待ち合わせの公園

こいちゃん

文字の大きさ
4 / 4

手作りチョコ

しおりを挟む
 冬休みも明けて、少し春めいてきた2月。
クリスマス?もちろん(以下略)
もう少しで5年生へと上がる。上級生への1歩を踏み出す数字にクラスのみんなもワクワクしていた。
そしてそれとは別のワクワク、いや、ドキドキに近いイベントもやってくるのであった。
 

 「今日バレンタインじゃない?」
駅に向かう途中話題に上がったその話は、自分には無縁のイベントの事だった。
「あー、今日か」
「誰かにもらう予定はあるの?」
「ない、まぁ毎年クラスのみんなに配る人いるから、その人からくらいじゃない?」
「大誠モテてないの?」
「モテるか!」
駅に着いた車から飛び出し、駅へと雪解け水で滑らないように走る。
「ほら、おっちゃんからの友チョコ」
「え」
少し口角の上がった顔で渡してくる。
「ま、学校前にでも食っちゃいな」
「あ、ありがと」
振り向き際にさっと手をあげ会釈するその姿は、なんとも言えない男らしさがあった。
「(絶対昔モテモテだったな)」
「なに?チョコもらったの?」
「うわっ!」
いきなり視界に現れた女子高生に驚き、危うく板チョコを割ってしまうとこだった。
「お姉ちゃん、、」
「もう、花でいいって、はいリピートアフターミー花」
「花さん」
 ほっぺを膨らませた花さんと電車に乗り込み、向かいあわせの席へと座る。
「ねぇ、今日バレンタインだよ」
「しってるしってる」
「大誠くんはもらう予定は?」
「どうせ義理だよ」
「えーーー」
「なんですかーーー」
「じゃあ、はいこれ」
渡された小さな透明の袋には、チョコで彩られたクッキーが入っていて、視界の端に映る花さんの顔はニコニコとからかうような顔をしていた。
「ねぇ、本命か義理、どっちだと思う?」
「義理」
「もーー」
「駅つきましたよ」
「あ!ま、味の保証はしないからね!」
急いで降りていった花さんに窓越しにお辞儀をしてお礼をして、手を振る姿を見送った。

 ビッグイベントのバレンタインも放課後になり、男子はほかの男子と数を聞きあっていた。
「大誠ー、何個もらった?」
「クラスの子が配ってたのしかもらってねーよ」
「じゃあ3個か」
「5」
「5!?」
 ワンワンと吠える真弘を慰めながら昇降口を抜け、いつものコンビニで別れる。少し見送った真弘の後ろ姿は敗北感で溢れていた。
「大誠くん!」
後ろから美幸ちゃんの声が聞こえ、小走りで近づいてくるのが見えた。その隣にはトコトコと歩くイブさんの姿もあった。
「あ、あの、」
恥ずかしくて言い出せないのか、30秒ほど経ち、歩いてきたイブさんが追いついてしまった。
「はい、あげるー」
追いついたイブさんは流れるようにランドセルから取り出したクッキーの入った小袋をくれた。
「え、イブさんくれるの?」
「義理な」
「はい」
前のパッチリしため目はどこに行ったのだろうと悲しくなる。
「わ、私も!」
勢いよく出された袋には、様々な形のチョコが入っていて、なんだか他の人のものとは違うような気がした。
「美幸ちゃんも、ありがとう!」
赤くなった顔はマフラーの下に隠れる。
「本命らしいよー」
「義理です!!」
ごめんごめんと美幸を落ち着かせ、それじゃ、とだけ言って2人で去って行く。
「(本命、、真弘には黙っとくか)」
赤くなった顔を隠し、小走りで駅へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

幼馴染の許嫁

山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

【完結】少年の懺悔、少女の願い

干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。 そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい―― なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。 後悔しても、もう遅いのだ。 ※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

【完結】小さなマリーは僕の物

miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。 彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。 しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。 ※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...