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三章 ブーガを狩る娘

35話

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明日は早朝からブーガ討伐へ出かけることが決まった。

「宿は決まっているのか?」

リーガンの問いに首を振る。
「持ち金が無いんだ。討伐で金を稼ぐまでは野営しようと思う」

「ダンテさんの宿屋にご案内します。今夜は無償で泊めてくれるはずです」

「いや、野営でいいさ」

ギルドまで案内してくれたダンテはとても気さくだったが、本来有償である宿屋にタダで泊まるのは気がすすまない。

「ダンテさんはいつもそうしてるんです。冒険者は街に必要な存在だからと。貴方が野営すれば、私達が叱られます」

「抵抗があるなら、後で金を返せばいい。部屋が埋まって金が入れば宿屋にもメリットがある話だ」

アスカとリーガン、2人の説得に応じた俺は、アスカの案内でダンテの宿屋に向かった。

ーー「やぁ、アスカちゃん来ると思ってたよ」

宿屋に入ると奥から女性が一人出てきた。
料理中だったのだろうか?食欲を誘う香りが漂っている。

「テスラさん。こんばんは。やはり、ダンテさんから話は聞いてますか?」

「あぁ、さっき一度帰ってきてね…そちらさんがセツさんだね。夫のダンテから聞いてるよ。今日は宿賃はいらないからゆっくり休んでくれ」

アスカが言うとおり、ダンテから宿賃不要として話が通ってるらしい。

「ありがたいが、そうもいかない。モンスターを討伐して稼いでから必ず払う」

テスラはニヤッとした笑みを浮かべる。

「あの人が言ってたよ。もしかしたら、貸し借りを嫌う人かもって。今は仕事中だけど、明日の夜には帰ってくるだろうから、直接話してくれるかい?嬉しい申し出だけど勝手に決めるとあの人、怒るんだよ」

ダンテは、一見穏やかなように見えるが頑固な一面もあるようだ。

その後はテスラが用意してくれた夕食をアスカと食べながら、翌日の打ち合わせをして、眠りについた。





ーー「いました。ブーガが2体です。いけますか?」

アスカの囁きに俺は黙って頷く。

俺たちは朝早くにトスマンテを出発し、歩いて30分ほどのダンジョン「ガナタ洞窟」に来ていた。

洞窟の通路はかなり広くククリ刀を振り回しても戦闘に支障はない。
また、洞窟の壁にはぼやっとオレンジ色に光る鉱石が埋まっており、外と同じように明るく視界も良好だった。

入ってから5分ほど歩いた辺りでモンスターの気配を感じた。

アスカが壁に張り付き、曲がり道の先を確認したところ、ブーガの姿を確認した。俺はアスカと位置を交代し、そっと頭を出す。

いた。アレがブーガか。まるで豚人間だ。顔は豚そのもの。胴体は肥えた男のようだ。腰にはボロ布を巻いており、石斧を手にしている。

昨日、アスカからブーガについての指導レクチャーは受けていた。

攻撃は基本、斧による斬撃のみ。魔法の行使も耐性もないが、腕力、脚力は成人男性の2倍以上で直撃すれば即死もありうる。体の構造は人間とほぼ一緒で左胸にある心臓への一撃が特に有効とのことだ。

俺は、脇差しを抜刀しタイミングを待つ。

そして、手前のブーガがこちらを向いた瞬間、脇差しを投げた。

「ガアァァァ!!!」

脇差しはブーガの左胸に突き刺さる。が、予想以上に皮と脂肪が厚く、絶命には至らない。ブーガは自分の胸に刺さった脇差しを抜き、地面に放るとこちら目掛けて突進してきた。

こちらも前進しつつ、大ククリ刀を抜刀。
そして、すでに傷を負っている左胸目掛けて突きを放った。

「ダメッ!!」

突然、アスカの大声が洞窟に響いた。
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