21 / 21
本編
-21-
しおりを挟む
コンコンコンッ
「お義父様、よろしいでしょうか?」
「ん?あ、あぁ、入ってくれ!」
お義父様は、何やら慌てておられるご様子ですわね...複数の紙を急いで寄せ集めるような音と、大量の紙をぶちまけたような音がしますわ。
「す、すまない...陳情が出されている農地や空き地の資料が多すぎて、この有様だ。
分かるように黄色のヒモで絞っておいたのだが、見付からなくてな...本当に申し訳ない。」
「あらまぁ、空き巣に家捜しでもされたかのようですわね。
お一人では大変でしょうから、探すのをお手伝いいたしますわ。
黄色のヒモで絞ってあるのですね?」
「あぁ、竜舎の候補地に関しての資料は黄色のヒモで絞って、分けておいたんだ。
だが、執事の誰かが上に他の書類などを置いたようで...ハァー、後で件の執事を見つけ出して処分しないとな。」
えぇ、もしも執事の仕業なのでしたら、見つけ出し次第処分をきちんといたしませんとね。
主の部屋に書類などを届ける際に、たとえ置ける場所が見当たらなくとも、書類や資料の上に置くなどあり得ませんわ。
「農地や空き地の資料はどうされますか?」
「あー、それぞれ何枚かずつで綴ってあるだろう?」
「えぇ、そうなっておりますわ。」
「1番上の紙に丸印が書いてあるものは農地で、四角い印が書いてあるものは空き地になる。
農地と空き地、それぞれで重ねて執務机に置いておいてくれるか?」
「かしこまりました。」
少々雑ですけれども、たしかに数枚ずつで綴じておりますわね。
1番上の紙には、簡易的な領地の地図と丸と四角の印があるのですね...分かりやすくてありがたいですわ。
とっとと終わらせてしまいましょう。
「手伝わせてしまって、すまない...。
昨日は直ぐに渡せると思っていたのだが、腑甲斐ないよ。」
「仕方ありませんわ。
...あら?これは農地でも空き地でも、竜舎の候補地でもなさそうですわ。」
「なに?見せてくれ!」
「どうぞ。」
「..........は?なんだ?これは!!」
「パッと見た限りですけれど、愛人を住まわせる為の別邸の設計図のようですわね。」
私が見付けた資料を食い入るように見つめるお義父様の顔色が、なんだか優れませんわね。
まぁ、無理もありませんわ。
先代伯爵様のお名前で、伯爵としての権限において施工するとの文言がありますけれど、先代伯爵夫人ではない女性の名前と、それなりに豪華な邸の設計図が載っているのですもの。
先代伯爵様は、もう伯爵としての権限をお使いにはなれませんのに...。
「...ハァー、この筆跡は父上のものか?
大人しく引っ込んだと思えば、こんな...後で使いをやろう。」
「お義父様も大変ですわね。」
「君にも、君の騎竜にも、多大な迷惑をかけているが、きちんと宰相閣下の仰せ通りにするから許してくれ。」
「えぇ、宰相閣下から大筋は聞いておりますので、大丈夫ですわ。」
「胃が痛いよ。」
ウフフ、先代伯爵様の方がフェバリシス様に似ておられますわね。
これでは、先代伯爵様の方がフェバリシス様の実の父親なのでは?と疑われても仕方ありませんわよね。
現伯爵様の前の奥様も、先代伯爵様と不貞を犯されたそうですし...この家は色々と大変ですわね。
無理に無理を重ねて分捕った私との婚姻も、上手くは行きませんでしたしね。
オホホホホ!ま、宰相閣下の仰せの通りに、私は白い結婚を満喫いたしますわ。
先代伯爵様に振り回されているお義父様も大変ですけれど、それに巻き込まれてしまった私も大変なのですもの。
*
「お義父様、よろしいでしょうか?」
「ん?あ、あぁ、入ってくれ!」
お義父様は、何やら慌てておられるご様子ですわね...複数の紙を急いで寄せ集めるような音と、大量の紙をぶちまけたような音がしますわ。
「す、すまない...陳情が出されている農地や空き地の資料が多すぎて、この有様だ。
分かるように黄色のヒモで絞っておいたのだが、見付からなくてな...本当に申し訳ない。」
「あらまぁ、空き巣に家捜しでもされたかのようですわね。
お一人では大変でしょうから、探すのをお手伝いいたしますわ。
黄色のヒモで絞ってあるのですね?」
「あぁ、竜舎の候補地に関しての資料は黄色のヒモで絞って、分けておいたんだ。
だが、執事の誰かが上に他の書類などを置いたようで...ハァー、後で件の執事を見つけ出して処分しないとな。」
えぇ、もしも執事の仕業なのでしたら、見つけ出し次第処分をきちんといたしませんとね。
主の部屋に書類などを届ける際に、たとえ置ける場所が見当たらなくとも、書類や資料の上に置くなどあり得ませんわ。
「農地や空き地の資料はどうされますか?」
「あー、それぞれ何枚かずつで綴ってあるだろう?」
「えぇ、そうなっておりますわ。」
「1番上の紙に丸印が書いてあるものは農地で、四角い印が書いてあるものは空き地になる。
農地と空き地、それぞれで重ねて執務机に置いておいてくれるか?」
「かしこまりました。」
少々雑ですけれども、たしかに数枚ずつで綴じておりますわね。
1番上の紙には、簡易的な領地の地図と丸と四角の印があるのですね...分かりやすくてありがたいですわ。
とっとと終わらせてしまいましょう。
「手伝わせてしまって、すまない...。
昨日は直ぐに渡せると思っていたのだが、腑甲斐ないよ。」
「仕方ありませんわ。
...あら?これは農地でも空き地でも、竜舎の候補地でもなさそうですわ。」
「なに?見せてくれ!」
「どうぞ。」
「..........は?なんだ?これは!!」
「パッと見た限りですけれど、愛人を住まわせる為の別邸の設計図のようですわね。」
私が見付けた資料を食い入るように見つめるお義父様の顔色が、なんだか優れませんわね。
まぁ、無理もありませんわ。
先代伯爵様のお名前で、伯爵としての権限において施工するとの文言がありますけれど、先代伯爵夫人ではない女性の名前と、それなりに豪華な邸の設計図が載っているのですもの。
先代伯爵様は、もう伯爵としての権限をお使いにはなれませんのに...。
「...ハァー、この筆跡は父上のものか?
大人しく引っ込んだと思えば、こんな...後で使いをやろう。」
「お義父様も大変ですわね。」
「君にも、君の騎竜にも、多大な迷惑をかけているが、きちんと宰相閣下の仰せ通りにするから許してくれ。」
「えぇ、宰相閣下から大筋は聞いておりますので、大丈夫ですわ。」
「胃が痛いよ。」
ウフフ、先代伯爵様の方がフェバリシス様に似ておられますわね。
これでは、先代伯爵様の方がフェバリシス様の実の父親なのでは?と疑われても仕方ありませんわよね。
現伯爵様の前の奥様も、先代伯爵様と不貞を犯されたそうですし...この家は色々と大変ですわね。
無理に無理を重ねて分捕った私との婚姻も、上手くは行きませんでしたしね。
オホホホホ!ま、宰相閣下の仰せの通りに、私は白い結婚を満喫いたしますわ。
先代伯爵様に振り回されているお義父様も大変ですけれど、それに巻き込まれてしまった私も大変なのですもの。
*
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
16
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる