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17章
未来へ
千紗は、すぐに東京へ向かった。財布とスマホだけ持って、母親に東京へ行くと言って家を出た。
勝手知ったる井村のマンションへ向かう。ピンポンをしても誰も出ない。
──どうしよう。合鍵渡されてるけど勝手に入るわけには。
千紗がエントランスの前でおろおろしていると、井村がちょうど帰ってきた。
「井村さん!」
「どうしたの? 来るなんて聞いてなかった」
「シンガポールに行くって本当ですか」
「……誰から聞いたの」
「本当かって聞いてるんです!」
「そういう話はある」
千紗は自分でも気づかぬうちに、ぽろぽろ涙を流していた。いつまでも自分を好きで自分のそばにいてくれると勝手に思い込んでいたが、勘違いだったようだ。
「こんなに好きにさせておいて、なんにも言わずに置いていくなんてひどい! そんな軽い気持ちで好きとか言わないでほしかった」
「えっ」
「ひどいったらひどい! 電話も出てくれないし」
「ごめん、たまたま故障して今修理に出してきたとこで」
千紗は泣いていた。
「心配かけてごめん。で、今なんて?」
「電話も出てくれないし最近電話してもそっけなかったし」
「いや、その前」
「きっともう私のことめんどくさくなったんだと思って」
「その前」
「???」
興奮してなにを話しているかわからなくなっている千紗だった。
「はぁ……あのね。置いていくつもりなんてないよ」
「え? ええ?」
「ごめん。色々準備してて、すれ違ったみたいだ。あとは俺の寂しい気持ちから」
「寂しい?」
いつも飄々としている井村がそんな感情を抱くとは思わなかった。
「千紗ちゃんがどんどん人気者になって、遠い存在になっちゃうんじゃないかって。だからどうしたらこれからも一緒にいられるか、考えた。ずっと」
「井村さん……」
「色々考えて、千紗ちゃんも海外ならのびのび配信できるんじゃないかとか。でもお母さん置いていけないかもとか、色々考えてたら言えなくて」
「海外で配信?」
「日本ほど人目が気にならないんじゃないかと思って。よくも悪くも他人にそこまで関心なかったりするから」
「それって……」
千紗をシンガポールへ連れていくということだろうか。それはつまり……。真意がわからず井村を見上げると、千紗の手を取り、自分の頬に当てた。
「この手だったな、初めて動画見た時に目に入ったのは。力強くて、でも繊細で。会社にいる高倉千紗だってすぐに気づいた。ずっと見てたから」
井村は小さく息を漏らした。
「ちょっと早くなったけど、話すよ。入って」
部屋に通された千紗は、一枚の紙を渡された。
「これ、まだ立ち上げたばかりの企画だけど、手ごたえは感じてて。協賛してくれる企業も集まりつつあるんだ」
「企画書?」
「うん。読んで」
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「……誰から聞いたの」
「本当かって聞いてるんです!」
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「えっ」
「ひどいったらひどい! 電話も出てくれないし」
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千紗は泣いていた。
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「いや、その前」
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「???」
興奮してなにを話しているかわからなくなっている千紗だった。
「はぁ……あのね。置いていくつもりなんてないよ」
「え? ええ?」
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「寂しい?」
いつも飄々としている井村がそんな感情を抱くとは思わなかった。
「千紗ちゃんがどんどん人気者になって、遠い存在になっちゃうんじゃないかって。だからどうしたらこれからも一緒にいられるか、考えた。ずっと」
「井村さん……」
「色々考えて、千紗ちゃんも海外ならのびのび配信できるんじゃないかとか。でもお母さん置いていけないかもとか、色々考えてたら言えなくて」
「海外で配信?」
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「それって……」
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「この手だったな、初めて動画見た時に目に入ったのは。力強くて、でも繊細で。会社にいる高倉千紗だってすぐに気づいた。ずっと見てたから」
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「ちょっと早くなったけど、話すよ。入って」
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