるため、遠出の散歩に出かけることにした。
春先のポカポカとした日差しが、気持ちがいい。風も無い。
「スマホでコースを決めるか」
ここから北に真っ直ぐ進むと、幹線道路があり、それを越え少し進むと、その先に電気街。
「ざっと、3キロぐらいか」
趣味のパソコンのパーツを買って、終了だ。
運動不足の私には、丁度いい距離だ。

カツ、カツ、
快調に歩く。
いい感じだ。

この町は風情があるな、
子供たちが路地で遊んでいる。楽しそうな声が聞こえて来た。まるで昭和の風景を見ている様だ。微笑ましい。
コンビニがあり若者もいる。そこだけが現代風だ。
しばらく歩いていると、
道端で服を売っている老人がいた。
ちょっと身なりが悪い。
汚れたワイシャツに破れたズボン、
こんな所で売れるのか?
モーニング300円、ジャケット100円、スラックス50円。
目を疑うほどの安価な値段だ。
何だ、盗品か?
老人の顔を見直す。
ニヤリと笑う老人、歯が真っ黒だ。
?!
うっ、
私は慌てて、その場から立ち去った。
何だったんだ、
値札を間違えているのか?
不思議に思い、振り返ってみた。
何だ⁈
そこには、さっきの老人がいた。ゆっくりとついて来る。
見直す、
やっぱり、ついて来る。
気持ちが悪い…
私は足を早め、突き放すことにした。
ハアハアハア、
結構歩いた。軽く汗ばむ。
私は、再び後ろを振り返ってみた。
何だ⁈
まだ、老人がいる。
しかも、人数が増えていた。
三人に増えている、
ニヤリと笑う老人たち。
何だ⁈
私に恵んで欲しいのか?
気色悪い…
私は、さっきより、かなり足を早めて歩いた。
ハアハアハア、
汗が額を滴る。
このくらい離せば、もうついては来ないだろう。振り返る。
何だ⁈
まだ、ついて来る。今度は十人はいる。
皆、息一つ切らしてない。
何なんだ!
ニヤニヤと笑う老人たち。全員、歯が真っ黒だ。男とも女とも見分けが付かない。
助けてくれー
私は、走り出しだ。
ハアハアハア、ハア、
必死に走った。苦しい、倒れそうだ、
ハアハアハア、ハア、
限界だ、
すると、目の前に警察官が見えた。
「助けて下さい」
私は、慌てて駆け寄った。
「どうしました?」
警察官の一人が、口を開く。
「老人に追いかけられて、ハアハア…」息が苦しい。
「ハハハハハハ、」
「ハハハハハハ、」
大笑いする警察官たち。
「ひどいじゃないですか、笑うなんて」
「あなたこそ~老人ですよ~」
「ハハハハハハ、」
「ハハハハハハ、」
「何を言っているんだ」
私は、スマホで自分の顔を撮ってみた。
カシャ、
「ああっ!」
そこには、年老いた顔の私が映っていた。
「ハハハハハハ…」
「ハハハハハハ…」
笑う警察官たち。
「おじい~ちゃん、こちらにどうぞ」
とぼとぼと、歩く私。
警察官の後をついて行く私。
腰が痛い、足も痛い、目も霞む、
「ここは、何処だったかな?……」
………
………
……急に辺りが開けてきた。
見慣れた風景、
コンビニがあり、若者もいる。
私は、ハッとした。
さっきの警察官たちは?
誰もいない。
「そうだ」
私は、恐る恐るスマホで自分の顔を見てみた。
「ああっ、」
自分の顔だ、若い自分の顔だ、
よかった…

その後、
私は再び、あのコースを歩いて見よう思った。
が、やめた。
多分、また会える気がするからだ。数十年後、
何故なら、
スマホに私の写真が残っていた。
シワシワで歯が真っ黒な、

未来の私の顔が……
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