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姉妹誘惑のお宿編
お兄さんに脱がしてもらっちゃおうかな
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ああ、いい天気だ。
明け方の空は思いのほか晴れており、雲がほとんどない。
この別荘地は山に建てられているため傾斜があって、朝日に染まっていく海を眺められるのは贅沢だなと思う。
しかし同じ景色をしばらく見つめていた茜ちゃんはというと、すぐに顔を戻してからまた首に抱きついてくる。
すりっと頬をこすりつけてくるのは甘えんぼうな猫のようだと感じたけれど、耳元に響く声によってただの幻想なのだと知った。
「お兄さんに脱がしてもらっちゃおうかなぁ」
その瞬間、朝日に輝く海なんてどうでも良くなった。
いや、マジで海なんてどうでも良くない? あんなの地球のもつ46億年もの歴史のうち43億年前からあったんだし見飽きたよ。
昨夜はあまり寝ていない。パジャマ姿で抱っこされたままの彼女はやはり眠そうな瞳で見あげており、だけど俺をじっと眺めて観察してる気配がある。もしかしたらまだ浮気を心のどこかで疑っているのかもしれない。
ごくっと喉を鳴らしてから問いかけた。
「い、いいの?」
「えーと、改まって聞いちゃだめ。恥ずかしいわ」
ぷいっと顔を逸らされて、少しだけ慌てながらも俺は頷く。
そしてバルコニーに彼女をそっと下ろすと、背中側からお腹のパジャマに指をかけることにした。
朝日を受けたおへそが見えて、頭がくらっとする。
いや、こんなのはまだ序章だ。ボクシングで言うなら最初の牽制ジャブに過ぎなくて、お腹から股間に向けて指を入れていくとピクッという震えを受けながらすべすべの太ももまで両手をうずめた。
ぬくぬくの体温はいつもより高いのかもしれない。
後ろ向きで俺の首に手をかけながら、彼女はぼそりと「エッチ」と囁いてきた。
横目で見あげてくる彼女の瞳には悪戯心が見え隠れしていて、あっと小さく唇を開いて呻く。下着のなかに俺が指を入れたのだ。
「下から、脱ぐの……?」
「ああ、下から脱ぐんだよ。茜ちゃんはとてもエッチなお尻をしているからね」
ふうん、そうなんだとつぶやきながら再び瞳に笑みを浮かべると、彼女の唇はだんだんと「お」の形に開かれてゆきわなないた。
下着ごとパジャマを下ろしていく。するすると太ももをすべり、大事なところを隠している衣服が脱がされていくのは心細く感じたのかもしれない。海からの風が股間を通り抜けて行き、ぶるっと密着しているお尻が震えた。
「エッチなことしないって約束、ですよね? でもお風呂なんだし脱ぐのは当たり前だから、まだセーフです」
弄ぶようにくすりと笑いながらそう彼女は言う。
耳に唇が触れそうな距離で、ふうふうと吐息を当ててくるのはわざとだろうか。
彼女の唇はふっくらとしており、かすかに湿り気がある。その唇からときおり耳を食まれており、するりと下の衣服が全てバルコニーに落ちると、なにかいかがわしいことをしている気がしてならない。
発育十分であり桃のように真っ白なお尻がすぐ下にあって、はあと俺は溜息をこぼす。うっとりするほど綺麗な形をしているから、勝手に俺のアレが怒張していくのが分かる。
本当に気持ちいいんだ。このお尻で何度も俺は精子を絞り出されたし、すごく心地のよい声で彼女は鳴いてくれる。
今すぐにでもその輪郭を指でなぞりたい。
きっと彼女は頬を赤くして、でも一歩も動かずにぞくりと背筋を震わせてくれるだろう。
だけど今はエッチをしないと約束している。まだ彼女の瞳には悪戯心が浮かんでいる通り、これは俺が約束をきっちり守り続けるか、それとも破り捨てるか、という遊びなのだと気づいた。
「ね、上も脱がせて」
だから挑発をするように、ぼそりと彼女の唇は吐息を耳に当ててくる。
ひとつひとつボタンを外す手に指を重ねてきて、かすかに「見えちゃう」と彼女は耳元で囁く。
そうして、むあっと彼女の濃い香りが胸元から漂った。
くらりとする。
誇張などではなく視界が歪むのを俺は感じていた。
透けるような肌は綺麗なものであり、かすかにしっとりと汗で濡れている。
清純な顔つきとは裏腹にその身体つきは凶悪だ。背中のフックを外すと支えを失ったと分かるどるんという揺れを見せ、そしてふっくらとした乳頭は淡い色素を帯びている。
この視点は刺激的すぎる。
上向いた彼女は大きな瞳でじっと見つめており、鎖骨の下には輝くような肌が大きな膨らみを見せている。脇の下に一段目の膨らみがあって、それで乳房を支えているのか、目がチカチカするほど魅惑の形をした乳房は俺を確実に悩殺してくる。
ぐっとくびれた腰によってさらに大きさを誇張されており、可愛らしいおへその下にはなだらかな土手と肉付きのよい太ももがあって内股ぎみにもじりと彼女はこすり合わせていた。
「あン、お兄さんの鼻息がすごい」
「茜ちゃん、実は興奮しているでしょ?」
バレちゃった、と言うように彼女は桜色の舌をぺろりと覗かせる。
彼女が敬語をほとんど忘れてしまったのは、以前よりもずっと俺のことを知り、心と身体の距離をせばめたからだと思う。
それと同じくらい俺だって彼女のことを前よりも知っているので、からかっていることくらいすぐに分かる。
なので勃起していようが何だろうが構わずに、ぽいぽいと衣服を放ると彼女はじっと下腹部を見つめて、瞳を真ん丸にしたまま見あげてきた。
「お兄さん、エッチすぎ」
「どっちがだよー、もー。茜ちゃんこそ無闇に挑発しちゃだめ。男なんてすぐにこうなるんだから」
指でバッテンを作って見せると、それがおかしかったのか彼女はお腹を抱えてくつくつと笑う。それから俺の手首を掴むと、バルコニーの先にあるお風呂場に向けて歩き出した。
明るい時間、素っ裸になって歩くのは変な感じだ。目の前に桃のようなお尻が揺れていて、ときおりチラリと振り返ってくるのも、俺がまだ勃起したままなのも非日常的だと思う。
「やっぱりお兄さんっていいな。すごく安心する」
「それ、素っ裸で言うセリフじゃないと思うよ?」
「うるさいなー、もー。せっかくいい気持ちだったのに。黙って私と一緒にお風呂に入りなさい、徹さん」
もうっと漂う湯気のなか、彼女は手を引きながら四角く張られたお風呂に片足を入れる。とぽんと沈み、そして誘いかけるような笑みを向けてきた。
そしてたおやかに手を伸ばすとベンチに畳まれていたタオルを掴み、その裸体の前面を覆い隠す。
あ、自分だけずるい。
というほどでも無かった。
ぺったりと張りついたタオルなどでは彼女の凶悪な身体を隠すことなんてできず、豊かな起伏を生み出している。
横から覗いた乳房といい、かすかに浮かぶおへその皺といい、エロさという意味ではまったく変わらない……どころかチラリズムという意味で高得点を得ていた。
浴槽に背を預けながら茜ちゃんも己の身体を見下ろして、それから頬を赤く染めながら照れ隠しのように呟いてくる。
「鼻の下、伸びてますよー」
「うん、もう諦めた。茜ちゃん相手だと、俺なんてコロッだからね」
「どっちがですかー。私なんて……あ、なんでもないです」
そっと瞳を横に逸らしながら彼女は言葉を尻切れにする。
なにを言いかけていたんだろうと思いはしても、彼女から手を伸ばされて、お風呂場に腰まで沈めることになると、2人にはもったいないくらいの広々とした湯船に「うふー」と変な声が出て忘れてしまった。
そうして縁に頭を置いて思うのは、心細いくらいの柵を挟んで青空と海が広がっているという開放感が素晴らしいということだ。
海から流れてくる風は、早朝のせいかまだ涼しいくらいで穏やかだ。左右の山から広がる緑もまた風情があり、これは贅沢だと旅行慣れしていない俺は思う。
「いいところだねー、東伊豆。誘ってもらえて本当に良かった」
ちゃぷりと湯の音をたてながら、黒髪をまとめ終えた彼女は身を寄せてくる。ごく自然とすぐ隣に身を置いて、ころんと肩に頭を乗せてきたのには嬉しさでまた勃起が始まってしまいそうな思いだよ。
「たまの贅沢だから……といってもタダですけど」
「うーん、尚のこと素晴らしい。だけど怪しいなとは思うかな」
昨日の夕方に見かけたモデルの男が頭をチラついた。
タダより高いものはない。そういう意味で言ったんだけど、彼女はしばらく黙ったままでなにも答えてくれなかった。
しばらくそのまま待つと、彼女は少しだけ沈んだ表情を見せる。
「本家と叔母さまとはあまり交流がないけど、でも毎年のように私たちを招待してくれるんです。良くしてもらえていて、だからあまり悪いことは言わないで欲しいわ」
本家との交流が少ない? どういう意味なんだろう。
そう疑問を浮かべはするが、彼女の気持ちを尊重すべきだと思う。うなずきながら「素晴らしい宿を提供してくれて、もちろん感謝をしているよ」と俺は答えた。
感謝しているのは間違いない。
この別荘で過ごしてからというもの彼女との距離は確かに密接になったと思うしさ。
もしかしたら彼女も同じ思いだったのかもしれない。以心伝心というべきか、こちらが考えていることも簡単に伝わってしまう気がする。
だから何も言わずとも彼女は俺が聞きたいことをゆっくりと語ってくれた。
「だいぶ前のことなんだけど、本家のおばあさまが亡くなられたの。厳しい人だったみたいだけど、私たちにはとても優しくて、すごく可愛がってくれた」
そりゃあそうだろう。お人形のように可愛らしい姉妹だ。素直にきゃいきゃいはしゃいでくれるし、きっとすごく可愛かったに違いない。
だけど続けて語られたことに俺は驚かされた。
「相続を私たちだけにすると遺書に書かれていたそうなの。最初は何かの冗談だろうと思ったけど本当だったらしくて、でもそんなのすぐに断ったわ。近づいてくる大人たちがすごく気持ち悪かったし、関わりたくないと思ったから」
話の規模感が分からないけれど、もしかしたら相当な額だったのかもしれない。それをきっぱりと断るほど、周りの大人は欲まみれのひどい顔を見せてきたのかもしれない。
身体をすり寄せてきた茜ちゃんは、まるで甘える子供みたいだった。
「その後、叔母さまは相続でもめてしまったの。山を売り、本家から離れた場所に別荘地を作るなんて罰当たりだと親戚から嫌われてしまって……。だけど私たちには毎年のように招待してくれているわ」
「なるほど、そういうことがあったんだ」
地主など広い土地を持っている血筋では、そのような相続争いというのは今でも起こる。庶民としてはピンと来づらいけれど、金というのは人の隠れた一面を見せるものであり、幼少の彼女たちにとっては心の傷になっただろう。
そして遺産を放棄した彼女たちを招いているのは、罪滅ぼしの面もあったのかなと俺は思う。
ご両親と訪れないのは不自然だと感じていたけれど、親戚からつまはじきにされていたのが原因だったのかもしれない。
しかしそうなると疑問なのは、唐突にモデルの仕事を振られたことだろう。
なぜ今年になって急にそんなことを言ったのか。
そして思うのは、あの相馬という男があまり良いタイプの男ではなかったということだ。
俺を無視するように話を進めて、これからの予定をどんどん押しつけようとしていたあの姿は、どうにも癇にさわるものがあった。
いつの間にか思考にふけっていたのだろうか。
じっと彼女から見つめられたことに気がついた。
「変な話をしてごめんなさい。いまは夏休みを楽しむために来たんだし、徹さんはあまり思い悩まないで欲しいわ」
「そうだね。うん、気にしないようにしよう。どうせ今日はモデルの件も断るつもりだったし」
ですね、とうなずかれた。
憂いが晴れたのか茜ちゃんは笑顔を見せてくれて、俺もつられて唇に笑みを浮かべる。
まだ宿泊日もあるし、そもそも海で泳いでもいない。東伊豆有数のビーチを目の前にしておきながら。
「おかしな話だよ。せっかく伊豆まで来たのに、たまに眺めるだけなんて」
「ふふ、それどころじゃなかったですからね」
くすっと彼女と一緒に笑った。
ここへ辿り着いてからというもの解き放たれたように身体を重ねて、結局はほとんど寝ないまま朝を迎えてしまうなんて。別れ話に発展しかけたし、先ほどはこの俺が泣いてしまうというハプニングもあった。
さらにはエッチ禁止などという混浴が待っていては、海なんてどうでもいいのひとことだ。
そんなことを考えていると、ちゃぱりと湯を鳴らしながら彼女はこちらを向く。
「ねえねえ、徹さん。さっきから気になっていたんですけど、あそこのベンチにあるのってアロマオイルですかね」
「へえ、そんなものまで用意してあるんだ」
彼女の向こう側に目をやると、確かに寝台の隣に道具が用意されている。いや、もしかしたら片づけ忘れていたのかもしれない。
だけどこのときの俺たちは、なぜかじっとそのオイルの瓶を見つめたまま、なかなか目を離せなかった。
「せ、せっかくだしやってあげようか? 俺、マッサージとかすごく得意だし」
「え、そ、そんな……だってあまり寝ていないのに、徹さんにそんなことまで……」
エッチ禁止のお風呂場だけど、どちらかというとあれは健全なものだし、いやらしいものでは断じてない。
だけど俺と茜ちゃんは何故か顔を赤くしながらも、互いに鼻の下を伸ばすという不思議な顔つきをした。
ぱしゃり、とお風呂場の縁に手をついて立ち上がるのはすぐだった。
明け方の空は思いのほか晴れており、雲がほとんどない。
この別荘地は山に建てられているため傾斜があって、朝日に染まっていく海を眺められるのは贅沢だなと思う。
しかし同じ景色をしばらく見つめていた茜ちゃんはというと、すぐに顔を戻してからまた首に抱きついてくる。
すりっと頬をこすりつけてくるのは甘えんぼうな猫のようだと感じたけれど、耳元に響く声によってただの幻想なのだと知った。
「お兄さんに脱がしてもらっちゃおうかなぁ」
その瞬間、朝日に輝く海なんてどうでも良くなった。
いや、マジで海なんてどうでも良くない? あんなの地球のもつ46億年もの歴史のうち43億年前からあったんだし見飽きたよ。
昨夜はあまり寝ていない。パジャマ姿で抱っこされたままの彼女はやはり眠そうな瞳で見あげており、だけど俺をじっと眺めて観察してる気配がある。もしかしたらまだ浮気を心のどこかで疑っているのかもしれない。
ごくっと喉を鳴らしてから問いかけた。
「い、いいの?」
「えーと、改まって聞いちゃだめ。恥ずかしいわ」
ぷいっと顔を逸らされて、少しだけ慌てながらも俺は頷く。
そしてバルコニーに彼女をそっと下ろすと、背中側からお腹のパジャマに指をかけることにした。
朝日を受けたおへそが見えて、頭がくらっとする。
いや、こんなのはまだ序章だ。ボクシングで言うなら最初の牽制ジャブに過ぎなくて、お腹から股間に向けて指を入れていくとピクッという震えを受けながらすべすべの太ももまで両手をうずめた。
ぬくぬくの体温はいつもより高いのかもしれない。
後ろ向きで俺の首に手をかけながら、彼女はぼそりと「エッチ」と囁いてきた。
横目で見あげてくる彼女の瞳には悪戯心が見え隠れしていて、あっと小さく唇を開いて呻く。下着のなかに俺が指を入れたのだ。
「下から、脱ぐの……?」
「ああ、下から脱ぐんだよ。茜ちゃんはとてもエッチなお尻をしているからね」
ふうん、そうなんだとつぶやきながら再び瞳に笑みを浮かべると、彼女の唇はだんだんと「お」の形に開かれてゆきわなないた。
下着ごとパジャマを下ろしていく。するすると太ももをすべり、大事なところを隠している衣服が脱がされていくのは心細く感じたのかもしれない。海からの風が股間を通り抜けて行き、ぶるっと密着しているお尻が震えた。
「エッチなことしないって約束、ですよね? でもお風呂なんだし脱ぐのは当たり前だから、まだセーフです」
弄ぶようにくすりと笑いながらそう彼女は言う。
耳に唇が触れそうな距離で、ふうふうと吐息を当ててくるのはわざとだろうか。
彼女の唇はふっくらとしており、かすかに湿り気がある。その唇からときおり耳を食まれており、するりと下の衣服が全てバルコニーに落ちると、なにかいかがわしいことをしている気がしてならない。
発育十分であり桃のように真っ白なお尻がすぐ下にあって、はあと俺は溜息をこぼす。うっとりするほど綺麗な形をしているから、勝手に俺のアレが怒張していくのが分かる。
本当に気持ちいいんだ。このお尻で何度も俺は精子を絞り出されたし、すごく心地のよい声で彼女は鳴いてくれる。
今すぐにでもその輪郭を指でなぞりたい。
きっと彼女は頬を赤くして、でも一歩も動かずにぞくりと背筋を震わせてくれるだろう。
だけど今はエッチをしないと約束している。まだ彼女の瞳には悪戯心が浮かんでいる通り、これは俺が約束をきっちり守り続けるか、それとも破り捨てるか、という遊びなのだと気づいた。
「ね、上も脱がせて」
だから挑発をするように、ぼそりと彼女の唇は吐息を耳に当ててくる。
ひとつひとつボタンを外す手に指を重ねてきて、かすかに「見えちゃう」と彼女は耳元で囁く。
そうして、むあっと彼女の濃い香りが胸元から漂った。
くらりとする。
誇張などではなく視界が歪むのを俺は感じていた。
透けるような肌は綺麗なものであり、かすかにしっとりと汗で濡れている。
清純な顔つきとは裏腹にその身体つきは凶悪だ。背中のフックを外すと支えを失ったと分かるどるんという揺れを見せ、そしてふっくらとした乳頭は淡い色素を帯びている。
この視点は刺激的すぎる。
上向いた彼女は大きな瞳でじっと見つめており、鎖骨の下には輝くような肌が大きな膨らみを見せている。脇の下に一段目の膨らみがあって、それで乳房を支えているのか、目がチカチカするほど魅惑の形をした乳房は俺を確実に悩殺してくる。
ぐっとくびれた腰によってさらに大きさを誇張されており、可愛らしいおへその下にはなだらかな土手と肉付きのよい太ももがあって内股ぎみにもじりと彼女はこすり合わせていた。
「あン、お兄さんの鼻息がすごい」
「茜ちゃん、実は興奮しているでしょ?」
バレちゃった、と言うように彼女は桜色の舌をぺろりと覗かせる。
彼女が敬語をほとんど忘れてしまったのは、以前よりもずっと俺のことを知り、心と身体の距離をせばめたからだと思う。
それと同じくらい俺だって彼女のことを前よりも知っているので、からかっていることくらいすぐに分かる。
なので勃起していようが何だろうが構わずに、ぽいぽいと衣服を放ると彼女はじっと下腹部を見つめて、瞳を真ん丸にしたまま見あげてきた。
「お兄さん、エッチすぎ」
「どっちがだよー、もー。茜ちゃんこそ無闇に挑発しちゃだめ。男なんてすぐにこうなるんだから」
指でバッテンを作って見せると、それがおかしかったのか彼女はお腹を抱えてくつくつと笑う。それから俺の手首を掴むと、バルコニーの先にあるお風呂場に向けて歩き出した。
明るい時間、素っ裸になって歩くのは変な感じだ。目の前に桃のようなお尻が揺れていて、ときおりチラリと振り返ってくるのも、俺がまだ勃起したままなのも非日常的だと思う。
「やっぱりお兄さんっていいな。すごく安心する」
「それ、素っ裸で言うセリフじゃないと思うよ?」
「うるさいなー、もー。せっかくいい気持ちだったのに。黙って私と一緒にお風呂に入りなさい、徹さん」
もうっと漂う湯気のなか、彼女は手を引きながら四角く張られたお風呂に片足を入れる。とぽんと沈み、そして誘いかけるような笑みを向けてきた。
そしてたおやかに手を伸ばすとベンチに畳まれていたタオルを掴み、その裸体の前面を覆い隠す。
あ、自分だけずるい。
というほどでも無かった。
ぺったりと張りついたタオルなどでは彼女の凶悪な身体を隠すことなんてできず、豊かな起伏を生み出している。
横から覗いた乳房といい、かすかに浮かぶおへその皺といい、エロさという意味ではまったく変わらない……どころかチラリズムという意味で高得点を得ていた。
浴槽に背を預けながら茜ちゃんも己の身体を見下ろして、それから頬を赤く染めながら照れ隠しのように呟いてくる。
「鼻の下、伸びてますよー」
「うん、もう諦めた。茜ちゃん相手だと、俺なんてコロッだからね」
「どっちがですかー。私なんて……あ、なんでもないです」
そっと瞳を横に逸らしながら彼女は言葉を尻切れにする。
なにを言いかけていたんだろうと思いはしても、彼女から手を伸ばされて、お風呂場に腰まで沈めることになると、2人にはもったいないくらいの広々とした湯船に「うふー」と変な声が出て忘れてしまった。
そうして縁に頭を置いて思うのは、心細いくらいの柵を挟んで青空と海が広がっているという開放感が素晴らしいということだ。
海から流れてくる風は、早朝のせいかまだ涼しいくらいで穏やかだ。左右の山から広がる緑もまた風情があり、これは贅沢だと旅行慣れしていない俺は思う。
「いいところだねー、東伊豆。誘ってもらえて本当に良かった」
ちゃぷりと湯の音をたてながら、黒髪をまとめ終えた彼女は身を寄せてくる。ごく自然とすぐ隣に身を置いて、ころんと肩に頭を乗せてきたのには嬉しさでまた勃起が始まってしまいそうな思いだよ。
「たまの贅沢だから……といってもタダですけど」
「うーん、尚のこと素晴らしい。だけど怪しいなとは思うかな」
昨日の夕方に見かけたモデルの男が頭をチラついた。
タダより高いものはない。そういう意味で言ったんだけど、彼女はしばらく黙ったままでなにも答えてくれなかった。
しばらくそのまま待つと、彼女は少しだけ沈んだ表情を見せる。
「本家と叔母さまとはあまり交流がないけど、でも毎年のように私たちを招待してくれるんです。良くしてもらえていて、だからあまり悪いことは言わないで欲しいわ」
本家との交流が少ない? どういう意味なんだろう。
そう疑問を浮かべはするが、彼女の気持ちを尊重すべきだと思う。うなずきながら「素晴らしい宿を提供してくれて、もちろん感謝をしているよ」と俺は答えた。
感謝しているのは間違いない。
この別荘で過ごしてからというもの彼女との距離は確かに密接になったと思うしさ。
もしかしたら彼女も同じ思いだったのかもしれない。以心伝心というべきか、こちらが考えていることも簡単に伝わってしまう気がする。
だから何も言わずとも彼女は俺が聞きたいことをゆっくりと語ってくれた。
「だいぶ前のことなんだけど、本家のおばあさまが亡くなられたの。厳しい人だったみたいだけど、私たちにはとても優しくて、すごく可愛がってくれた」
そりゃあそうだろう。お人形のように可愛らしい姉妹だ。素直にきゃいきゃいはしゃいでくれるし、きっとすごく可愛かったに違いない。
だけど続けて語られたことに俺は驚かされた。
「相続を私たちだけにすると遺書に書かれていたそうなの。最初は何かの冗談だろうと思ったけど本当だったらしくて、でもそんなのすぐに断ったわ。近づいてくる大人たちがすごく気持ち悪かったし、関わりたくないと思ったから」
話の規模感が分からないけれど、もしかしたら相当な額だったのかもしれない。それをきっぱりと断るほど、周りの大人は欲まみれのひどい顔を見せてきたのかもしれない。
身体をすり寄せてきた茜ちゃんは、まるで甘える子供みたいだった。
「その後、叔母さまは相続でもめてしまったの。山を売り、本家から離れた場所に別荘地を作るなんて罰当たりだと親戚から嫌われてしまって……。だけど私たちには毎年のように招待してくれているわ」
「なるほど、そういうことがあったんだ」
地主など広い土地を持っている血筋では、そのような相続争いというのは今でも起こる。庶民としてはピンと来づらいけれど、金というのは人の隠れた一面を見せるものであり、幼少の彼女たちにとっては心の傷になっただろう。
そして遺産を放棄した彼女たちを招いているのは、罪滅ぼしの面もあったのかなと俺は思う。
ご両親と訪れないのは不自然だと感じていたけれど、親戚からつまはじきにされていたのが原因だったのかもしれない。
しかしそうなると疑問なのは、唐突にモデルの仕事を振られたことだろう。
なぜ今年になって急にそんなことを言ったのか。
そして思うのは、あの相馬という男があまり良いタイプの男ではなかったということだ。
俺を無視するように話を進めて、これからの予定をどんどん押しつけようとしていたあの姿は、どうにも癇にさわるものがあった。
いつの間にか思考にふけっていたのだろうか。
じっと彼女から見つめられたことに気がついた。
「変な話をしてごめんなさい。いまは夏休みを楽しむために来たんだし、徹さんはあまり思い悩まないで欲しいわ」
「そうだね。うん、気にしないようにしよう。どうせ今日はモデルの件も断るつもりだったし」
ですね、とうなずかれた。
憂いが晴れたのか茜ちゃんは笑顔を見せてくれて、俺もつられて唇に笑みを浮かべる。
まだ宿泊日もあるし、そもそも海で泳いでもいない。東伊豆有数のビーチを目の前にしておきながら。
「おかしな話だよ。せっかく伊豆まで来たのに、たまに眺めるだけなんて」
「ふふ、それどころじゃなかったですからね」
くすっと彼女と一緒に笑った。
ここへ辿り着いてからというもの解き放たれたように身体を重ねて、結局はほとんど寝ないまま朝を迎えてしまうなんて。別れ話に発展しかけたし、先ほどはこの俺が泣いてしまうというハプニングもあった。
さらにはエッチ禁止などという混浴が待っていては、海なんてどうでもいいのひとことだ。
そんなことを考えていると、ちゃぱりと湯を鳴らしながら彼女はこちらを向く。
「ねえねえ、徹さん。さっきから気になっていたんですけど、あそこのベンチにあるのってアロマオイルですかね」
「へえ、そんなものまで用意してあるんだ」
彼女の向こう側に目をやると、確かに寝台の隣に道具が用意されている。いや、もしかしたら片づけ忘れていたのかもしれない。
だけどこのときの俺たちは、なぜかじっとそのオイルの瓶を見つめたまま、なかなか目を離せなかった。
「せ、せっかくだしやってあげようか? 俺、マッサージとかすごく得意だし」
「え、そ、そんな……だってあまり寝ていないのに、徹さんにそんなことまで……」
エッチ禁止のお風呂場だけど、どちらかというとあれは健全なものだし、いやらしいものでは断じてない。
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