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第13話 白ウサギ
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「……っ、邪魔をするでない!!」
「断る」
久しぶりに耳にする、低く落ち着いた声。
「……?」
恐る恐る瞼を持ち上げるが、私の首筋にはまだ刃が突きつけられたままで、目の前にいる女王様は大鎌の取っ手をしっかりと両手で握り締めている。
ではなぜ、私の首は繋がったままなのか……いや、そもそも全く痛みが無いということは、少しの切り傷すらついていないという事だ。
女王様を見る限り、以前双子の刃から助けられた時のように時が止まっている様子も無い。
(どう、なって……)
目線を移動させると、そこには――刃を掴んで止めている、黒い手袋に覆われた誰かの手があった。
怪我を負っているのか、手首を伝い落ちた血が大理石の床に小さな水たまりを作っている。
首だけで後ろを振り返れば、
「サ、タン……」
「お前は、いつ会っても死にかけているな」
眉を寄せ「はあ……」とわざとらしいため息を吐かれて思わずカチンときた。
「わっ、私だって! 好きで殺されかけているんじゃないわ!」
「へえ、そうか。好きで殺されかけているんじゃない、か……なるほどな」
心底興味がなさげに抑揚のついていない声で吐き捨て、刃を掴む片手はそのままに、彼は空いている方の片手で背後から私の腰を抱き寄せる。
離して!と喚きながら抵抗するものの力の差は歴然で、大人しくサタンの胸に体を預けるしかなかった。
「女王陛下、だめよ」
サタンに妨害され、ぎゃーぎゃーとヒステリックを起こし始めた女王様。先ほどの白い兎耳を生やした女性はその背後に立ち、鈴を転がすようような声でたしなめる。
花が咲くように穏やかな笑顔を浮かべてはいるものの、その片手には小さな拳銃が握られており、銃口は女王様のこめかみに当てられていた。
「もうジョーカーではないわ。ね? これ以上はだめよ、女王陛下」
「うっ……白ウサギ……」
女王様は目尻いっぱいに涙を浮かべると、ついさっき『白ウサギ』と呼んだ女性に抱きつく。女性――白ウサギはその様子を見て拳銃を時計に戻し、「よしよし、いい子ね」と優しい手付きで女王様の頭を撫でた。
「まったく……アリス、お前……少しは人を疑ってかかったらどうなんだ?」
私を抱き寄せる手はそのままに、サタンは嫌味ったらしい文句を言って、鎌の刃を持つ手にぐっと力を込める。
瞬間、風を切るような音が耳に届き、瞬きの間に鎌はヘアピンへ戻ってしまった。
「……っ、サタン! 助けてくれたのは嬉しいわ、ありがとう! でも、いい加減に離して!」
あの手この手で暴れてやると、彼は喉で小さく笑ってからやっと手を離す。
「アリス……驚かせてごめんなさい、怪我はない?」
「え、ええ……大丈夫よ」
「良かった……」
白ウサギはお日様のようにあたたかい微笑みを浮かべてから、サタンを見て一度会釈し、こちらへ向き直り白い手袋に包まれた片手を差し出した。
「おかえりなさい、無事で良かった……今のアリスには改めて、自己紹介しておかなくちゃね。私は、白ウサギ。よろしくね」
***
赤い絨毯の敷かれた長い廊下で、黒ウサギとジャックの足音だけが小さく反響する。
相変わらず顔に笑みを貼り付けたままのジャックに対し、黒ウサギは無表情で口を開いた。
「あの場に残って、アリスを守らなくてよかったの?」
長いウサギの耳をぴょこりと揺らして顔を覗き込むと、ジャックの雰囲気がほんの少しだけ変わったような気配がする。
「今頃……女王は絶対、偽物ジョーカーになってると思うけど?」
「ああ、わかってるさ! けど、それでいいんだよ」
爽やかだった笑顔に、わずかな邪気が差す。軽い口調で落とされた騎士のセリフに、黒ウサギは深い意味を感じ取っていた。
あえて言い換えるのなら……まるで、
「アリスなんて、殺されてしまえばいいんだ」
ジャックは声を出さずに喉の奥で笑うと、目元に浮かべていた三日月型を消して黒ウサギを見る。
騎士は二、三度頷いた後に口を片手で覆い隠し、琥珀色の瞳を細めてクスクスと笑った。
「アリスが帰って来てから、このゲームが始まった時点で……俺が考えている事は、ずっと、ずっと……同じだよ。アリスは、死ねばいい。俺は……ルールに従うなら、偽物ジョーカーになっても絶対にアリスを殺してやれないし。だからさー、大嫌いな女王様だけど……俺の代わりにアリスを殺してくれるなら、言うことなし! 万々歳だ!」
無表情でジャックの話に耳を傾けている黒ウサギは、赤い二つのビー玉に騎士の姿を映したままで何の口出しもしない。ただ、手に持ったトランプの束を黙々とシャッフルさせていた。
ジャックはその様子を気にするでもなく、淡々と話を進めていく。
「俺は、女は嫌いだよ。ネムリネズミも、チェシャ猫も……女王陛下は、特に嫌いだ。でも、アリスだけはさ……」
そこで言葉を切ったジャックは、口を閉じて黒ウサギを見据えた。
トランプを混ぜ終わったらしい黒ウサギはジャックを見つめ返すと、くすりと笑って山札の上から三枚目までのトランプを手に取り、くるりとひっくり返してジャックに見せつける。
「ジョーカー二枚の間に、白紙のトランプが一枚。まさに、今のアリスの状況だね」
黒ウサギはさらに山札の上にあったトランプをもう一枚取り、先ほど引いたものと合わせた計四枚をジャックに手渡すと、残りの束を胸ポケットへしまった。
くるりと踵を返してジャックに背を向けると、黒ウサギは片手をひらひらと振りながら言葉を落とす。
「アリスは、今のみんなじゃ簡単には殺せないと思うよ。特に、君にはね。まあ……結局は『気持ちの問題』だし、せいぜい頑張ってね。ダイヤの騎士くん」
黒ウサギの姿が見えなくなった後、ジャックは先ほど受け取った四枚のトランプを見る。
一枚だけ裏面の柄が違うトランプは、表を見ると『クローバーの六』がえがかれていた。
「……」
クローバーの六と、ジョーカー二枚に挟まれた白紙のトランプ。ジャックはそれらを無言で眺めてから、胸ポケットのペンを抜き剣へ変化させる。
四枚のトランプを片手で頭上に投げ、舞い落ちる中からある一枚に狙いを定め、剣で真っ直ぐに突き刺すと……先ほどジョーカーだったはずの一枚が、ハートのQへ変化していた。
「なるほどなあ、黒ウサギさんはやっぱり言うことが違うぜ! うんうん……騎士は、アリスを簡単には殺せない。ね……」
ジャックは笑顔の消えた顔で呟きながら、足元に落ちていた白紙のトランプへ力任せに剣を突き立てる。
「ははっ……やってみなきゃわかんないだろ、そんな事はさ」
剣をペンに戻して胸ポケットへしまうと、白紙のトランプを一度踏みつけてから廊下を進んだ。
「黒ウサギさんってば、俺と言う『騎士』を見くびってもらっちゃ困るんだよなー! 騎士は”大切な人を守るのが仕事“なんだからさー! だから……俺だって、アリスを殺せるぜ。殺して見せる。だって、俺は……大好きな人のためならなんでもできる、従順な騎士だ。だから……アリスを、殺さなきゃな。なあ……お前だってそう思うよな、キング?」
「断る」
久しぶりに耳にする、低く落ち着いた声。
「……?」
恐る恐る瞼を持ち上げるが、私の首筋にはまだ刃が突きつけられたままで、目の前にいる女王様は大鎌の取っ手をしっかりと両手で握り締めている。
ではなぜ、私の首は繋がったままなのか……いや、そもそも全く痛みが無いということは、少しの切り傷すらついていないという事だ。
女王様を見る限り、以前双子の刃から助けられた時のように時が止まっている様子も無い。
(どう、なって……)
目線を移動させると、そこには――刃を掴んで止めている、黒い手袋に覆われた誰かの手があった。
怪我を負っているのか、手首を伝い落ちた血が大理石の床に小さな水たまりを作っている。
首だけで後ろを振り返れば、
「サ、タン……」
「お前は、いつ会っても死にかけているな」
眉を寄せ「はあ……」とわざとらしいため息を吐かれて思わずカチンときた。
「わっ、私だって! 好きで殺されかけているんじゃないわ!」
「へえ、そうか。好きで殺されかけているんじゃない、か……なるほどな」
心底興味がなさげに抑揚のついていない声で吐き捨て、刃を掴む片手はそのままに、彼は空いている方の片手で背後から私の腰を抱き寄せる。
離して!と喚きながら抵抗するものの力の差は歴然で、大人しくサタンの胸に体を預けるしかなかった。
「女王陛下、だめよ」
サタンに妨害され、ぎゃーぎゃーとヒステリックを起こし始めた女王様。先ほどの白い兎耳を生やした女性はその背後に立ち、鈴を転がすようような声でたしなめる。
花が咲くように穏やかな笑顔を浮かべてはいるものの、その片手には小さな拳銃が握られており、銃口は女王様のこめかみに当てられていた。
「もうジョーカーではないわ。ね? これ以上はだめよ、女王陛下」
「うっ……白ウサギ……」
女王様は目尻いっぱいに涙を浮かべると、ついさっき『白ウサギ』と呼んだ女性に抱きつく。女性――白ウサギはその様子を見て拳銃を時計に戻し、「よしよし、いい子ね」と優しい手付きで女王様の頭を撫でた。
「まったく……アリス、お前……少しは人を疑ってかかったらどうなんだ?」
私を抱き寄せる手はそのままに、サタンは嫌味ったらしい文句を言って、鎌の刃を持つ手にぐっと力を込める。
瞬間、風を切るような音が耳に届き、瞬きの間に鎌はヘアピンへ戻ってしまった。
「……っ、サタン! 助けてくれたのは嬉しいわ、ありがとう! でも、いい加減に離して!」
あの手この手で暴れてやると、彼は喉で小さく笑ってからやっと手を離す。
「アリス……驚かせてごめんなさい、怪我はない?」
「え、ええ……大丈夫よ」
「良かった……」
白ウサギはお日様のようにあたたかい微笑みを浮かべてから、サタンを見て一度会釈し、こちらへ向き直り白い手袋に包まれた片手を差し出した。
「おかえりなさい、無事で良かった……今のアリスには改めて、自己紹介しておかなくちゃね。私は、白ウサギ。よろしくね」
***
赤い絨毯の敷かれた長い廊下で、黒ウサギとジャックの足音だけが小さく反響する。
相変わらず顔に笑みを貼り付けたままのジャックに対し、黒ウサギは無表情で口を開いた。
「あの場に残って、アリスを守らなくてよかったの?」
長いウサギの耳をぴょこりと揺らして顔を覗き込むと、ジャックの雰囲気がほんの少しだけ変わったような気配がする。
「今頃……女王は絶対、偽物ジョーカーになってると思うけど?」
「ああ、わかってるさ! けど、それでいいんだよ」
爽やかだった笑顔に、わずかな邪気が差す。軽い口調で落とされた騎士のセリフに、黒ウサギは深い意味を感じ取っていた。
あえて言い換えるのなら……まるで、
「アリスなんて、殺されてしまえばいいんだ」
ジャックは声を出さずに喉の奥で笑うと、目元に浮かべていた三日月型を消して黒ウサギを見る。
騎士は二、三度頷いた後に口を片手で覆い隠し、琥珀色の瞳を細めてクスクスと笑った。
「アリスが帰って来てから、このゲームが始まった時点で……俺が考えている事は、ずっと、ずっと……同じだよ。アリスは、死ねばいい。俺は……ルールに従うなら、偽物ジョーカーになっても絶対にアリスを殺してやれないし。だからさー、大嫌いな女王様だけど……俺の代わりにアリスを殺してくれるなら、言うことなし! 万々歳だ!」
無表情でジャックの話に耳を傾けている黒ウサギは、赤い二つのビー玉に騎士の姿を映したままで何の口出しもしない。ただ、手に持ったトランプの束を黙々とシャッフルさせていた。
ジャックはその様子を気にするでもなく、淡々と話を進めていく。
「俺は、女は嫌いだよ。ネムリネズミも、チェシャ猫も……女王陛下は、特に嫌いだ。でも、アリスだけはさ……」
そこで言葉を切ったジャックは、口を閉じて黒ウサギを見据えた。
トランプを混ぜ終わったらしい黒ウサギはジャックを見つめ返すと、くすりと笑って山札の上から三枚目までのトランプを手に取り、くるりとひっくり返してジャックに見せつける。
「ジョーカー二枚の間に、白紙のトランプが一枚。まさに、今のアリスの状況だね」
黒ウサギはさらに山札の上にあったトランプをもう一枚取り、先ほど引いたものと合わせた計四枚をジャックに手渡すと、残りの束を胸ポケットへしまった。
くるりと踵を返してジャックに背を向けると、黒ウサギは片手をひらひらと振りながら言葉を落とす。
「アリスは、今のみんなじゃ簡単には殺せないと思うよ。特に、君にはね。まあ……結局は『気持ちの問題』だし、せいぜい頑張ってね。ダイヤの騎士くん」
黒ウサギの姿が見えなくなった後、ジャックは先ほど受け取った四枚のトランプを見る。
一枚だけ裏面の柄が違うトランプは、表を見ると『クローバーの六』がえがかれていた。
「……」
クローバーの六と、ジョーカー二枚に挟まれた白紙のトランプ。ジャックはそれらを無言で眺めてから、胸ポケットのペンを抜き剣へ変化させる。
四枚のトランプを片手で頭上に投げ、舞い落ちる中からある一枚に狙いを定め、剣で真っ直ぐに突き刺すと……先ほどジョーカーだったはずの一枚が、ハートのQへ変化していた。
「なるほどなあ、黒ウサギさんはやっぱり言うことが違うぜ! うんうん……騎士は、アリスを簡単には殺せない。ね……」
ジャックは笑顔の消えた顔で呟きながら、足元に落ちていた白紙のトランプへ力任せに剣を突き立てる。
「ははっ……やってみなきゃわかんないだろ、そんな事はさ」
剣をペンに戻して胸ポケットへしまうと、白紙のトランプを一度踏みつけてから廊下を進んだ。
「黒ウサギさんってば、俺と言う『騎士』を見くびってもらっちゃ困るんだよなー! 騎士は”大切な人を守るのが仕事“なんだからさー! だから……俺だって、アリスを殺せるぜ。殺して見せる。だって、俺は……大好きな人のためならなんでもできる、従順な騎士だ。だから……アリスを、殺さなきゃな。なあ……お前だってそう思うよな、キング?」
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