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本編
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さて、竜舎を建てる候補地の資料の用意はどうなっているのかしら?
お義父様は部屋に届けるようにすると仰られましたけれど、まだ誰もいらっしゃらないわね。
ハァー、こちらから取りに行く方が早いかしら?
「ユミア、子竜達と少しここで待っていてくださる?」
「?はい、かしこまりました。」
「子竜達、私は竜舎の候補地の資料を取りに行ってくるので少し離れるけれど、ユミアと良い子で過ごしていてね?」
〈ぴゅーぅ!〉
〈びゅあ!〉
元気に返事をしてくれたので、お義父様の執務室へと参りましょうか。
あ、一応先触れを出しておいた方が良いのかしら?
でも、もう直ぐお昼になるのよね...時間を守らなかったのはあちらですし、なにより面倒くさいですし、このまま向かいましょう。
「奥様、どちらに?」
「竜舎の候補地の資料を頂きに、お義父様の執務室に参りますわ。
朝までに用意してくださると仰っておられましたけれど、もう直ぐお昼になりますのにまだ届きませんの。」
「では、ご案内いたします。」
「ありがとう。」
部屋を出ると、直ぐに寄ってくる護衛...というよりも、監視でしょうか?
私は様々な魔法具を使用しているから音漏れや侵入などを気にしなくても大丈夫だけれど、扉の左右に護衛を置かれるなんて普通なら気持ち悪いわよね。
ま、この方が案内してくださると言うのなら、今はそのお言葉に甘えましょう。
「......あの、自分はルビウス・アルブと申す者なのですが、1つお伺いしても良いでしょうか?」
「なにかしら?」
こちらをチラチラと気にしておられるので、何か言いたいのかしら?と思案しておりましたら、緊張気味にあちらから話しかけてこられました。
ルビウス・アルブ...あら、もしかして?
「奥様は、シュルバという騎竜とその相棒をご存知でしょうか?
あ、その、年の離れた従兄弟が竜騎士をしておりまして...自分の父が拒否されてしまったものですから、その従兄弟は自分とも絶縁しているのです。」
「あらまぁ、シュルバの相棒が貴方の従兄弟なのですか?」
「はい、自分が産まれる前の出来事なので直接の面識はありませんが、家族からはそう聞いています。
従兄弟は、ガウレス・アルブという名前です。」
やっぱり、ガウレス兄様の関係者でしたか...同じ髪色だなとは思いましたけれど、顔はあまり似ていませんわね。
ガウレス兄様は竜騎士らしい背の高く横にもがっしりとした体型で、子供にも女性にも怖がられることの多い強面。
対するルビウス・アルブは、可愛らしい愛嬌のある丸顔で、ヒョロリと背の高い細身ですわね。
あぁ、よく見たら眉毛がそっくりそのまま同じですわ!
「えぇ、どちらも存じておりますわ。」
「騎竜も従兄弟も、元気でしょうか?」
「えぇ、7年程前に赴任されたオルトルス辺境伯爵領にての任務中にオルトルス辺境伯爵様に気に入られたそうで、オルトルス辺境伯爵領専任の竜騎士として活躍なさっておられますわ。」
「そうですか!
良かった...ありがとうございます。
10年前までは多少なり情報を知ることが出来たのですが、ここ8年程は竜騎士新聞を読んでも従兄弟の名前も騎竜の名前も見付けられなくて...心配していたんです。」
「竜に拒否されて絶縁しなければならないのは竜騎士という職業柄仕方ありませんけれど、その後などの情報すら分からないというのは辛いですわよね。」
「はい、すみません不躾にお聞きしてしまいました。」
「詳しい任務内容などはお教えいたしかねますが、彼がオルトルス辺境伯爵領専任の竜騎士となっていることは公表されておりますし、そんなに気にしなくても大丈夫ですわ。
親族の安否が気になるのは、皆様同じでしょうから。」
「ありがとうございます。
あ、旦那様の執務室はこちらです。」
「ありがとう。」
確かに、普通であれば案内中に護衛対象話しかけるなんて出来ないわよね。
けれど、竜に拒否されてしまったからと絶縁することを選んだとは言え、親族の安否が気になるのは仕方ないわ。
ウフフ、申し訳なさそうにするガウレス兄様と同じ、困ったと表す下がった眉毛が懐かしくて和むわね。
*
お義父様は部屋に届けるようにすると仰られましたけれど、まだ誰もいらっしゃらないわね。
ハァー、こちらから取りに行く方が早いかしら?
「ユミア、子竜達と少しここで待っていてくださる?」
「?はい、かしこまりました。」
「子竜達、私は竜舎の候補地の資料を取りに行ってくるので少し離れるけれど、ユミアと良い子で過ごしていてね?」
〈ぴゅーぅ!〉
〈びゅあ!〉
元気に返事をしてくれたので、お義父様の執務室へと参りましょうか。
あ、一応先触れを出しておいた方が良いのかしら?
でも、もう直ぐお昼になるのよね...時間を守らなかったのはあちらですし、なにより面倒くさいですし、このまま向かいましょう。
「奥様、どちらに?」
「竜舎の候補地の資料を頂きに、お義父様の執務室に参りますわ。
朝までに用意してくださると仰っておられましたけれど、もう直ぐお昼になりますのにまだ届きませんの。」
「では、ご案内いたします。」
「ありがとう。」
部屋を出ると、直ぐに寄ってくる護衛...というよりも、監視でしょうか?
私は様々な魔法具を使用しているから音漏れや侵入などを気にしなくても大丈夫だけれど、扉の左右に護衛を置かれるなんて普通なら気持ち悪いわよね。
ま、この方が案内してくださると言うのなら、今はそのお言葉に甘えましょう。
「......あの、自分はルビウス・アルブと申す者なのですが、1つお伺いしても良いでしょうか?」
「なにかしら?」
こちらをチラチラと気にしておられるので、何か言いたいのかしら?と思案しておりましたら、緊張気味にあちらから話しかけてこられました。
ルビウス・アルブ...あら、もしかして?
「奥様は、シュルバという騎竜とその相棒をご存知でしょうか?
あ、その、年の離れた従兄弟が竜騎士をしておりまして...自分の父が拒否されてしまったものですから、その従兄弟は自分とも絶縁しているのです。」
「あらまぁ、シュルバの相棒が貴方の従兄弟なのですか?」
「はい、自分が産まれる前の出来事なので直接の面識はありませんが、家族からはそう聞いています。
従兄弟は、ガウレス・アルブという名前です。」
やっぱり、ガウレス兄様の関係者でしたか...同じ髪色だなとは思いましたけれど、顔はあまり似ていませんわね。
ガウレス兄様は竜騎士らしい背の高く横にもがっしりとした体型で、子供にも女性にも怖がられることの多い強面。
対するルビウス・アルブは、可愛らしい愛嬌のある丸顔で、ヒョロリと背の高い細身ですわね。
あぁ、よく見たら眉毛がそっくりそのまま同じですわ!
「えぇ、どちらも存じておりますわ。」
「騎竜も従兄弟も、元気でしょうか?」
「えぇ、7年程前に赴任されたオルトルス辺境伯爵領にての任務中にオルトルス辺境伯爵様に気に入られたそうで、オルトルス辺境伯爵領専任の竜騎士として活躍なさっておられますわ。」
「そうですか!
良かった...ありがとうございます。
10年前までは多少なり情報を知ることが出来たのですが、ここ8年程は竜騎士新聞を読んでも従兄弟の名前も騎竜の名前も見付けられなくて...心配していたんです。」
「竜に拒否されて絶縁しなければならないのは竜騎士という職業柄仕方ありませんけれど、その後などの情報すら分からないというのは辛いですわよね。」
「はい、すみません不躾にお聞きしてしまいました。」
「詳しい任務内容などはお教えいたしかねますが、彼がオルトルス辺境伯爵領専任の竜騎士となっていることは公表されておりますし、そんなに気にしなくても大丈夫ですわ。
親族の安否が気になるのは、皆様同じでしょうから。」
「ありがとうございます。
あ、旦那様の執務室はこちらです。」
「ありがとう。」
確かに、普通であれば案内中に護衛対象話しかけるなんて出来ないわよね。
けれど、竜に拒否されてしまったからと絶縁することを選んだとは言え、親族の安否が気になるのは仕方ないわ。
ウフフ、申し訳なさそうにするガウレス兄様と同じ、困ったと表す下がった眉毛が懐かしくて和むわね。
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