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続々 香姫
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れいわ御伽草子「続々 香姫」
むかし昔、あるところに……
「沈香のような、白檀のような、その芳しい香りを嗅ぐと、皆、たちまち虜になってしまう…」ネット広告。
「この動画、いつも流れているけど、凄い評判だよね」
「そうそう、バズってるよね」
「でも、幻の香水なんだって。滅多に手に入らないらしいよ」
「何て言うの?」
「香姫」
「カッコいい名前だね」
「うん、今風だよね」
「申し込もうよ、小夜子」
「何か不安~」
「いいから、いいから、」
ポチ、
どうせ、買えないし…
カフェでの男女。
「すまん小夜子、別れてくれ」
「何で?どうしたの拓巳」
「他に好きな人ができたんだ」
「そんな、ひどい」
「さよなら」
「嫌…」
自宅
「あー死にたい、拓巳と別れるなんて地獄」
ピコッ、
メールが来た。
「ご当選おめでとうございます。貴女だけに特別に、『香姫』をお譲りいたします」
当たった!
もしかして、これを使えば…
「宅配便でーす」
香姫が届いた。
立派な箱だ。ビンも和風で高級感が漂っている。高そうだ。
これさえあれば、拓巳は必ず戻ってくる。私の元に戻ってくる。
あんな女に取られてたまるか、
シュッ、シュッ、
香姫を身体にかけてみる。
「いい~香り」
本当に、女の私が虜になってしまう程、魅力的な香りだ。男でなくてもクラクラしてしまう。すばらしい。
注意書、
「満月の夜には、決して使わないでください。大変なことになります」
変な注意書だな、どうせ、セールス文句だろう…
拓巳を呼び出す。
「小夜子、いい加減にしてくれよ。もう別れたろう」
「わかったわよ。これで最後だから」
小夜子、香姫のフタを開け自分にかける。
シュッ、シュッ、
「ううっ、」
「なんか、いい香り…」
「たまらない、たまらなく小夜子を抱きしめたい!」
バッ、
拓巳、小夜子を強く抱きしめる。
効いた、本当に効いた。
香姫は、凄い!
私は拓巳を取り戻した…
それ以来、
拓巳は私の虜だった。
自慢の彼氏。イケメンで性格もいい。何でも買ってくれるし、何でも私の言う事を聞いてくれる。
ベッドの中でも、
香姫を使えば、拓巳は野獣のように私を求めてくる。
私は、毎日が最高だった。毎日が天国だった…
満月の夜、
シュッ、シュッ、
いつもの様に、香姫を身体にかける小夜子。
「シャワー浴びてきたよ」
「うん、」
「いい香りだな」
「小夜子の香りは最高だよ、たまらない」
小夜子の肩に触る拓巳。
「ふふふ、野獣なんだから」
サーッ、拓巳はカーテンを開けた。
「今日は、月明かりでしない?」
「いいわね、」
ギッシ、ギッシ、
月の光が二人を照らす。
「うっ、」
突然、小夜子の手足がどす黒く変わってきた。
「どうしたんだ、小夜子?」
身体もヌルヌルと湿ってくる。
「ううっ、」
口は大きく裂け、眼も赤く血走ってきた。
パチン、にゅるる。尻尾も生えてきた。
小夜子は、
大きな、大きな、大山椒魚に変身した。
「わわっ、」
「何なんだ!小夜子はどこだ」
大山椒魚は、ゆっくりと振り返り、
「私が小夜子よ~」と言った。
「そんな…」
ガッ、
大山椒魚は、ヌルヌルとした手で拓巳を掴んだ。
「拓巳~」
ズブブッ、ズブブッ、
「や、やめろ、」
「でも、たまらない…たまらなく香しい…」
「私も、たまらない~」
「たまらなく~拓巳が欲しい~」
「俺も~」
どす黒い身体を抱きしめる拓巳。
「ああっ…」
「ううっ…」
パックン、
拓巳は、一口で食べられてしまいました。
「あ~美味しかった…」
ペロリ、舌。
ネット広告。
「沈香のような、白檀のような、その香しい香りを嗅ぐと、皆、たちまち虜になってしまう……」
「……次の香姫は、あなた」
むかし昔、あるところに……
「沈香のような、白檀のような、その芳しい香りを嗅ぐと、皆、たちまち虜になってしまう…」ネット広告。
「この動画、いつも流れているけど、凄い評判だよね」
「そうそう、バズってるよね」
「でも、幻の香水なんだって。滅多に手に入らないらしいよ」
「何て言うの?」
「香姫」
「カッコいい名前だね」
「うん、今風だよね」
「申し込もうよ、小夜子」
「何か不安~」
「いいから、いいから、」
ポチ、
どうせ、買えないし…
カフェでの男女。
「すまん小夜子、別れてくれ」
「何で?どうしたの拓巳」
「他に好きな人ができたんだ」
「そんな、ひどい」
「さよなら」
「嫌…」
自宅
「あー死にたい、拓巳と別れるなんて地獄」
ピコッ、
メールが来た。
「ご当選おめでとうございます。貴女だけに特別に、『香姫』をお譲りいたします」
当たった!
もしかして、これを使えば…
「宅配便でーす」
香姫が届いた。
立派な箱だ。ビンも和風で高級感が漂っている。高そうだ。
これさえあれば、拓巳は必ず戻ってくる。私の元に戻ってくる。
あんな女に取られてたまるか、
シュッ、シュッ、
香姫を身体にかけてみる。
「いい~香り」
本当に、女の私が虜になってしまう程、魅力的な香りだ。男でなくてもクラクラしてしまう。すばらしい。
注意書、
「満月の夜には、決して使わないでください。大変なことになります」
変な注意書だな、どうせ、セールス文句だろう…
拓巳を呼び出す。
「小夜子、いい加減にしてくれよ。もう別れたろう」
「わかったわよ。これで最後だから」
小夜子、香姫のフタを開け自分にかける。
シュッ、シュッ、
「ううっ、」
「なんか、いい香り…」
「たまらない、たまらなく小夜子を抱きしめたい!」
バッ、
拓巳、小夜子を強く抱きしめる。
効いた、本当に効いた。
香姫は、凄い!
私は拓巳を取り戻した…
それ以来、
拓巳は私の虜だった。
自慢の彼氏。イケメンで性格もいい。何でも買ってくれるし、何でも私の言う事を聞いてくれる。
ベッドの中でも、
香姫を使えば、拓巳は野獣のように私を求めてくる。
私は、毎日が最高だった。毎日が天国だった…
満月の夜、
シュッ、シュッ、
いつもの様に、香姫を身体にかける小夜子。
「シャワー浴びてきたよ」
「うん、」
「いい香りだな」
「小夜子の香りは最高だよ、たまらない」
小夜子の肩に触る拓巳。
「ふふふ、野獣なんだから」
サーッ、拓巳はカーテンを開けた。
「今日は、月明かりでしない?」
「いいわね、」
ギッシ、ギッシ、
月の光が二人を照らす。
「うっ、」
突然、小夜子の手足がどす黒く変わってきた。
「どうしたんだ、小夜子?」
身体もヌルヌルと湿ってくる。
「ううっ、」
口は大きく裂け、眼も赤く血走ってきた。
パチン、にゅるる。尻尾も生えてきた。
小夜子は、
大きな、大きな、大山椒魚に変身した。
「わわっ、」
「何なんだ!小夜子はどこだ」
大山椒魚は、ゆっくりと振り返り、
「私が小夜子よ~」と言った。
「そんな…」
ガッ、
大山椒魚は、ヌルヌルとした手で拓巳を掴んだ。
「拓巳~」
ズブブッ、ズブブッ、
「や、やめろ、」
「でも、たまらない…たまらなく香しい…」
「私も、たまらない~」
「たまらなく~拓巳が欲しい~」
「俺も~」
どす黒い身体を抱きしめる拓巳。
「ああっ…」
「ううっ…」
パックン、
拓巳は、一口で食べられてしまいました。
「あ~美味しかった…」
ペロリ、舌。
ネット広告。
「沈香のような、白檀のような、その香しい香りを嗅ぐと、皆、たちまち虜になってしまう……」
「……次の香姫は、あなた」
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