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お仕事斡旋所
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クリスに艶本をプレゼントするのをやめて、5日。
街中にあるお仕事斡旋所から、精子の提供者が見つかったと連絡が入ったので急いで向かうと、そこにいたのはニヤニヤと笑う大きな中年男だった。
「お嬢ちゃんが精子ほしいって人?」
「ええ、そうよ。あなたが精子を提供してくれる人かしら?」
「そうだなあ。好みからは少し外れるけど、若いから提供してやってもいいぜ。」
若いとは、エマのことだろうか。
エマは眉間に皺を寄せた。
なぜ、研究材料を手に入れるために、エマの年齢が関係あるのか。
壁に貼ってある張り紙を、エマは指で示す。そこには、「性行為未経験の人、精子提供募集」と書いてある。
「この張り紙をしたのは、私よ。あなたは性行為未経験なのかしら。」
「なんだあ?未経験なのは、お嬢ちゃんだろ?」
この中年の男は、何を言っているのか。
エマは未経験だけど、それは全く関係ない。
エマと中年の男は、お互い見つめ合いながら首を傾げた。
「私は性行為未経験の人の精子がほしいの。」
「はあ?性行為未経験のお嬢ちゃんが、精子がほしいんだろ?」
「違うわよ。童貞の精子がほしいのよ。」
エマが言うと、中年男は途端に不機嫌になる。
「童貞だろうが童貞じゃなかろうが、関係ねえだろっ!ヤルことヤレればいいんだろうがっ!」
「ヤルことヤリたいんじゃなくて、童貞の精子がほしいのよ。」
「はあ?ふざけんなよ!分かるように書いとけよ!」
ばあんっと力任せに壁を殴ると、中年男はプリプリと怒りながら、お仕事斡旋所を出ていった。
その背中を見送りながら、エマはため息をついた。
──また、空振りだった。
ここに張り紙をしてから、もう一月近く経っている。
その間、数名の精子提供者が現れたが、あの中年男のように勘違いした人か、または童貞ではないのに童貞だと偽って名乗り出た詐欺師のどちらかだった。
やはり報酬金額を上げるべきか。いや、上げたところで、詐欺師が増えるだけだろう。それに今月は色々使ってしまって、研究費の残りが少ない。
──精子、童貞の精子がほしい…
エマは今日も一人、頭を抱えていた。
◇◆◇◆◇◆
落ち込みながら魔術研究所に帰ると、今日も庭でクリスが鳥たちにエサを与えていた。
青、緑、黄色、肌色…
鮮やかな色に取り囲まれたクリスのふわふわな金髪が、太陽の光でキラキラと輝く。
ん?肌色?
なんだか違和感を持ってよく見てみると、肌色の鳥は二羽いて、この前クリスの頭にとまった白い鳥とクリスのエサ袋を強奪した黒い鳥のような気がする。
二羽とも頭の毛以外が丸っと剃りこまれて、肌色の地肌をさらしていた。
何があったのだろうか。病気?
しかし二羽とも毛が無いにも関わらず、丸々と太っている。とても病んでいるようには見えない。
不思議に思いながら見ていると、クリスがこちらに気づいて手を振った。
「エマ先輩。外出していたんですか?」
クリスが移動したので、鳥たちが一斉に空へと飛び立つ。晴れた青い空に、色鮮やかな鳥たちがとても綺麗だ。
しかし二羽の肌色の鳥たちは飛び立たず、なぜかクリスの後を並んでついてくる。まるで家来のようだ。
エマはそんな鳥に目をやりながら、クリスの質問に答えた。
「お仕事斡旋所へ行っていたの。精子の提供者が現れたって連絡がきたのだけど、今回もダメだったわ。」
「へえ。なかなか難しいんですね。」
「そうね。全然未経験の男性が見つからないの。」
一度断られているので、エマは次の言葉を言おうか迷った。しかし本当に困っているので、クリスの目を見て口を開いた。
「とても困っているの。やっぱりなんとか協力をお願いできない?」
クリスは眉尻を下げ、困った顔でエマを見る。
「オリバー先輩には聞いてみました?」
「ええ。クリスに言われた後一応声はかけてみたけど、経験済みだったわ。」
「そうですか…」
やはりダメか──。
分かっていたことだけど、エマはがっかりした。
場の雰囲気を変えようと、話題を逸らす。
「その鳥はどうしたの?なぜ肌が見えているのかしら。」
「この子たちはこの間飼うことにした、僕のペットです。可愛いでしょう?」
可愛い?可愛いかしら?
白い鳥は近くで見ると円らな瞳をしていて可愛いと言えないこともないが、黒い鳥はどう見ても柄が悪い。目が据わっている。それになんと言っても、体の毛がなくハゲているのがとても滑稽である。
エマは首を傾げた。
「お揃いの足環もつけたんです。きちんとペット登録もしたんですよ。」
にこにことしながら鳥たちの足についている装飾品を見せてくるクリスは、とても満足そうだ。
クリスのセンスは置いておいて、まあ本人がいいならそれでいいかとエマは思うことにした。
街中にあるお仕事斡旋所から、精子の提供者が見つかったと連絡が入ったので急いで向かうと、そこにいたのはニヤニヤと笑う大きな中年男だった。
「お嬢ちゃんが精子ほしいって人?」
「ええ、そうよ。あなたが精子を提供してくれる人かしら?」
「そうだなあ。好みからは少し外れるけど、若いから提供してやってもいいぜ。」
若いとは、エマのことだろうか。
エマは眉間に皺を寄せた。
なぜ、研究材料を手に入れるために、エマの年齢が関係あるのか。
壁に貼ってある張り紙を、エマは指で示す。そこには、「性行為未経験の人、精子提供募集」と書いてある。
「この張り紙をしたのは、私よ。あなたは性行為未経験なのかしら。」
「なんだあ?未経験なのは、お嬢ちゃんだろ?」
この中年の男は、何を言っているのか。
エマは未経験だけど、それは全く関係ない。
エマと中年の男は、お互い見つめ合いながら首を傾げた。
「私は性行為未経験の人の精子がほしいの。」
「はあ?性行為未経験のお嬢ちゃんが、精子がほしいんだろ?」
「違うわよ。童貞の精子がほしいのよ。」
エマが言うと、中年男は途端に不機嫌になる。
「童貞だろうが童貞じゃなかろうが、関係ねえだろっ!ヤルことヤレればいいんだろうがっ!」
「ヤルことヤリたいんじゃなくて、童貞の精子がほしいのよ。」
「はあ?ふざけんなよ!分かるように書いとけよ!」
ばあんっと力任せに壁を殴ると、中年男はプリプリと怒りながら、お仕事斡旋所を出ていった。
その背中を見送りながら、エマはため息をついた。
──また、空振りだった。
ここに張り紙をしてから、もう一月近く経っている。
その間、数名の精子提供者が現れたが、あの中年男のように勘違いした人か、または童貞ではないのに童貞だと偽って名乗り出た詐欺師のどちらかだった。
やはり報酬金額を上げるべきか。いや、上げたところで、詐欺師が増えるだけだろう。それに今月は色々使ってしまって、研究費の残りが少ない。
──精子、童貞の精子がほしい…
エマは今日も一人、頭を抱えていた。
◇◆◇◆◇◆
落ち込みながら魔術研究所に帰ると、今日も庭でクリスが鳥たちにエサを与えていた。
青、緑、黄色、肌色…
鮮やかな色に取り囲まれたクリスのふわふわな金髪が、太陽の光でキラキラと輝く。
ん?肌色?
なんだか違和感を持ってよく見てみると、肌色の鳥は二羽いて、この前クリスの頭にとまった白い鳥とクリスのエサ袋を強奪した黒い鳥のような気がする。
二羽とも頭の毛以外が丸っと剃りこまれて、肌色の地肌をさらしていた。
何があったのだろうか。病気?
しかし二羽とも毛が無いにも関わらず、丸々と太っている。とても病んでいるようには見えない。
不思議に思いながら見ていると、クリスがこちらに気づいて手を振った。
「エマ先輩。外出していたんですか?」
クリスが移動したので、鳥たちが一斉に空へと飛び立つ。晴れた青い空に、色鮮やかな鳥たちがとても綺麗だ。
しかし二羽の肌色の鳥たちは飛び立たず、なぜかクリスの後を並んでついてくる。まるで家来のようだ。
エマはそんな鳥に目をやりながら、クリスの質問に答えた。
「お仕事斡旋所へ行っていたの。精子の提供者が現れたって連絡がきたのだけど、今回もダメだったわ。」
「へえ。なかなか難しいんですね。」
「そうね。全然未経験の男性が見つからないの。」
一度断られているので、エマは次の言葉を言おうか迷った。しかし本当に困っているので、クリスの目を見て口を開いた。
「とても困っているの。やっぱりなんとか協力をお願いできない?」
クリスは眉尻を下げ、困った顔でエマを見る。
「オリバー先輩には聞いてみました?」
「ええ。クリスに言われた後一応声はかけてみたけど、経験済みだったわ。」
「そうですか…」
やはりダメか──。
分かっていたことだけど、エマはがっかりした。
場の雰囲気を変えようと、話題を逸らす。
「その鳥はどうしたの?なぜ肌が見えているのかしら。」
「この子たちはこの間飼うことにした、僕のペットです。可愛いでしょう?」
可愛い?可愛いかしら?
白い鳥は近くで見ると円らな瞳をしていて可愛いと言えないこともないが、黒い鳥はどう見ても柄が悪い。目が据わっている。それになんと言っても、体の毛がなくハゲているのがとても滑稽である。
エマは首を傾げた。
「お揃いの足環もつけたんです。きちんとペット登録もしたんですよ。」
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クリスのセンスは置いておいて、まあ本人がいいならそれでいいかとエマは思うことにした。
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