女竜騎士が暴れます?

神谷 絵馬

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本編

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その後は、私は女性であるのだからと月の物の時はご配慮くださいましたけれど、他は男性とほぼ同じ厳しい訓練を乗り越えましたわ。
何分、身長の差という懸案事項が発生してしまいまして、訓練に使われる器具や魔具の大きさという事情もありまして、全く同じ訓練が出来ないものもございましたの。
そのような事態に直面する度に皆様が知恵を出し合って考えてくださいまして、私の身長でも行えるように器具や魔具を新調なさったり調整したりと手をかけてくださいましたのよ?
皆様には無駄なお手数をおかけして申し訳ないとは思いますけれど、沢山のミルクィを飲んでも私の身長はほんの少ししか伸びませんでしたわ。

私が成長して騎竜を決めるときには、他の方を主としていた騎竜達も選定式に参加していて、竜騎士達が青白い顔をなさって騎竜達を見つめているという、とても面白い光景を拝めましたわ。
主のいる証を着けたままで、しれーっと明後日の方を向いて並んでましたもの。
私が近付くと、いつもよりもお利口さんで、ピシッと背を伸ばして座っていて本当に可愛らしかったのよ?
勿論、主のいる騎竜は直ぐに列から出されましたけれど、多分私の扱いを知っていて見て見ぬふりをした主への意趣返しだったのだと今では思いますわ。
列に並んでいたのは、当時を知る方々の騎竜ばかりでしたもの。

私の騎竜が無事に決まってからは、お祖父様の策略によって辺境を転々とさせられておりましたの。
婚姻を強要されることもなく、様々な土地を回れると言うことは私にとってもシリウスにとっても楽しいことですので、そこは構いませんけれど...お祖父様の為になってしまっているということが嫌なのですわ。

それが、昨年のことです。
急に、子爵家へと戻り婚約せよとの要請がお祖父様から入りましたの。
お相手は、同じ子爵家のご次男でしたわ。
質の良い騎竜を輩出されているお家柄でしたから、竜の言葉を理解出来る私が嫁ぐのが最適だと王命が下りましたの。
国王陛下も、私の25歳という年齢を鑑みてそろそろ婚姻をと判断されたのだとお聞きいたしましたので、慎んでお受けいたしましたのよ?
婚約期間中は、手紙のやり取りや職務の合間を縫ってのお茶の時間で交流しておりましたわ。
とても誠実な方であると、喜んでおりましたのに......!
それなのに、これは、何の冗談なのかしら?
そもそもが王命で決まった婚約を、あと僅かの婚約期間中に王命で破棄して、王命で別の方に嫁げと仰っておられるのよね??
しかも...今度は婚約期間も無く??
陛下といえど、私を随分と愚弄なさいますのね...覚悟は出来ているのよね?

「あらまぁ、国王陛下もお祖父様も、良い度胸ですわね!!
お祖父様?これは王命ですもの...勿論、受け入れて差し上げますわ!
このような不名誉な理由で死にたくなどありませんもの!
けれど、私を愚弄なさったこと、どうぞ後悔なされませんように...覚悟なさいませ。」

「リリスベル!その態度は何だ!!」

「唾が飛んで汚いですから、どうぞ喚かないでくださいませ。
婚姻の準備がございますので、失礼いたしますわ。」

「待たぬか!!リリスベル!!」

「私は、貴方の便利に使える道具などではありませんわ!
1人の人として、意思を持っておりますのよ?
貴方はそれをお忘れでしたのね。
本当に、残念ですわ。」

「二度と顔を見せるな!!」

「あら、唯一の孫の結婚式に参列なさいませんの?
酷いお祖父様ですこと。
貴族の間で噂になること請け負いですわね。
まぁ、無事に結婚式が行われるのか自体、甚だ疑問ですけれど...ね。」





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