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【第2章】異世界再誕

【29話】龍鱗を纏う者

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 龍人は一直線にこちらに突進してきた。
 後ろにはカレンがいる。そしてこの狭い空間では周りに逃げ場はない。
 俺はカレンが巻き添えを食わないよう、前方に踏み込んでいって龍人の剣を受けようとした。が、しかし龍人の大剣は俺の構えた剣を軽々と弾き飛ばし、俺の左腕ごとすべてを薙いでいった。

「ぅゔぁぁああああ!!!!!」

 余りの痛みに絶叫する。
 龍人は一太刀で俺の左腕を肩口から吹き飛ばした。真下に弾かれた俺の剣が地面に跳ね返り宙を舞う。

「ッ! コウさん!」

 カレンが後ろから悲鳴のような声を上げる。

「《痛覚無効》!! 大丈夫、下がってて!」

 激痛に目眩をさせながらスキルを詠唱する。
 《痛覚無効》の発動と共に痛みは一瞬で立ち消えた。
 俺は横に飛び退いて、龍人から距離をとった。

「《治癒キュア》!!」

 龍人から離れながら《治癒キュア》で左腕が再生する。
 龍人は振り下ろした大剣をゆっくり持ち上げ、爬虫類のような眼でこちらを鋭く睨みつける。

 龍人族。〈デュプリケート〉の中ではハイクラスのモンスターとして〈迷宮〉ボスに据えられることも多かった。豪傑揃いの戦闘種族。龍人族の中でも最上位種の「〈始祖〉ドラグ・アポストル」はAA級にすら到達する。
 今目の前にいるコイツは、4m程の体躯に全身を覆う青い龍鱗、手に持つ大剣や身に纏う装飾品からしてB級の「〈戦士〉ドラグ・ソード」。

 クソッ、なんでこんなハイクラスモンスターがボス以外で出てくるんだ!

 内心で悪態をつく。

「《電撃ショックボルト》!」

 電光が宙に閃きドラグ・ソードに命中する。

『ッ……』

 電撃は龍人の右肩の鱗を抉り肉を焦がしたが、龍人は声一つ上げない。
 効いている、が大きなダメージは入ってないようだ。撃ち続ければ攻撃系の遠距離スキルだけで削り切れるかもしれない。けど攻撃系スキルはSPスキルポイント消費が激しく、SPが無くなればそこで終わり。ジリ貧だ。
 やはり《治癒キュア》を掛けながら近接戦闘しかない、か……。

 俺は意を決して、さっき弾き飛ばされた剣を拾うため龍人の方へ向かっていった。龍人が俺を迎え撃とうと大剣を振りかぶる。
 《治癒キュア》を重ね掛けして、龍人の攻撃に備える。ヤツの攻撃は一撃が重く、直撃すれば命取りになりかねない。
 龍人が横一文字に剣を振るう。
 俺は直前で龍人の右側に飛び込んで、ヤツの足元に落ちていた剣を拾った。躱し切れなかったヤツの大剣が俺の左脇腹を削いでいく。

「コウさんッ!!」

 後ろからカレンが叫んだ。
 腹から血飛沫が上げるが構わず龍人の背中を取り戻したばかりの剣で斬りつける。
 そうする間に事前に掛けておいた《治癒キュア》が、脇腹の傷を立ち所に塞いでいく。

 龍人の反撃。振り向き様の一撃で腕が吹き飛ぶ、が剣を持っていない左腕だ。構わず片腕のまま、龍人の腹を右手の剣で突き刺す。剣が硬い鱗を破って、筋肉質な腹の肉に突き刺さる。

『グァァ!』

 龍人が遂に声を上げた。俺は剣を引き抜いてもう一度斬りかかろうとしたが、龍人が俺を引き剥がす為に闇雲に剣を振り回す。
 俺は咄嗟に後ろに飛び退いて一旦距離を取った。

「コウさん! そのまま距離をとって戦ってください!」

 カレンが俺にずっと叫んでいた。今にもノドを枯らしてしまいそうな必死な叫び。

「ダメだ! 距離を取って戦ってもコイツは倒せない!」

『ウォオオオオオオオ!!!!!』

 龍人が怒気を孕んだ雄叫びを上げた。そして怒りにさらに鋭くなった眼光をこちらに向ける。
 俺はカレンの声を無視して再び龍人に向かっていく。
 ヤツの剣の軌道を避け切る事は出来ないが、ことは出来る。そして攻撃の直後に生まれた隙をついて、こちらの攻撃を加える。
 龍人が大剣を振り下ろす。目論見通り、俺はまた半身だけ体をズラしてカウンターを狙う。また左半身は持っていかれるだろうが構わない。
 しかしその直前、カレンが俺と龍人の間に割って入り、俺を突き飛ばした。
 そして、龍人の剣がカレンを切り裂いたーー。


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