思想で溢れたメモリー

やみくも

文字の大きさ
199 / 240
8章ー静夜の駆け引き編ー

199.託し人

しおりを挟む
 バブル管轄下から遠く離れた島国。俺は人生が動き出した場所に足を運んだ。

コード「ジェビでの生活からもう何年経ったことやら。懐かしいな……」

 敗戦した故郷から逃れ、右も左も分からない地上で世話になった組織ジェビ。今やその本拠地は焦土と化している。内部崩壊が起きたあの日の焼き討ちから、時が止まっているかのように。
 地上に降り立ち、俺は斜塔を見上げた。

コード「……ファルズ師匠、フィネロ団長、ルイン様、そして誇り高きジェビの戦士達よ……どうか見守っていてください。マインダーからの圧制の時代を終わらせてみせます。」

 そう祈りを捧げた後、俺は帰路に飛び立った。天都にもジェビにも追悼の儀式を終えた。思い残すことは何もない。


コード「…臨戦だ。マインダー…」



_____



 ゼノラ大陸の時計塔。リヴォリーター会議が終わり水晶が曇ると、部屋が閑散とした空気に戻った。

スレイ「ユリアの奴、余計な事まで話しやがって……気にすることでもないか。」

 そんな事を呟きながら、水晶を定位置に戻そうとすると、水晶に反射する自分の姿が目に映った。

スレイ「……何故、ユリアは俺を訪ねてきた。自分でも、この『畏怖の眼』を見たくないというのに……血も涙もないこの眼を……」





ユリア「ごきげんよう。スレイ。」

 先日、治療薬の調合をしている最中音も無くユリアが現れ、声を掛けてきた。

スレイ「…お前いつから…」

ユリア「たった今よ。」

スレイ「何の用だ…」

ユリア「薄銀の天使から聞いたわ。スレイも彼らの作戦に協力してくれるそうですね?今度顔合わせがあるのですが一緒に……」

スレイ「断る。水晶を通して内容だけ見させてもらう。そう伝えておけ。」

 

ユリア「……。」

 しばらく沈黙が流れ、ユリアはそっと言った。

ユリア「…気付いていないかもしれませんが、私は最初から貴方に対して怒ってません。きっと貴方が一番辛いでしょうし……」

スレイ「同情なんて要らない。俺が大勢の人を殺した。その事実は消えない。そこに意識や理性が伴わなかったとしても……」

ユリア「…そう…ですか。突然押しかけてきてすみませんでした。私はそろそろ…」

 何か言い淀んだが、彼女は足早にその場を去って行った。



スレイ「…追い返してすまないな戦姫ユリア。俺には…まだ時間が必要なんだ。」







 過剰な思い込みだっていうのも重々承知の上で、何故俺は彼女の来訪に疑問を持つのか。理由なんて分かりきっているのに。

スレイ「……俺は許されない存在だ。お前や仲間達が許しても、俺自身が許せないのだから。」

 棚からようやく完成した治療薬とお面を取り出してそれを身に纏い、俺は扉を開いた。

スレイ「贖罪しょくざいの旅を終えにいこう。また…お前達と肩を並べられるように。」



_____



 新しい朝が来た。深雅が亡くなってから既に4日が経過して、受け入れる覚悟は充分にできた。
 外に出ると、ラビリンスフォレストビレッジの民達が物資をジェット機に積み込んでいた。

ミィル「おはよう曖人!」
 
 するとこちらに気付いたミィルが駆け寄ってきて元気良く挨拶をしてきた。

曖人「おはよう。村の皆朝からご苦労様。助かるよ。」

ミィル「英雄の門出かどでなんだからこれくらい当然だよ!うちからも沢山の戦士が合流するし、曖人が旅に出てる間、私達も一生懸命準備してたんだよ!」

曖人「そうか……皆も頑張ってるはずだもんな。」

リダクテッド「それは曖人、そなたもじゃろう。」

ミィル「あ、おじいちゃん。」

 そう話していると、リダクテッドさんがこちらに来た。

曖人「お久しぶりです。リダクテッドさん。」

リダクテッド「ああ。…巨龍から始まり、色々あったようじゃな。もうわしにはついていけんわ。歳だしのぉ…」

 するとリダクテッドさんはお守りのような物を懐から取り出して、俺の手に握らせた。

リダクテッド「そいつを持っていけ。きっと奇跡を起こしてくれるはずじゃ。」

曖人「ありがとうございます…!」

リダクテッド「んじゃ、頑張ってこい!わしらはここから応援しておる!」

ミィル「未知の脅威だって曖人達が晴らしてくれるって私達は信じてるよ!」

 不意に泣きそうになった。やっぱりここは温かいから。皆の期待に応えなければならない、この日々が続くように。

曖人「……その想い、受け取ったよ。二人とも、ラビリンスの事は任せたよ。」

リダクテッド「うむ、任せろ。」

ミィル「代表して言うね。行ってらっしゃい!」

曖人「ああ、行ってきます!」

 そう言って俺はジェット機に乗り込み、メンバーが揃い出発するのを待っていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...