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三章 ブーガを狩る娘

40話

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俺とレイナは、連日ブーガを狩り続けた。
最低でも1日150体は討伐。多い日は200体以上に至った。だが10日、20日、そして1ヶ月経ってもブーガの大量発生は収まらなかった。

俺たちはリーガンに呼び出され、ギルドマスターの部屋に来ていた。アスカを加えた4人で卓を囲む。

「ハイブーガがいるね」

レイナが確信めいた口調で言う。


ハイブーガ。ブーガの上位種でDランクに相当する。風貌や体型はブーガよりやや大きい程度だが、攻撃力はその2倍以上。鍛えられた剣士であっても、まともに剣で受ければ、武器は破壊され、その一撃で致命傷となる可能性も高い。

出会っても、決して強引にかかってはいけない。間合いをとり、回避し、攻撃する。どんな冒険者であってもそうすべきだと。レイナ、そしてアスカから何度も注意を受けていた。
だが、これまで一度も出会わなかった。

「どこにいる?」

「ダンジョンの最奥だね」

「確かに最奥には行ってないが、一度も出会わなかったのはおかしくないか?すべての範囲に匂いが届くほどには範囲を広げたはずだろ?」

レイナは狩りを終えるごとに地図を塗りつぶし、日々狩り場を変えて効率的にブーガ撲滅を図っていた。

「おかしくはないよ。セツ。あんたと違ってあいつらの優先事項は狩りじゃない。戦いじゃない……繁殖だ」

ハイブーガは攻撃力以上に繁殖力がブーガとは桁違いだ。ハイブーガ同士のつがいがいればなおさら。食糧調達や防衛はブーガに任せ、奥でひたすらコトに努めているとレイナは主張する。

「だとしても、お前たちはこの一ヶ月間で尋常ない数を狩ってきた。それを上回るペースで繁殖しているというのか?」

「他の冒険者も含めると1日に400は減っている計算です」

リーガン、アスカが冷静な見解を述べる。とは言っても、今の状況はは非常事態に近い。対応に追われて、まともに休めていないのか、目元には疲れが見える。

「つがいが1組じゃなかったら?1週間で成体になるんだ。2組と計算しただけでも、とてもじゃないが、手数てかずが足らない。高止まりで済んでるだけでマシな方じゃない?」

アスカは淡々と見解を述べる。ブーガに関しての知識量は他の3人を足しても、遥か及ばない。
ハイブーガに遭遇した経験のないリーガン、アスカもこの一ヶ月、レイナの指示に従って対応していた。
レイナも内心はかなり歯がゆいことだろう。

「それに……子を産むのがブーガとは限らない」

この一ヶ月で5人の女性が行方不明になっていた。

うち、2人は昨日見つかった。息のない状態で。
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