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13章
とまどい
着の身着のまま逃げたので、コスプレ姿に井村に借りた背広を羽織ったまま玄関を飛び出す。
通りすがりの学生達が痴女だと騒ぐ。
道路にうずくまり泣いていると、傘を持った井村が追いかけてきた。
「ごめん、ほんとに。土下座でもなんでもするし、慰謝料も払うから許してほしい」
「お金で人の尊厳は買えません」
「でもそしたら、借金減って楽になるでしょ」
「そんな惨めなことしたくありませんっ」
泣きわめいていると、人がじろじろ見てきて、千紗も少し冷静になった。
確かに井村のしたことはひどいが、彼がいなければ、ストーカー1号に殺されていた。
今生きているのは、ストーカー2号の井村がいたからだ。
それに病院で井村は確かに泣いていた。千紗が目覚めると小さく「無事でよかった」と呟いたのがまだ耳に残っている。
「帰ろう。謝るから。何でもする。許してくれるまで靴でもなんでも舐めるし、気が済むまで殴ってもいい。人間椅子でもサンドバッグでもなんでもなる」
「なんか会社とキャラ違くないですか。やっぱりマゾなんですか」
「うん。高倉さんになら何されてもいいよ」
「私を馬鹿にしてたんですか?」
「それだけは違う。最初は君のことが本当に心配で一回だけ連絡を取るつもりが、会社では冷たいのに、ネットだと素直に甘えてくれるから嬉しくなって……何度も言おうとしたんだけど、俺を嫌ってる様子だったし、できれば対面で謝りたかったんだ」
何度も会おうと言われたことや、会社で井村が歩み寄ってもそっけなくし続けたことを思い出す。
それに助けてくれたのは井村だ。
話だけでも聞くべきかもしれない。
雨の中、手を取られ部屋に戻る。
冷え切った体の中で、唯一触れ合う掌だけが温かかった。
☆
部屋には戻ったものの、わだかまりは当然まだ消えない。
「本当にごめん」
「別人装うなんて、そんなことしていいんですか」
「よくない。けど人生には善悪の此岸を越えなきゃいけない時がある。君との出会いがそれだった」
なんかいいこと言ってるふうだが、絶対よくない。だが、そのせいでストーカー1号からは助けてもらえた。
問題は井村がストーカー2号であるところだ。
2は1ほど悪質ではないが、世間一般の常識からはかなり逸脱している。人のことは言えないが。
「謝る。それに全部話すから……聞いてほしい」
そうして、井村は少しずつ秘密を打ち明け始めたのだった。
ある日、ランチの時間に千紗を見かけ、後ろから声をかけようとしたが、スマホで動画サイトを見ていたことから、それが千紗だとわかってしまったこと。
身バレ対策がおざなりで、見るからに危険だったから、別人を装って、慌てSNSを使い、千紗のアカウントにDMを送り、安全対策について教えたこと。
「じょ、情報量が多すぎて、私の脳のメモリを越えています」
ストーカーから逃げたら、会社の上司が別のストーカーで助けてくれた。そんな荒唐無稽な話があっていいのだろうか。
通りすがりの学生達が痴女だと騒ぐ。
道路にうずくまり泣いていると、傘を持った井村が追いかけてきた。
「ごめん、ほんとに。土下座でもなんでもするし、慰謝料も払うから許してほしい」
「お金で人の尊厳は買えません」
「でもそしたら、借金減って楽になるでしょ」
「そんな惨めなことしたくありませんっ」
泣きわめいていると、人がじろじろ見てきて、千紗も少し冷静になった。
確かに井村のしたことはひどいが、彼がいなければ、ストーカー1号に殺されていた。
今生きているのは、ストーカー2号の井村がいたからだ。
それに病院で井村は確かに泣いていた。千紗が目覚めると小さく「無事でよかった」と呟いたのがまだ耳に残っている。
「帰ろう。謝るから。何でもする。許してくれるまで靴でもなんでも舐めるし、気が済むまで殴ってもいい。人間椅子でもサンドバッグでもなんでもなる」
「なんか会社とキャラ違くないですか。やっぱりマゾなんですか」
「うん。高倉さんになら何されてもいいよ」
「私を馬鹿にしてたんですか?」
「それだけは違う。最初は君のことが本当に心配で一回だけ連絡を取るつもりが、会社では冷たいのに、ネットだと素直に甘えてくれるから嬉しくなって……何度も言おうとしたんだけど、俺を嫌ってる様子だったし、できれば対面で謝りたかったんだ」
何度も会おうと言われたことや、会社で井村が歩み寄ってもそっけなくし続けたことを思い出す。
それに助けてくれたのは井村だ。
話だけでも聞くべきかもしれない。
雨の中、手を取られ部屋に戻る。
冷え切った体の中で、唯一触れ合う掌だけが温かかった。
☆
部屋には戻ったものの、わだかまりは当然まだ消えない。
「本当にごめん」
「別人装うなんて、そんなことしていいんですか」
「よくない。けど人生には善悪の此岸を越えなきゃいけない時がある。君との出会いがそれだった」
なんかいいこと言ってるふうだが、絶対よくない。だが、そのせいでストーカー1号からは助けてもらえた。
問題は井村がストーカー2号であるところだ。
2は1ほど悪質ではないが、世間一般の常識からはかなり逸脱している。人のことは言えないが。
「謝る。それに全部話すから……聞いてほしい」
そうして、井村は少しずつ秘密を打ち明け始めたのだった。
ある日、ランチの時間に千紗を見かけ、後ろから声をかけようとしたが、スマホで動画サイトを見ていたことから、それが千紗だとわかってしまったこと。
身バレ対策がおざなりで、見るからに危険だったから、別人を装って、慌てSNSを使い、千紗のアカウントにDMを送り、安全対策について教えたこと。
「じょ、情報量が多すぎて、私の脳のメモリを越えています」
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