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やみくも

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8章ー静夜の駆け引き編ー

帰還。

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 何一つ変わらない風景。第二の故郷ラビリンス大陸。ラピスラズリ本部にジェット機を着陸させると、組織や村の仲間達が出迎えてくれた。

曖人「懐かしい顔ぶれだ……」

ファーマ「そうだろうよ。」

心明「三年だもんね。思っているよりはあっという間だったけど、凄い長かったからね。」

曖人「そうだな。」

 そんな事を話しながら機体から降りると、群がる人々を掻き分けてフュエルが顔を見せた。

フュエル「待っていた、曖人。」

曖人「ただいまフュエル。俺が居ない三年間、ラピスラズリは大丈夫だったか?」

フュエル「ああ。誰一人欠けていない。三年とは言っても、こちらの流れではそこまで長くなかったから。」

曖人「あぁ……確かサニイが言ってたっけな。この辺の大陸群は時空が歪んでるって。」

フュエル「そうなのか?殆ど遠征に行かないから知らなかった……」

チェイン「地底生活じゃ時間を気にしないからな。」

 しばらくの間、仲間達とそんな他愛もない会話を交わしていて、気が付けば夜になっていた。







 静かな夜。寝静まった頃に俺はフュエルと報告会をしていた。

曖人「ラピスラズリで死人が出なかった事は帰ってきた時に聞いたが、具体的に何をしていたんだ?」

フュエル「ドルフィオンやカインド・ダイバーの援助に回っていた。直接の交戦は無かったが、この期間に二人の大罪人を撃退している。そっちはどうだ?」

曖人「こっちも同様に二人の大罪人を撃退した。そして協力者を引き込むことも出来た。収穫は充分なはず。」

フュエル「その協力者とやらは連れてきていないのか?」

曖人「近場までは共に行動していたんだが、道中で別れた。“やるべきことがある”と言っていた。まぁ、そのうち訪れてくるだろ。」

 スレイが素性を明かそうとする気配は無かったが、並大抵の生命が簡単には近寄れない汚染大陸に籠もっていたのを見るに、何か事情があるのだろう。
 別に深く追及する気はない。どんな使命や過去を抱えていようが、口出しする権利などないからだ。

フュエル「気長が待ちますか………それで、そっちは色々あったみたいだな。人数が合わないぞ。」

曖人「………覚悟はしていたさ。いつかこうなることは。」

フュエル「李朱樹か?君の本当の故郷の仲間だろ。気の毒に……」

曖人「……下ばかりは向いてられない。この先、沢山の血が流れることになる。それは……彼も理解していたこと。彼の分まで…俺達が頑張らないと。」

フュエル「そうだな……。…改めて、英雄の帰還を心待ちにしていました。俺はラピスラズリ幹部の座に戻ります。」

曖人「ああ。これまでお疲れ様。」

 報告兼譲渡のちょっとした会議が終わり、俺達も解散してそれぞれ眠りに就いた。
 また明日の早朝、三年前の約束を果たすために巨大樹に向かうことにしよう。
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