思想で溢れたメモリー

やみくも

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7章―A ー閉情編ー

142.アナーキーゾーン

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 凍傷部の麻痺を解くため、俺は剣に炎を纏うが、あまり効いていないようだ。

バレンタイン「熱だけで効果を打ち消せると思われるだなんて。ちょっと心外。大罪人を舐めないで。」

 そう言うと、奴は思想エネルギーを漲らせ、波紋を広がらせた。すると、凍傷部が棘のような痛覚を与えた。

曖人「ぐっ!」

バレンタイン「あはははは!手も足も出せてないね曖人さん!そう、貴方は私の掌で満足するまで踊らされ、養分にされるのですよ……。その一手として……ぐちゃぐちゃにされてください。」

 バレンタインは手にエネルギーを凝縮させ、白光の帯を生成し、こちらを囲うように縛り付けた。

バレンタイン「想術:アナーキーゾーン」

 すると、帯に彫られた謎の文字の羅列が青白く光り、空が紫に変わった。
 周りを見渡すと、青い結界のようなものが球状に貼られていた。

バレンタイン「アナーキーゾーン。この空間では外界の常識は一切通用しないわ。エネルギー無制限。物理法則無視の違法地帯。そして、外部からこの結界を割るのは、熟練されたブレイカーでも難しい。最高だと思わない!二人っきりの空間で、貴方は無抵抗で命が尽きる。」

 物理法則が無視された影響か、凍傷部の温度は急激に冷やされ、より鋭く張り裂けそうな痛みが襲った。

曖人「うがぁっ!……まずい…非常に。」

 身体は麻痺してロクに動きやしない。アナーキーゾーンが独自のルールを形成しているせいで、何が有効打なのかもわからない。
 ……違うな。恐らく、相性なんてものはないはずだ。なら、総合した最高打点を試せばよいだけの話だ。
 俺はまだ唯一力が抜けきっていない左手に剣を持ち替え、黒雷を纏った。

曖人「剣術:鰤億雷列」

 音速を超える斬撃で蚊を振り払い、地面から離れた。俺は飛行形態に入り、光の斬撃波をバレンタインに飛ばした。

バレンタイン「抜け出しちゃう?まさか、アナーキーゾーンを逆手に取るなんてね。想術:クリアーフェザー」

 しかし、バレンタインは冷静に思想エネルギーを手に凝縮させ、桃色の翼を飛ばした。そして、互いの威力は相殺された。
 まだ何とも言えないが、多分奴の攻撃は搦め手補助的なものだ。ならば、高火力を押し付け、一気に優勢に持っていけば勝ち筋はある。
 俺は剣に炎を纏い、斬撃波で牽制しながら接近し、斬撃でガードを崩そうと試みた。

バレンタイン「貴方も中々堅実に立ち回りますね。想術:クリアーフェザー」

 奴はクリアーフェザーで俺のガード崩しの斬撃の威力を相殺したが、計画通りだ。俺は勢いの余力で剣を斜め下に振り下げながら、炎を纏った。

曖人「剣術:熱躪」

 ミスリードに上手く誘い込めたためか、熱躪は上手く決まった。一発目で体勢を崩し、二、三発と追撃を入れた。
 すると、彼女は倒れた。

曖人「掌で踊らされる戦況は、どこかで切り替わる。その流れを察知してこそ、勝ち筋を切り開く。……セギンとの戦いで分からされたさ。攻守の活かし方を。」

バレンタイン「ふふっ。ふふふ。」

 彼女は微かに笑いながら、傷だらけで立ち上がった。

バレンタイン「二度の大罪人との戦闘を経験している貴方なら、ここからが厳しいなんて理解しているはずよね。」

曖人「息の根が止まってない時点で、察してはいた。」

バレンタイン「チャンスはあるのにね。貴方は本当に堅実だね。……思想釈放。怪帰。」

 すると、バレンタインは一度液状となり、それが膨れ上がって肉体を形成した。
 白い鱗を持つ蜘蛛のような姿をベースに、大量の触手と、桃色の触角を持ち、毒針が生えた尻尾を持つ六つ目の怪物。
 この位置からだとよくわからないが、スケールが非常に巨大であり、他にも異形の器官を持っていそうだ。

バレンタイン「私に巡る全エネルギーを利用した本当の姿。この蜘蛛の姿にはよく変身してるけど、アナーキーゾーンを使ってまで追い詰めたいと思った生物は貴方が初めてよ。」

 エンデスやセギンの時はあくまでも覚醒的な位置付けであったが、こいつは話が違う。
 さっきまでのは様子見で、ここからが本番だ。

曖人「生憎、お前以上に巨大な敵と交戦した経験はある。」

バレンタイン「あら、それが巨龍の事?あれと私は全然異なる戦い方をするよ?それともう一つ。……見えてるものが全てとは限らないよ。」

曖人「ッ!」

 突如地面に亀裂が入り、最初のように触手に引きずり込まれた。 
 
バレンタイン「アナーキーゾーン内は、全部私の身体の一部になる。そこまでは予測出来なかったよね?私から逃れられるかしら。」

 これまでの戦闘経験が通用するか分からない。彼女は、戦艦のような存在だ。
 いや、それでもやるしか生き残る道はない。今までに培ってきた技術をフルに活用し……こいつを討つ。
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