思想で溢れたメモリー

やみくも

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3章ー邪種編ー

62.哀しき思念体

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望「…最後に…話だけでも聞いてくれるか…?」

サニイ「分かった。」

 そして身体が崩れ行く望は、語り始めた。









 邪種は哀しき存在だ。

 救えない存在だ。

 人々が陰で持つ思念「邪念」がエネルギーとして表れ、それが融合し、魂が宿った結果生まれたのが、俺達邪種だ。

 俺の家庭は裕福では無かった。

 普通でも良いから、まともな生活に憧れ、希望を持っていた。

 俺は、ある日の帰り、エネルギーが溢れた光の束を発見した。

 それに近づくと、俺の中の確かな想像力と、邪力による夢見る思念が混ざり合った結果、
俺が誕生した。

 その後、邪種を束ねる者と遭遇し、仲間に引き入れられた。






望「こんな所だ…。」

サニイ「……分かった。」

 サニイは、情報を整頓し、質問をした。

サニイ「邪種の……いや、変異者の目的は何だ。」

 そう聞くと、望は答えた。

望「変異者の目的は、自分を認める世界への再構成だ。表向きはな。詳しくは聞かされていないが、一斉襲撃とだけ指示されている。それが邪種動乱の内容だ。俺は君の過去を聞き、正気を取り戻した。邪種は一部を除いて、邪念の意思に囚われている。救いを求めている。容赦無く浄化してやれ。それが彼らの“本当”の望みだ。遺言ってこんな感じか?」

サニイ「お前の意思は汲み取った。その託しに恥じぬよう、精進する。」

望「邪種動乱は、始まったばかりだ。解放してくれ…。この…哀しき……生め……。」

 崩壊する望は、邪力から解放され、完全に消滅した。

サニイ「……これで良かった…のか…?」

 サニイは下を向き、黙祷をした。











 元の姿に戻った溺は、倒れ込み、邪力の浄化が始まっていた。

 俺は戦闘態勢を解き、溺へと近づいた。

溺「…負けるって…こんなに恐ろしいんだ…。」

曖人「死の味は一度しか経験出来ない。何を思い、何を得るのかは、想像もつかない。英雄とは言え、平和的解決は出来てはいなかった。
確かに和解できた奴もいたが、それでも…短期間に幾つもの命を散らした。思想のすれ違いが、こんなにも争いを生むなんて、隊長に拾われなければ、多分知らなかった。」

 少し間を置き、俺は質問した。

曖人「悪いな。俺ばかり話して……。何か言いたい事はあるか?」

 ゆっくりと顔を上げ、溺は口を開いた。

溺「気をつけて…。変異者は、貴方達を認識している。私の願いを…聞いてよ……。」

曖人「…あぁ。」

溺「私は誰からも愛されず、誰も愛せなかった。でも、相反する感情はやがて狂い、邪力との融合により、人格から変貌してしまったの。お願い…皆を救って…。邪種は、この世に存在しても、誰も幸せにはなれない。忘れないで。」

曖人「念頭に置いておく。」

溺「邪種動乱は、これからが本番だよ。必ず、救ってきて。救いようの無い思い…を……。」

 そう言い残し、溺は浄化(消滅)された。

曖人「……訳ありだな…この件は…。」

 俺は、一旦サニイのガレージに帰還した。










 ガレージでは、サニイも帰ってきていた。

サニイ「そっちは終わったようだな。」

曖人「ああ。所で、これからどうする?」

 サニイは資料を俺に渡した。

サニイ「変異者についての記録だ。主犯格だろう。邪種動乱第2ラウンドが幕明けする前に、邪種についてまとめたい。そっちも何か託されただろ?本質的な部分は変わらないはずだ。」

 そして俺は、溺の意思を共有した。

サニイ「……そうか。」

曖人「英雄の定義って何だろうな?俺のしている事は果たして正しいのだろうか…。」

サニイ「英雄と勇者は違う。思想のすれ違いから、全てと和解できる訳では無いが、お前は実際、敵に情けを多少掛けている。自分達だけの平和を望むのなら、そんな事はしないはずだ。自信を持て。威風曖人。」

曖人「…ありがとう。サニイ。」

 その後、邪種に関する資料を漁り尽くし、一夜が明けた。

エサラ「サニイさん!曖人さん!」

 朝、寝落ちした俺達を呼ぶように、エサラが部屋に入って来た。

サニイ「…ん?どうした。」

エサラ「邪種が各地で現れました!発生地点は4箇所。私が昨日捜索した場所には魔法陣がありました。恐らく、それがトリガーでしょう。魔法陣の目撃地点は、8箇所。最低でも6体の邪種がいるでしょう。」

サニイ「分かった。すぐに出向くぞ。総動員だ。曖人!行くぞ…。」

曖人「了解。」

 加速し続ける思想のぶつかり合いは、どんな影響を及ぼしたか、当事者である俺すら分からない。

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