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1話完結
せめて貴族の常識くらい知っててくれる?
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「は?」
困惑を隠せない様子でキョロキョロと部屋を見回している、きっとふしだらなご職業をしているのだろう女の腰を抱いて、寝言を宣う目の前の頭の悪そうな男は、残念ながら私の夫なのよね。
本当に残念だわ。
「は?ってなんだよ?
ちゃんと説明してやったのに、こんな簡単なことも理解出来ないわけ?」
めちゃくちゃ見下した、こちらを馬鹿にしてるって諸分かりな顔をするけれど、理解してないのは自分の方じゃないかしら?
こちらを嘲笑う顔、ムカつくわね。
「アンタが言ったことが理解出来ないわけではないわ。
ただ、寝言は寝てから言ってくれる?」
執務を終えて寝ようとしていた所に、ズカズカと勝手に私の部屋に入り込んできておいて、こんなアホな寝言をほざくなんて親の顔が見てみたいわ。
あ、結婚式の時に1度見たことはある筈なのだけれど、第一印象が悪すぎたらしくて記憶から抹消しちゃったのよね...全然思い出せないのよ。
結婚式以来一度もお会い出来ていないし、夜会などでお会いしても分からないかもしれないわね...本当に困ったわぁ。
「寝言なんて言ってねぇよ!!
新しい嫁なら見付けたから、お前はもう用済みなの。
子供ももう直ぐ生まれるしな!
だから、とっととここから出てけよ!!」
大きな声を出せば、私が怯むとでも思っているのかしら?
新しい嫁って...もしかしてその方?
でも、その方とても驚いてるわよ?
ほら、私の目を見ながら、いやいやナイナイって首を横に振ってるけど?
「ハァー...ここは私の家なんだから、出て行くのはアンタ達でしょ?
お帰りはあちらのドアからお願いしますね?」
ごめんなさいね?
事情はなんとなく察したけれど、私からするとだから?って感じなのよ。
2人仲良く出て行ってもらえる?
「はぁ?!
この家は、お前と結婚したんだから俺の家になってんだよ!」
ハァー、アホだアホだとは思っていたけど、本当にバカでアホでどうしようもないのよねー。
学園には通っていた筈なのに、どうしてこんなにもアホなのかしら?
もしかして、学園を卒業したっていうのは嘘で、実は中退してるんじゃない?
そもそも、入学すらしてないのかもしれないわね...あの調査結果、もう一度調べてもらおうかしら。
「そういう契約だったからアンタと結婚はしたけれど、私の両親が亡くなってからは父の遺言通り私の名義になってるわよ?」
「は?んなわけねぇだろ?!
この俺が、お前なんかと結婚してやったんだぞ?!」
「綺麗さっぱり忘れているのかもしれないけれど、アンタの立場は、ウチとは血の交わりの無い家から入ってきた入り婿でしょ?
貴族でも商家でも基本的には男性ばかりが継いでいるけれど、貴族ってのはね?
男っていう区別よりも、血筋が大事なのよ。」
「なにわけ分かんねぇこと言ってんだよ!!」
「いやいや、当然のことを言ってるだけよ?」
これだけ分かりやすく説明しているのに、分からないなんておかしいわよ?
どれだけアホなの?
いえ、このご様子だと、頭の病気なのかもしれないわね。
医者を手配させなきゃいけないかもしれないわ。
「使用人達だって、俺のことを旦那様って呼んでんだぞ?
なら、俺が伯爵家当主だろ?
俺が伯爵家当主なら、この家も俺のものな筈だ!!」
「使用人達がアンタを旦那様って呼んでいるのは、アンタの肩書きがそれしか無いからよ。
当主は私が継いでいるから、アンタを当主とは呼べないでしょ?
でも、アンタは騎士や文官として城に勤めている訳でも無いし、他の貴族家に勤めている訳でも無いし、この家でも領地でも何の役職も無いわよね?
私と結婚してから、アンタは実家の男爵家での仕事をサラッと辞めてきて、その後は仕事探しをするでもなくのんべんだらりと過ごしているんだもの。」
「肩書きだと?!
ハッ!やはり強欲な女が雇っている使用人達も強欲なんだな!!
人を肩書きでしか見れないとは、心が狭くて薄汚い証拠じゃねぇか!!」
「肩書きでしか見れないのではなく、呼び方の問題よ。
貴方を呼ばなければならない時に、貴方が使用人達に許可していないものだから貴方の名前を呼ぶことが出来ないのよ。」
「は?勝手に呼べば良いだろ!」
「貴族というものは、名前を呼ぶことすら許可しなければならないのよ。
貴方も貴族の出なら、理解していると思っていたけれど、その様子だと知らなかったのね?」
ハァ、とっとと離縁しましょう。
あまりにアホ過ぎて、この人と子作りしたくないわ。
ろくでもない子供が生まれそうだもの。
横の女性に証言してもらえば離縁出来るから、彼女には残ってもらおうかしら。
「そこのアホを追い出してちょうだい。」
「はい、当主様。」
「んぐぅっ!!」
私の指示を待っていた護衛を動かしてアホを排除してもらい、女性だけを残して話しを聞いてみたけれど、本当に可哀想な子だったわ。
10歳の頃に、仕事に家事に育児にと1人で必死に働いてきた母は過労死してしまい、仕事をしない父親に酒代が無いからと娼館へと売られてしまう。
14で初潮がきてから娼婦をしてきたけれど、18で下位貴族の愛人として身請けされて囲われ者になり、先日子供が出来てしまって捨てられた。
囲ったのなら、きちんと責任を果たせって思うのは私だけかしら?
着の身着のままで追い出されてしまい、どうしたら良いのかとフラフラとしていたところを、アホにここまで連れてこられたと。
あのアホ、自分の子供ですら無いじゃない。
せめて、自分の子供を身籠っている女性を連れてきなさいよ!
別な貴族の愛人の子供なのよ?
他人の子供過ぎるわ!
「あの、私、どうしたら?」
「そのお腹の子供のこととか、あのアホに連れてこられた経緯とかを、私の弁護士に証言してもらえるかしら?」
「えぇ、勿論です。」
「それなら、この家で雇うわ。」
「私、娼婦と愛人しかしてませんよ?」
「あら、娼館で下働きしてたでしょ?」
「あ、はい!
お掃除と洗濯は得意です。」
「先日、洗濯女が1人辞めてしまことになったのよ。
洗濯が得意なら、ありがたいわ。」
「頑張ります!」
「出産してから勤めてもらうけど、無理だけはしないようにするのよ?
その子の母は、貴女だけなのだからね?」
「はい。」
話している間ずっと、とても不安そうにしていたけれど、やっと笑ってくれたわ。
あんな不良債権とはとっとと離縁して、新しい夫を探さないとね。
もう少し貴族について詳しくて、まともに私と子作りしてくださる方を。
ま、私と親戚関係の男の子供みたいだから、この子の子供を養子にしても良いんだけどね。
アイツの子供だとバレれば、かなり面倒になりそうだから辞めとくわ。
*
困惑を隠せない様子でキョロキョロと部屋を見回している、きっとふしだらなご職業をしているのだろう女の腰を抱いて、寝言を宣う目の前の頭の悪そうな男は、残念ながら私の夫なのよね。
本当に残念だわ。
「は?ってなんだよ?
ちゃんと説明してやったのに、こんな簡単なことも理解出来ないわけ?」
めちゃくちゃ見下した、こちらを馬鹿にしてるって諸分かりな顔をするけれど、理解してないのは自分の方じゃないかしら?
こちらを嘲笑う顔、ムカつくわね。
「アンタが言ったことが理解出来ないわけではないわ。
ただ、寝言は寝てから言ってくれる?」
執務を終えて寝ようとしていた所に、ズカズカと勝手に私の部屋に入り込んできておいて、こんなアホな寝言をほざくなんて親の顔が見てみたいわ。
あ、結婚式の時に1度見たことはある筈なのだけれど、第一印象が悪すぎたらしくて記憶から抹消しちゃったのよね...全然思い出せないのよ。
結婚式以来一度もお会い出来ていないし、夜会などでお会いしても分からないかもしれないわね...本当に困ったわぁ。
「寝言なんて言ってねぇよ!!
新しい嫁なら見付けたから、お前はもう用済みなの。
子供ももう直ぐ生まれるしな!
だから、とっととここから出てけよ!!」
大きな声を出せば、私が怯むとでも思っているのかしら?
新しい嫁って...もしかしてその方?
でも、その方とても驚いてるわよ?
ほら、私の目を見ながら、いやいやナイナイって首を横に振ってるけど?
「ハァー...ここは私の家なんだから、出て行くのはアンタ達でしょ?
お帰りはあちらのドアからお願いしますね?」
ごめんなさいね?
事情はなんとなく察したけれど、私からするとだから?って感じなのよ。
2人仲良く出て行ってもらえる?
「はぁ?!
この家は、お前と結婚したんだから俺の家になってんだよ!」
ハァー、アホだアホだとは思っていたけど、本当にバカでアホでどうしようもないのよねー。
学園には通っていた筈なのに、どうしてこんなにもアホなのかしら?
もしかして、学園を卒業したっていうのは嘘で、実は中退してるんじゃない?
そもそも、入学すらしてないのかもしれないわね...あの調査結果、もう一度調べてもらおうかしら。
「そういう契約だったからアンタと結婚はしたけれど、私の両親が亡くなってからは父の遺言通り私の名義になってるわよ?」
「は?んなわけねぇだろ?!
この俺が、お前なんかと結婚してやったんだぞ?!」
「綺麗さっぱり忘れているのかもしれないけれど、アンタの立場は、ウチとは血の交わりの無い家から入ってきた入り婿でしょ?
貴族でも商家でも基本的には男性ばかりが継いでいるけれど、貴族ってのはね?
男っていう区別よりも、血筋が大事なのよ。」
「なにわけ分かんねぇこと言ってんだよ!!」
「いやいや、当然のことを言ってるだけよ?」
これだけ分かりやすく説明しているのに、分からないなんておかしいわよ?
どれだけアホなの?
いえ、このご様子だと、頭の病気なのかもしれないわね。
医者を手配させなきゃいけないかもしれないわ。
「使用人達だって、俺のことを旦那様って呼んでんだぞ?
なら、俺が伯爵家当主だろ?
俺が伯爵家当主なら、この家も俺のものな筈だ!!」
「使用人達がアンタを旦那様って呼んでいるのは、アンタの肩書きがそれしか無いからよ。
当主は私が継いでいるから、アンタを当主とは呼べないでしょ?
でも、アンタは騎士や文官として城に勤めている訳でも無いし、他の貴族家に勤めている訳でも無いし、この家でも領地でも何の役職も無いわよね?
私と結婚してから、アンタは実家の男爵家での仕事をサラッと辞めてきて、その後は仕事探しをするでもなくのんべんだらりと過ごしているんだもの。」
「肩書きだと?!
ハッ!やはり強欲な女が雇っている使用人達も強欲なんだな!!
人を肩書きでしか見れないとは、心が狭くて薄汚い証拠じゃねぇか!!」
「肩書きでしか見れないのではなく、呼び方の問題よ。
貴方を呼ばなければならない時に、貴方が使用人達に許可していないものだから貴方の名前を呼ぶことが出来ないのよ。」
「は?勝手に呼べば良いだろ!」
「貴族というものは、名前を呼ぶことすら許可しなければならないのよ。
貴方も貴族の出なら、理解していると思っていたけれど、その様子だと知らなかったのね?」
ハァ、とっとと離縁しましょう。
あまりにアホ過ぎて、この人と子作りしたくないわ。
ろくでもない子供が生まれそうだもの。
横の女性に証言してもらえば離縁出来るから、彼女には残ってもらおうかしら。
「そこのアホを追い出してちょうだい。」
「はい、当主様。」
「んぐぅっ!!」
私の指示を待っていた護衛を動かしてアホを排除してもらい、女性だけを残して話しを聞いてみたけれど、本当に可哀想な子だったわ。
10歳の頃に、仕事に家事に育児にと1人で必死に働いてきた母は過労死してしまい、仕事をしない父親に酒代が無いからと娼館へと売られてしまう。
14で初潮がきてから娼婦をしてきたけれど、18で下位貴族の愛人として身請けされて囲われ者になり、先日子供が出来てしまって捨てられた。
囲ったのなら、きちんと責任を果たせって思うのは私だけかしら?
着の身着のままで追い出されてしまい、どうしたら良いのかとフラフラとしていたところを、アホにここまで連れてこられたと。
あのアホ、自分の子供ですら無いじゃない。
せめて、自分の子供を身籠っている女性を連れてきなさいよ!
別な貴族の愛人の子供なのよ?
他人の子供過ぎるわ!
「あの、私、どうしたら?」
「そのお腹の子供のこととか、あのアホに連れてこられた経緯とかを、私の弁護士に証言してもらえるかしら?」
「えぇ、勿論です。」
「それなら、この家で雇うわ。」
「私、娼婦と愛人しかしてませんよ?」
「あら、娼館で下働きしてたでしょ?」
「あ、はい!
お掃除と洗濯は得意です。」
「先日、洗濯女が1人辞めてしまことになったのよ。
洗濯が得意なら、ありがたいわ。」
「頑張ります!」
「出産してから勤めてもらうけど、無理だけはしないようにするのよ?
その子の母は、貴女だけなのだからね?」
「はい。」
話している間ずっと、とても不安そうにしていたけれど、やっと笑ってくれたわ。
あんな不良債権とはとっとと離縁して、新しい夫を探さないとね。
もう少し貴族について詳しくて、まともに私と子作りしてくださる方を。
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