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「酷い?いえ、当然の措置でしょう。
プディング嬢、貴女は私の娘に対して、それはもう酷い噂を流してくださいましたよね?
娘は、拐かされて孤児院へと連れて行かれ、その孤児院で平民として育ってきましたが...私と妻との間に産まれた実の娘です。
ずっと、探しておりました。
やっと見付けて、これからは幸せに暮らそうと考えておりましたのに...貴女の立てた心無い噂によって、妻も娘も苦しんでおります。」
確かに、愛人に生ませた子供が誘拐された娘に似ていたから引き取ったのだと、流れている噂では聞いておりましたわ。
伯爵様は伯爵夫人のことを愛しておられますし、伯爵家の血を繋ぐための子を持つようにと親族より迫られても、愛人を持つことを頑なに拒否されておられましたのよね。
ですから、彼女が愛人に産ませた庶子ではないのだということは分かっておりましたのよ?
娘さんに似ているだけの平民なのだと言う方々が殆どでしたけれど、そうではありませんでしたのね...誘拐された娘さんご本人だったなんて、それは知りませんでしたわ。
実の娘さんであったのならば、あのようにドレスで木に登ったり、私達のドレスを見てこのレースと同じレース編みをしたいと言い出したりと、そのような実現がなかなか難しい我が儘であったとしても、少しでも聞いてあげたいと思ってしまっても無理はありませんわ。
つい甘やかしてしまい、貴族としての教育が遅れてしまうことには賛成いたしかねますけれど...何年も共に過ごせなかったのですものね。
知らなかったとは言え、私も少し対応を変えようと思いますわ。
もしかすると、爵位としては同じ伯爵家なのですし、自分と同じような境遇だと勝手に思い込んでしまわれたのかしら?
プディング様は、運良く伯爵家の方の子を身籠っただけの下級娼婦の子ですものね。
「ルーズリー伯爵、私共はこのような夜会の場には場違いかと存じますが、婚約破棄のご要請をいただきましたので少々失礼いたします。」
「セサミン神官様!お待ちしておりました。
どうぞ、こちらとしては構いませんので、マーガレット嬢の為にも手続きをなさってくださいませ。」
「ありがとうございます。」
あら、伯爵様へと声をかけられたのは、王都にある神殿のセサミン神官様方ですわね。
お父様が婚約破棄の為に呼ばれたのかしら?
夜会の最中ですのに、このような醜態を晒してしまって、参加なされている皆様には申し訳ないわ。
やはり、こちらを見てコソコソと小さな声でお話しをする方がおられるわね。
伯爵様が許してくださっているからなのか、はたまた王太子殿下がおられるからなのかは分かりませんけれど、あからさまに非難してくる方も、こちらの邪魔をなさる方もおりませんの。
ありがたいことですわ。
「婚約を破棄するのは...どなたとどなたでしょうか?」
「私の長女であるマーガレット・シフォンと、ここにいるグリスフィルド子息です。」
「では、お2人はこちらへ...。」
「セサミン神官様、2人の婚約契約書はこちらになりますわ。」
「はい、受け取ります。」
セサミン神官様は、とても穏やかに話される方ですわね...お顔は、何の感情も読み取れない無表情ですけれども。
グリスフィルドのご子息様と渋々向かい合うお姉様は、グリスフィルドのご子息様と目を合わせることもお嫌なご様子で...セサミン神官様だけを見ておりますわ。
お母様がお姉様達の婚約契約書をセサミン神官様へと渡すと、グリスフィルドのご子息様はとても嬉しそうにいたしました。
あの...私に微笑みかけられましても、ただただ不快なだけなのですが?
ガナッシュ様も殺気立っておられるので、こちらを見ないでくださいませ。
「では、破棄の理由をお聞かせ願います。」
「マルゲ...マーガレットは、妹であるミルフィーユを虐げている。
そんな下劣な女を妻とは出来ない!」
あら、やっとマルゲリータではないと理解されましたのね?
もう遅いのですけれど...少し進歩しましたわ。
それにしても、私が姉に虐げられていると未だに信じておりますのね?
相変わらず、可哀想な頭をされておられますわ。
セサミン神官様の持つ水晶は女神様より賜った水晶で、真実のみに反応すると言われております。
契約を結ぶときや破棄するときには、女神様より賜った水晶を必ず用いますのよ。
ですから、契約の不履行はあり得ませんわ。
女神様のお怒りに触れますものね...もしも破門されたら、この国では生きていけませんわ。
この水晶は、真実を話していれば淡く緑色に光りますの。
嘘を吐けば光ることなどなく、嘘を重ねすぎますと赤く光りますのよ。
1度でも赤く光ってしまえば、女神様のお怒りに触れてしまったとして処罰されますわ。
*
プディング嬢、貴女は私の娘に対して、それはもう酷い噂を流してくださいましたよね?
娘は、拐かされて孤児院へと連れて行かれ、その孤児院で平民として育ってきましたが...私と妻との間に産まれた実の娘です。
ずっと、探しておりました。
やっと見付けて、これからは幸せに暮らそうと考えておりましたのに...貴女の立てた心無い噂によって、妻も娘も苦しんでおります。」
確かに、愛人に生ませた子供が誘拐された娘に似ていたから引き取ったのだと、流れている噂では聞いておりましたわ。
伯爵様は伯爵夫人のことを愛しておられますし、伯爵家の血を繋ぐための子を持つようにと親族より迫られても、愛人を持つことを頑なに拒否されておられましたのよね。
ですから、彼女が愛人に産ませた庶子ではないのだということは分かっておりましたのよ?
娘さんに似ているだけの平民なのだと言う方々が殆どでしたけれど、そうではありませんでしたのね...誘拐された娘さんご本人だったなんて、それは知りませんでしたわ。
実の娘さんであったのならば、あのようにドレスで木に登ったり、私達のドレスを見てこのレースと同じレース編みをしたいと言い出したりと、そのような実現がなかなか難しい我が儘であったとしても、少しでも聞いてあげたいと思ってしまっても無理はありませんわ。
つい甘やかしてしまい、貴族としての教育が遅れてしまうことには賛成いたしかねますけれど...何年も共に過ごせなかったのですものね。
知らなかったとは言え、私も少し対応を変えようと思いますわ。
もしかすると、爵位としては同じ伯爵家なのですし、自分と同じような境遇だと勝手に思い込んでしまわれたのかしら?
プディング様は、運良く伯爵家の方の子を身籠っただけの下級娼婦の子ですものね。
「ルーズリー伯爵、私共はこのような夜会の場には場違いかと存じますが、婚約破棄のご要請をいただきましたので少々失礼いたします。」
「セサミン神官様!お待ちしておりました。
どうぞ、こちらとしては構いませんので、マーガレット嬢の為にも手続きをなさってくださいませ。」
「ありがとうございます。」
あら、伯爵様へと声をかけられたのは、王都にある神殿のセサミン神官様方ですわね。
お父様が婚約破棄の為に呼ばれたのかしら?
夜会の最中ですのに、このような醜態を晒してしまって、参加なされている皆様には申し訳ないわ。
やはり、こちらを見てコソコソと小さな声でお話しをする方がおられるわね。
伯爵様が許してくださっているからなのか、はたまた王太子殿下がおられるからなのかは分かりませんけれど、あからさまに非難してくる方も、こちらの邪魔をなさる方もおりませんの。
ありがたいことですわ。
「婚約を破棄するのは...どなたとどなたでしょうか?」
「私の長女であるマーガレット・シフォンと、ここにいるグリスフィルド子息です。」
「では、お2人はこちらへ...。」
「セサミン神官様、2人の婚約契約書はこちらになりますわ。」
「はい、受け取ります。」
セサミン神官様は、とても穏やかに話される方ですわね...お顔は、何の感情も読み取れない無表情ですけれども。
グリスフィルドのご子息様と渋々向かい合うお姉様は、グリスフィルドのご子息様と目を合わせることもお嫌なご様子で...セサミン神官様だけを見ておりますわ。
お母様がお姉様達の婚約契約書をセサミン神官様へと渡すと、グリスフィルドのご子息様はとても嬉しそうにいたしました。
あの...私に微笑みかけられましても、ただただ不快なだけなのですが?
ガナッシュ様も殺気立っておられるので、こちらを見ないでくださいませ。
「では、破棄の理由をお聞かせ願います。」
「マルゲ...マーガレットは、妹であるミルフィーユを虐げている。
そんな下劣な女を妻とは出来ない!」
あら、やっとマルゲリータではないと理解されましたのね?
もう遅いのですけれど...少し進歩しましたわ。
それにしても、私が姉に虐げられていると未だに信じておりますのね?
相変わらず、可哀想な頭をされておられますわ。
セサミン神官様の持つ水晶は女神様より賜った水晶で、真実のみに反応すると言われております。
契約を結ぶときや破棄するときには、女神様より賜った水晶を必ず用いますのよ。
ですから、契約の不履行はあり得ませんわ。
女神様のお怒りに触れますものね...もしも破門されたら、この国では生きていけませんわ。
この水晶は、真実を話していれば淡く緑色に光りますの。
嘘を吐けば光ることなどなく、嘘を重ねすぎますと赤く光りますのよ。
1度でも赤く光ってしまえば、女神様のお怒りに触れてしまったとして処罰されますわ。
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