ＧＩＶＥＮ〜与えられた者〜

布石編

合宿

　洋峰学園の保養地は、山梨県の清里、長野県の蓼科、新潟県の湯沢の3箇所にあり、毎年この時期には洋峰学園の学生と生徒でごった返す。

　基本、大学生優先。空きを埋めるようにして中高校生がこの保養所を使う。

　調理師・栄養士がいるので食事の心配は無し。洗濯は自分でやらなければならないが、清掃員はいるので、練習に集中できる環境だ。

　この保養所、一番人気は清里だ。高地なので空気が薄く効率よく低酸素運動ができると、運動部の人気合宿地だ。ただ、アクセスの良さは湯沢に譲る。移動に時間を取られたくない合理性重視の部には湯沢は人気だ。


　だから畠山京子が「蓼科で！」とリクエストした時は、京子の性格をよく知ってる部員全員がひっくり返った。

　蓼科にある保養地がこの3か所で一番アクセスが悪い。まず新幹線が使えない。特急を降りたら鈍行に乗り換えバスに乗り換え、さらにバスに乗っていたのと同じ時間を歩く。おまけに避暑地として人気の高い清里とは違い、付近にコンビニ等は無し、と、ほぼ監禁されに行くような場所だ。

　ただし良い所もある。清里以上に標高が高いので涼しい。朝など寒いくらいだ。一日中低酸素運動が出来る（言いかえれば高山病になる可能性あり）。辺りに何もない所なので、練習に集中できる。夏休みの宿題をするには絶好の場所だ。

　つまり、京子の生まれ育った環境に、蓼科はよく似ているという理由だ。


　その前に、なぜ京子に保養所指定の権限・発言権があるのか。実は、定期テストの順位で保養所利用権の順位が決まる。中等部・高等部各学年1学期の定期テスト1位の生徒のいる部に指名権優先順位を与えられる。

　京子は中等部2年生で1学期1位の成績を修めた。そこで中等部女子バスケ部部長の山内真梨が「今年はケイの好きな場所でいいよ」と言ってくれたのだ。

　ちなみに去年は京子は仕事で合宿に参加できなかったため、多数決で清里に決まった経緯がある。


　京子のお陰で2年連続合宿地指名権を得た女子バスケ部員は、去年、京子は仕事で合宿に参加出来なかった経緯もあり、誰も「今年も清里で！」と言い出せなかった。



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【洋峰学園 中等部女子バスケットボール部 練習日誌】 より抜粋



　◇◇◇◇◇



　7月30日　当番 2年 大森詩音

　今日から2泊3日の合宿　
　　場所 長野県蓼科高原
　参加者 10名全員
　　　　（高等部女子と合同なので
　　　　　　合計26名）

　午前
　　移動の疲れを癒すため 
　　軽いランニングと柔軟のみ

　午後
　　ランニング 柔軟
　　ダッシュ　ステップ
　　通常練習メニュー×2
　　（ドリブル練 パス練）
　休憩10分
　　ディフェンス・オフェンス練
　　シュート練
　　ミニゲーム
　クーリングダウン　以上

　怪我人 なし　病人 なし

＊備考欄
　　全中まであと1週間。
　　みんなケガ無く頑張ろう！



　◇◇◇◇◇



　7月31日　当番 2年 稲川梨花

　合宿２日目

　ごはんが美味しい！食べすぎた

　午前
　　ランニング　柔軟　走り込み
　　基礎練

　午後
　　ランニング　柔軟
　　ミニゲーム　連携確認
　クーリングダウン　以上

　怪我人なし　病人なし

＊備考欄
　　明日 地元の学校との練習試合
　　突然顧問の太田先生から聞かされた
　　びっくりした
　　けど明日はがんばろう！



　◇◇◇◇◇



　8月1日　当番 2年 畠山京子

　合宿最終日 地元の中学生と練習試合

　午前
　　ウォーミングアップ後 練習試合
　　内容はスコア別記

　午後
　　クーリングダウン　以上

　怪我人 無し　病人 無し

＊備考欄
　　合宿お疲れ様でした
　　全中頑張りましょう！
　追記
　　昨日の夜
　　ちょっと早めの誕生日プレゼント
　　みんなありがとう！
　　一生思い出に残る花火だったよ！