【完結】完璧上司の裏の顔~親の借金返済のため、内緒でエッチなコスプレで動画配信していたら、実は熱烈なファンだった上司に求婚された件

香月律葉

文字の大きさ
33 / 49
14章

思いが通じる

 一週間後、井村は千紗を迎えに羽田空港まで来ていた。千紗が近づくと抱きしめられた。

「あ、あの。ここ日本ですよ。公共の場で過剰なスキンシップは文化上あまり馴染みがありません」

 パリやローマで金髪美女がやるならともかく、羽田で日本人同士のラブシーンはどうにも気恥ずかしい。

「もう帰ってこないかと思った」

 その弱々しい声に思った以上に自分のせいで、井村が参っていたのだと知る。
 会社のほうには、体調不良だと伝えてもう少し休むと言ってある。だが噂になっている以上、もうやめたほうがいいのだろう。
 この先のことは、まだ決めかねていた。

 井村のマンションに戻り、母親に事件を知られたことや、家を売却することになったことを話す。

「とりあえず、自宅は少しずつ整理しようかなって。そしたら父の借金は返せるので」
「うん……そうだな」
「あの、会社のほうにはやめるって挨拶に行こうと思います」
「君が決めたことなら、それでいいと思う」 
「それで、家を売ったらどうするの」
「母の具合も悪いし、しばらく北海道に行こうかなって」
「…………」

 井村の顔を見る。ショックを受けた顔をしていた。それを見て、言わなくてはいけない言葉を思い出す。こんなことを言うのは初めてだ。胸がドキドキしてきた。

「あの……帰るって言っても、一時的にってだけで、母が落ち着いたらまた戻ります。住むところとか、仕事とか何一つ決まってないんですけど……」

 すうっと息を吸い込む。正念場。

「わっ、私、井村さんとこれからも繋がってたいっていうか……その、なんだろう」
「それって……」
「そのつまり、簡単に言うともっとお互いのことを知れたらいいなと……えっと色々なことを話したり」

 段々声が小さくなる。井村が千紗の手を取り、顔を覗き込む。

「つまり、俺が好きってことだよね? 付き合ってもいいってこと?」
「ありていに言えばそうなります。やぶさかではないって言うか」
「もうやり捨てされるかと思ってた」
「や、やり捨て? 私が?」

 結構強引にことに及んでおいて、やり捨てとは聞き捨てならない。
 井村が千紗の胸に顔を埋めた。心底ほっとしている様子に、千紗はこの優しい人に変な心配をかけすぎてしまったことを思い知った。

「ごめんなさい。ちゃんと言います。井村さんが好きです。ちゃんと好きです。田吾作さんと同じくらい……」
「──なんだろう、この達成感と多幸感は。仕事でも学業でも味わったことがない……。もう俺のとこには戻ってこないと思ってた」

 空港に迎えに来た時から、なんだか元気がなくてくたびれた顔をしていた。自分のせいだったのかと思うと、申し訳ないのと同時に、愛しさが湧いてくる。
 少し癖のある、明るい色の髪に触れてみる。

 ──昔飼ってた犬に似てる……。

 犬が苦手だったのに、父が知人から貰ってきた。千紗が逃げ回ってもいつまでもいつまでも寄ってきて、結局根負けして千紗は犬嫌いを克服したのだが。

「井村さん、なんで私なんですか。もうすぐ無職だし、家なき子だし。人と関わるのも苦手だから面白い話なんてなんにもできないのに」

 顔を上げた井村が千紗の顎に手をやった。こういう芝居じみた仕草もイケメンがやると無駄に絵になるので怖い。

「人を好きになるのに理由なんかいらない。好きなとこなら、たくさんあるけど。ただ言葉にすると、どれも安っぽくてありきたりになるから」
「Jポップの歌詞みたい」

 恥ずかしさから茶化してしまう。こういうところがモテない理由なのだろう。

「真実味がない? 本当に好きだと人は語彙力を失うのかもしれない」
「この前はなんだか雰囲気と勢いで、爛れた関係になっちゃいましたけど、やっぱり徐々に心を通わせて、段々仲が深まっていくっていうのが、望ましい男女交際なんじゃないかなって……って聞いてます!?」

 千紗が理想の恋愛について語っている間に、押し倒された。
 顔が近づいてきて、唇が重なった。なし崩し的に関係をもってしまった前回より、緊張が増す。なにより普段は優しい井村の夜が結構すごいのを思い出してしまった。
 ──一晩に何度も……あれは普通なのかな?
 いない時にこっそりネットで調べてみようと思う。
 千紗の戸惑いをよそに、井村は完全に臨戦態勢に入っている。

「一年以上かけて、徐々に仲は深まったから、このまま沼に落ちてしまっていいと思う」
「あの? 昼間ですけど」
「んー。すぐ夜になるよ」

 すぐに唇が重なる。
感想 1

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや

静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。 朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。 「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。 この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか? 甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。