思い付き短編集

神谷 絵馬

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竜の愛し子の番。3

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「あー、娘が何かやらかしましたか?」

騎士様に案内されてきたとと様は、ロンさんに抱かれていた私を受け取って心配そうにしてるの。
でもね、とと様?
どうして私がなにかやらかすと思うの?
ちゃんと、竜さんたちに興奮したりしないで大人しくしてたよ?

「いえいえ、竜達により愛し子様の番に選ばれたのです。」

「......番?マリシアが?」

朗らかに笑う騎士様の言葉に首をひねり私を見つめるとと様に、私もよくは分かっていないのでおでこでとと様の頬をグリグリしてみたら、仕方無さそうに微笑んでから私の頭を撫でました。
竜さん達にも詳しくは説明してもらえてないので、ごめんなさい。

「えぇ、お嬢様が選ばれました。
つきましては、これから愛し子様の竜との顔合わせを別場にて行いたいのですが...王女様アホが癇癪を起こしておられまして、別場に移動しての顔合わせでは後々が面倒だと思われますので、ここで行ってもよろしいでしょうか?」

「えぇ、構いませんよ。」

竜さん達が愛し子様だと言っていた人を、抵抗されながらも抱きしめているドレスの人をチラッと見て、とても良い笑顔で説明をするロンさん。
王女様がアホって聞こえたのは私だけかな?
とと様が了承すると、騎士様方はホッとしたように微笑んでこちらに一礼すると、ロンさんだけがなにやら準備に向かいました。
残った2人の騎士様方は、それぞれの竜さんを撫でながら私ととと様の両サイドに立っています。
よし、今のうちに私が抱っこしている竜さんをとと様に紹介しよう!

「ととしゃま!みてぇ!
るーしゃん!とってもかわいいのよ?」

「マリシア、ずっと竜に触りたいって言っていたもんね。
触らせてもらえて良かったね。」

「はい!ととしゃま、ちゅがいってなんでしゅか?」

「とと様にはいない伴侶のことだよ。」

「え?!」

なにかにか右にいた騎士様が驚いたみたい。
あれ、なんに驚いたのかな?

「わたし、ととしゃまよりもしゃきにみちゅけてしまったのでしゅか?」

「そうだね。
マリシアはとと様よりも先に見付けたみたいだね。」

「まぁ!これではじゅんばんがちがいましゅわ!
どうしましょう?!」

とと様よりも先に見付けてしまうとは、親不孝者になってしまうわ!
これは、由々しき問題です...どうしましょう?

「.........」

「別に、伴侶なんて見付からなくてもマリシアが娘なだけで良いんだよ?
あ、騎士様に質問なのですけど、番だと分かったらマリシアは取り上げられるのでしょうか?」

「いえ、お嬢様の年齢的にもそれはありません。
それに、愛し子様の場合は確実に入婿の形になりますので...。」

え、入婿ですか?!
それはとても嬉しいことだけど、面倒臭いくなりそう...だって、あの王女様が黙ってないのでは?

「まぁ、ととしゃまとじゅっといっしょにいられましゅの?
うれしいでしゅわ!」

「そうだね!とと様も、マリシアとずっと一緒にいられるのがとっても嬉しいよ。」

とと様と頬をスリスリと合わせていたら、騎士様方が微笑ましそうにしてました。
なんだか恥ずかしい......。

[ラブラブしとるとこにすまないのだが、マリシア嬢を抱いても良かろうか?]

「...あ、失礼いたしました。
貴方が愛し子様の竜なのでしょうか?
マリシアの父、です。」

[これはご丁寧に...。
我は愛し子の騎竜でアルフィーノと申す。]

「マリシア?」

腕の中にいた竜さんがピクリと反応して、恭しく頭を下げてから小さな羽で飛び立ったってしまったの。
だから、何かあったのかな?って、辺りをキョロキョロしていたら今まで見た竜さん達の中で1番の大きさで、日に当たるとキラキラと黄金色に輝く鱗をした竜さんが目の前にいました。
私を抱こうとしてたみたいで両手をこちらに伸ばしてたけど、私を見えやすいように抱き直した父が挨拶をすると、1度手を引っ込めてから挨拶を返してくれたの。
とても可愛いわ。

実は、アルフィーノさんの遥か後ろには、こちらに手を振りながら走ってきているロンさんがいるのよ?
きっと、アルフィーノさんに置いていかれたのね...お疲れ様です。





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