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「アリアー!結婚決まったんだって?おめでと~!」
オリバーと色々あったあの日から三日後、アリアはとても不本意な噂に辟易していた。
「結婚なんてしないからっ!」
同じ魔術師で友人のリーアに顰め面で言い返す。
「相手がいないから!意味分からないこと言わないで!」
「えぇ?でも魔道具開発室が壊滅するほどすごい性技で、男捕まえたんでしょ?みんな言ってるよ。」
そう。噂ではあの部屋が壊れたのは、なぜかアリアのせいになっているのだ。しかもセックスしていて壊れたことになっている。
一体どんなセックスだ。
「確かに私も魔術使用で3か月の減俸にはなったけど、あれやったの、水のオリバー・ウィギンスだからっ!私関係ないからっ!」
あの時アリアは、オリバーがなるべくたいへんなことにならないように、2人で盛り上がってしまって、邪魔が入らないようにとオリバーが魔術を使ったことにした。
後半ほぼ無理やり襲われていたとはいえ、元々アリアがオリバーを辱めようとしたことが原因だ。罪悪感もあったから、かばってやった。
恋人同士のいちゃいちゃに見せかければ、そんなにお咎めも重くないと考えたから。
なのになぜかそれが広まり、どうやってか曲がりに曲がって、アリアがセックスをしながら壊したことになっている。
そしてなぜかその相手と結婚することになっている。
上司に寿退社の書類を渡されたときは、なんの冗談かと思った。しかも夫の欄にオリバー・ウィギンスの名前が入っていたので、場所を弁えずにその場で破り捨ててしまった。
本当にたちが悪い。
アリアはため息をつくとくるりと踵を返し、中庭から研究所内に入ろうと足を進めた。
しかし見たくないものを見てしまって、ぴたりと足をとめる。
木の陰から、顔を半分だけ出した格好で、オリバーがこちらを見ていた。
「………何してるの?」
「………何も。」
2人の間を、生ぬるい風が吹き抜ける。
あれからオリバーは減俸1年を喰らい、さらに魔術開発室の損壊分をすべて弁償することで、話がついたと聞いている。
減俸はともかく、魔術開発室は壊滅していた。あそこにはかなり貴重な道具もあったし、弁償額がいくらなのかアリアは考えたくもない。
まさか、半分払えとか言わないわよね。
アリアはオリバーを疑いの目で見つめた。
じっと見つめていると、何か違和感を感じる。なんだろう。
体が半分木の陰に隠れているので、いまいち分からない。
アリアはゆっくりとオリバーを中心に円を描くように歩き、オリバーの全身が見えるところで立ち止まる。
オリバーは職場だというのに、きっちりとしたタキシードを着て、後ろ手に大きな赤いバラの花束を持っていた。
「どこかのパーティーにでも行くの?」
「まあ……そんなところだ。」
とてもお金に困っていそうには見えない。
弁償しろとかいう話ではなさそうなので、アリアは安心した。
「あの時は、私も悪かったわ。ついカッとなってしまったの。仲直りしましょう。」
アリアはオリバーに近づき、手を差し伸べる。
なんだかんだ言っても、同僚としてオリバーの人柄と仕事ぶりは買っている。できれば今までどおり、良好な関係性でいたい。
オリバーは少し迷った後に、アリアの手を握った。
「これで仲直りね!」
アリアはすがすがしい気持ちで手を離した。
しかしなぜだか離れない。
「あの…離して?」
アリアの手は開いているのに、オリバーの手が固く握られているので離れない。
離れるように、アリアは上下にぶんぶんと振ってみたが、やはり離れない。
「ちょっと、離して。」
声をワントーン低くして凄んでみたが、離れない。
「……お……た。……」
ぼそぼそと、すごく小さい声で、オリバーが何か言っている。
「なあに?」
アリアは小首を傾げ、聞く体制に入った。
ずっと見ていると、オリバーの顔が徐々に赤くなってくる。
「俺も…悪かった。…」
「ええ。」
「だから、おっぱい見せてくれ。」
パアンッと景気よく平手打ちの音が、のどかなお日様の光指す中庭に響いた。
オリバーと色々あったあの日から三日後、アリアはとても不本意な噂に辟易していた。
「結婚なんてしないからっ!」
同じ魔術師で友人のリーアに顰め面で言い返す。
「相手がいないから!意味分からないこと言わないで!」
「えぇ?でも魔道具開発室が壊滅するほどすごい性技で、男捕まえたんでしょ?みんな言ってるよ。」
そう。噂ではあの部屋が壊れたのは、なぜかアリアのせいになっているのだ。しかもセックスしていて壊れたことになっている。
一体どんなセックスだ。
「確かに私も魔術使用で3か月の減俸にはなったけど、あれやったの、水のオリバー・ウィギンスだからっ!私関係ないからっ!」
あの時アリアは、オリバーがなるべくたいへんなことにならないように、2人で盛り上がってしまって、邪魔が入らないようにとオリバーが魔術を使ったことにした。
後半ほぼ無理やり襲われていたとはいえ、元々アリアがオリバーを辱めようとしたことが原因だ。罪悪感もあったから、かばってやった。
恋人同士のいちゃいちゃに見せかければ、そんなにお咎めも重くないと考えたから。
なのになぜかそれが広まり、どうやってか曲がりに曲がって、アリアがセックスをしながら壊したことになっている。
そしてなぜかその相手と結婚することになっている。
上司に寿退社の書類を渡されたときは、なんの冗談かと思った。しかも夫の欄にオリバー・ウィギンスの名前が入っていたので、場所を弁えずにその場で破り捨ててしまった。
本当にたちが悪い。
アリアはため息をつくとくるりと踵を返し、中庭から研究所内に入ろうと足を進めた。
しかし見たくないものを見てしまって、ぴたりと足をとめる。
木の陰から、顔を半分だけ出した格好で、オリバーがこちらを見ていた。
「………何してるの?」
「………何も。」
2人の間を、生ぬるい風が吹き抜ける。
あれからオリバーは減俸1年を喰らい、さらに魔術開発室の損壊分をすべて弁償することで、話がついたと聞いている。
減俸はともかく、魔術開発室は壊滅していた。あそこにはかなり貴重な道具もあったし、弁償額がいくらなのかアリアは考えたくもない。
まさか、半分払えとか言わないわよね。
アリアはオリバーを疑いの目で見つめた。
じっと見つめていると、何か違和感を感じる。なんだろう。
体が半分木の陰に隠れているので、いまいち分からない。
アリアはゆっくりとオリバーを中心に円を描くように歩き、オリバーの全身が見えるところで立ち止まる。
オリバーは職場だというのに、きっちりとしたタキシードを着て、後ろ手に大きな赤いバラの花束を持っていた。
「どこかのパーティーにでも行くの?」
「まあ……そんなところだ。」
とてもお金に困っていそうには見えない。
弁償しろとかいう話ではなさそうなので、アリアは安心した。
「あの時は、私も悪かったわ。ついカッとなってしまったの。仲直りしましょう。」
アリアはオリバーに近づき、手を差し伸べる。
なんだかんだ言っても、同僚としてオリバーの人柄と仕事ぶりは買っている。できれば今までどおり、良好な関係性でいたい。
オリバーは少し迷った後に、アリアの手を握った。
「これで仲直りね!」
アリアはすがすがしい気持ちで手を離した。
しかしなぜだか離れない。
「あの…離して?」
アリアの手は開いているのに、オリバーの手が固く握られているので離れない。
離れるように、アリアは上下にぶんぶんと振ってみたが、やはり離れない。
「ちょっと、離して。」
声をワントーン低くして凄んでみたが、離れない。
「……お……た。……」
ぼそぼそと、すごく小さい声で、オリバーが何か言っている。
「なあに?」
アリアは小首を傾げ、聞く体制に入った。
ずっと見ていると、オリバーの顔が徐々に赤くなってくる。
「俺も…悪かった。…」
「ええ。」
「だから、おっぱい見せてくれ。」
パアンッと景気よく平手打ちの音が、のどかなお日様の光指す中庭に響いた。
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