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【第1章】異世界転移

【14話】〈迷宮〉突入

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 それから俺たちはスキルを集めながら近隣のモンスターを倒してレベルを上げた。

 そしてついにその日を迎えた。
俺たちが異世界に召喚されて7日目の朝、ついに迷宮攻略に挑む。
 迷宮の入り口は城から20kmほど南に離れた僻地にあった。前日は近くの町に泊まり、準備を整えた。
 今回の迷宮攻略にあたって、俺とフレッド、そしてカレン以外に4人編成の小隊3つと魔術師団から5名の魔術師が派遣された。総勢20名の陣容となった。
 俺とフレッドのレベルは5日間でさらに上昇し、ともにレベル32。スキルは12個、そのうちB級スキルが2個、C級スキルが10個。
 B級迷宮に挑むにはギリギリの水準だが、俺とフレッドの経験があれば何とかなるだろう。

「いよいよ、ですね」

 迷宮に向かう道でカレンが不安げな顔で言った。

「大丈夫さ! 俺とコウはこのくらいの迷宮なら何度も攻略してきたんだ、数え切れないくらいに」

 フレッドがカレンを励ますように言った。

「ああ、フレッドの言う通りだ」

「……はい。正直怖いですけど、お二人のこと信じてます。お役に立てるよう精一杯努めます!」

「おう、頼んだぜ! よし、前の方でビビってる兵士達にも同じこと言ってきてやろ」

 そう言うとフレッドは俺達を先導している兵士達に檄を飛ばしに行った。
 アイツは適当そうに見えるがいつも周りを明るくしてくれる。

「フレッドさんはすごいですね。私なんて自分のことで精一杯なのに、あんな風にみんなを励まして」

「ああ、アイツはすごいやつなんだよ」

 フレッド、智樹とは腐れ縁だが尊敬しているのは本当だ。アイツほどの友人は他にいない。

「見えてきました! あそこです!」

 ニックが指差して告げた方向には、巨大な黒い角柱のモニュメントが見えた。近づいていくとモニュメントは太陽光を反射して鈍く光っていた。

「これが……〈迷宮〉?」

「いえ、ここは〈迷宮〉への入り口です。準備が出来次第、ここから〈迷宮〉の中へ入ります」

 黒いモニュメントは近づいてみると、30メートルほどの高さがあろうかという大きさで、黒く滑らかな表面は大理石を思わせた。

「みなさん。装備の最終確認をして近くに集まって下さい」

 ニックに促され、モニュメントの前で一箇所に集まった。それを確認するとニックはモニュメントに近づいていった。

「では、いきます」

 ニックはモニュメントに手を触れた。するとその部分が眩く輝いた。モニュメントが放つ黒い光は徐々に広がっていき俺たち全員を飲み込んだ……。


  ♢♢


 光がおさまり、目を開けるとそこはさっきまでいた場所とはまるで違っていた。空はなく、白い岩壁に囲まれただだっ広い空間が広がっていた。周りを見ると一緒に来た20名ほどが全員で周囲を見回していた。

「来た、ついに来たんだ……。ここが〈迷宮〉」

 ニックが呟いた。
 そちらを振り向くとニックの後ろに、入り口と同じ巨大な黒いモニュメントが見えた。あそこが出入り口というわけか。

「よし! 出発しよう!」
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