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精子が欲しい…
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あの後、心当たりを何人か当たってみたけれど、協力者を得ることはできなかった。どうしてこうも、そういう行為を済ましている人ばかりなのか。
こうなったら、今年3歳になる弟の子どもをあたってみるべきか…
いや、3歳ではまだ精通も迎えていない。無意味だ。
エマは犯罪になりそうなことを考えるほど、追い詰められていた。
精子…童貞の精子がほしい…
自分の研究室で頭を抱えていると、窓の外をふわふわとした金髪が通り過ぎる。太陽に照らされて、それはとても尊いもののようにキラキラと輝いている。
クリスは手に持ったカバンの中から、何か袋のようなものを取り出すと、あたりにばら巻き始めた。
こういった光景は、たまに見る。
広大な敷地を所有しているせいか、魔術研究所の庭には、野良だったり飼われていたり、さまざまな動物が生息しているのだ。
クリスは休憩時間を利用して、そういった動物たちにエサを与えているのだろう。
エマがぼーっとその光景を眺めていると、クリスの周りには色とりどりの鳥たちが集まり始める。
青、緑、黄色、白…
鮮やかな色に取り囲まれたクリスは華やかで、本当の天使のようだ。
感情を顔に出すことが苦手なエマでは、ああいう風にはならない。無表情というのは、動物に警戒心を与えるらしい。
エマに動物たちは、なかなか近寄ってこないのだ。
クリスはあれだけ動物に好かれるのだから、本当に純粋でいい子なのだろう。
羨ましいなと思いながら、エマはその光景を眺める。
純粋すぎてクリスはきっと、男女の交際など考えたこともないだろう。そして、キスもしたことがないに違いない。やはり、クリスは童貞だ。
──なんとか協力してもらえないかしら。
エマが物欲しそうな目でクリスを見ていると、クリスのふわふわな金髪の上に一羽の白い鳥がとまった。我が物顔で座り込む鳥にクリスが困っていると、大きな黒い鳥が横からすごい勢いで飛んできて、クリスの手に持っていた袋を強奪した。
クリスはしばらく呆然としていたが、眉尻を下げ、悲しそうな顔で空を見上げた。
他の鳥たちも皆、びっくりしたのだろう。一羽残らず、空に飛び立ってしまった。
エマはそれを見て、悪い顔で笑った。
クリスには悪いけれど、協力してくれないのなら、こっそりと盗むのはどうだろう。本人にもばれないようにすれば、きっと問題ないに違いない。
男の人は夜な夜な自分で、持て余した欲を処理すると聞く。いくら純粋なクリスだとしても、生理現象である射精はしているはずだ。
きっと、クリスも一人で処理をしているのだ。それをこっそり掠め取る。
拭き取られゴミ箱に捨てられたかわいそうな精子を、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ研究の実験材料として使わせてもらおう。
世にため、人のためである。
問題ない。何も問題ない。
エマは自分に言い聞かせるように思考を巡らせてから、さっそく準備に取り掛かった。
自分の魔力で創造した風の鳥を、物質遮光の魔道具を起動して光を反射させ、透明にする。
魔力を探知されないように、探知疎外の魔道具を指輪の形に加工して鳥の足にはめ、羽ばたく音が聞こえないように遮音の魔術もかけた。
出来上がったときには日が暮れていたが、どうやらクリスが帰宅するまでには間に合ったようだ。
エマは風の鳥を放ち、クリスを追うように指示を出す。
研究室に描いた遠見の魔術陣の上に正座をし、エマは陣を起動した。鳥の見たものが、エマの脳内に映像として送られてくる。
クリスは研究所近くの、レンガに蔦がはった可愛らしい集合住宅に住んでいるようだ。
外階段を二階へと上がり、玄関の扉を鍵で開けるクリスが見える。
エマは風の鳥を窓側へと移動させると、カーテンの隙間から中を覗いた。
クリスの部屋は、とても綺麗に整頓されていた。
一人暮らし用の小さなキッチンに、邪魔にならない小さめのシンプルなダイニングテーブル。あとは一人用のベッドがおいてあるだけだったが、壁際の本棚には大量の本が詰め込まれていて、クリスがとても努力家であることが伺える。
18歳で、魔道具開発室に籍をおいているのだ。それは並大抵の努力ではなかっただろう。
エマは、覗き見をしている自分が少し恥ずかしくなった。
──いやいや、これも研究を成功させるための努力、努力。
不妊に悩んでいる人たちの顔を思い浮かべ、エマは自らを励ました。
そんな感じでしばらくクリスを覗き見していたが、食堂でご飯を食べるために外出した以外特に何もなく、湯を浴びてクリスは就寝した。
男の人は、毎夜射精するのではないのだろうか?
いや、もしかしたら、風呂場でしたのかもしれない。
しかしそうなってくると、エマには手出しができない。
排水口に流れたものを採取しても、他の雑菌と混ざってしまって、研究には使えない。
──なんとか部屋で射精させて、布で拭ってもらえないだろうか。
悩んでいると、クリスの部屋の本棚が目に入った。
──そうか!その手があった!
エマは思いついたことを実行するために、さっそく準備に取り掛かった。
こうなったら、今年3歳になる弟の子どもをあたってみるべきか…
いや、3歳ではまだ精通も迎えていない。無意味だ。
エマは犯罪になりそうなことを考えるほど、追い詰められていた。
精子…童貞の精子がほしい…
自分の研究室で頭を抱えていると、窓の外をふわふわとした金髪が通り過ぎる。太陽に照らされて、それはとても尊いもののようにキラキラと輝いている。
クリスは手に持ったカバンの中から、何か袋のようなものを取り出すと、あたりにばら巻き始めた。
こういった光景は、たまに見る。
広大な敷地を所有しているせいか、魔術研究所の庭には、野良だったり飼われていたり、さまざまな動物が生息しているのだ。
クリスは休憩時間を利用して、そういった動物たちにエサを与えているのだろう。
エマがぼーっとその光景を眺めていると、クリスの周りには色とりどりの鳥たちが集まり始める。
青、緑、黄色、白…
鮮やかな色に取り囲まれたクリスは華やかで、本当の天使のようだ。
感情を顔に出すことが苦手なエマでは、ああいう風にはならない。無表情というのは、動物に警戒心を与えるらしい。
エマに動物たちは、なかなか近寄ってこないのだ。
クリスはあれだけ動物に好かれるのだから、本当に純粋でいい子なのだろう。
羨ましいなと思いながら、エマはその光景を眺める。
純粋すぎてクリスはきっと、男女の交際など考えたこともないだろう。そして、キスもしたことがないに違いない。やはり、クリスは童貞だ。
──なんとか協力してもらえないかしら。
エマが物欲しそうな目でクリスを見ていると、クリスのふわふわな金髪の上に一羽の白い鳥がとまった。我が物顔で座り込む鳥にクリスが困っていると、大きな黒い鳥が横からすごい勢いで飛んできて、クリスの手に持っていた袋を強奪した。
クリスはしばらく呆然としていたが、眉尻を下げ、悲しそうな顔で空を見上げた。
他の鳥たちも皆、びっくりしたのだろう。一羽残らず、空に飛び立ってしまった。
エマはそれを見て、悪い顔で笑った。
クリスには悪いけれど、協力してくれないのなら、こっそりと盗むのはどうだろう。本人にもばれないようにすれば、きっと問題ないに違いない。
男の人は夜な夜な自分で、持て余した欲を処理すると聞く。いくら純粋なクリスだとしても、生理現象である射精はしているはずだ。
きっと、クリスも一人で処理をしているのだ。それをこっそり掠め取る。
拭き取られゴミ箱に捨てられたかわいそうな精子を、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ研究の実験材料として使わせてもらおう。
世にため、人のためである。
問題ない。何も問題ない。
エマは自分に言い聞かせるように思考を巡らせてから、さっそく準備に取り掛かった。
自分の魔力で創造した風の鳥を、物質遮光の魔道具を起動して光を反射させ、透明にする。
魔力を探知されないように、探知疎外の魔道具を指輪の形に加工して鳥の足にはめ、羽ばたく音が聞こえないように遮音の魔術もかけた。
出来上がったときには日が暮れていたが、どうやらクリスが帰宅するまでには間に合ったようだ。
エマは風の鳥を放ち、クリスを追うように指示を出す。
研究室に描いた遠見の魔術陣の上に正座をし、エマは陣を起動した。鳥の見たものが、エマの脳内に映像として送られてくる。
クリスは研究所近くの、レンガに蔦がはった可愛らしい集合住宅に住んでいるようだ。
外階段を二階へと上がり、玄関の扉を鍵で開けるクリスが見える。
エマは風の鳥を窓側へと移動させると、カーテンの隙間から中を覗いた。
クリスの部屋は、とても綺麗に整頓されていた。
一人暮らし用の小さなキッチンに、邪魔にならない小さめのシンプルなダイニングテーブル。あとは一人用のベッドがおいてあるだけだったが、壁際の本棚には大量の本が詰め込まれていて、クリスがとても努力家であることが伺える。
18歳で、魔道具開発室に籍をおいているのだ。それは並大抵の努力ではなかっただろう。
エマは、覗き見をしている自分が少し恥ずかしくなった。
──いやいや、これも研究を成功させるための努力、努力。
不妊に悩んでいる人たちの顔を思い浮かべ、エマは自らを励ました。
そんな感じでしばらくクリスを覗き見していたが、食堂でご飯を食べるために外出した以外特に何もなく、湯を浴びてクリスは就寝した。
男の人は、毎夜射精するのではないのだろうか?
いや、もしかしたら、風呂場でしたのかもしれない。
しかしそうなってくると、エマには手出しができない。
排水口に流れたものを採取しても、他の雑菌と混ざってしまって、研究には使えない。
──なんとか部屋で射精させて、布で拭ってもらえないだろうか。
悩んでいると、クリスの部屋の本棚が目に入った。
──そうか!その手があった!
エマは思いついたことを実行するために、さっそく準備に取り掛かった。
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