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2章:滑轍ハイウェイ
18日目.車道②
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全員が無事であることを確認して、夕焚に報告した。
「それで夕焚、カメラからはどう見えてた?」
『ドライブレコーダーの映像が乱れていて何とも……。定点カメラからはばっちり映っています。スリップしたようですね……。』
「スリップ?」
一台目の車がスリップして衝突したという事なのか。
「調べてみる。」
ひとまず、俺は事故現場付近に歩いて向かった。
到着すると、既に後列を走っていた協力者の方が調べ始めていた。
「あ、早瀬さん。これ……」
すると、協力者の一人が声を掛けてきたため、彼の指差したものを見た。
それはスリップした車の水のタイヤ痕であった。
「スリップしたっていうのは間違い無さそうだけど……何でタイヤが濡れているんだ……?この車のタイヤは九州製か?」
「そうです。防水機能が備わっています。」
この恒夢前線の範囲内がナンバーになっている車は、改造していなければ防水機能が備わっている。
絶え間なく雨が振り続けるため、道路が水浸しになることもしばしばある。そんな状況の中でも抵抗を減らして安全に走行するためにこのタイヤが採用されている。
ちょっとやそっとの水滴じゃ簡単に弾かれてしまうので、余程大きな水溜まりでもなければタイヤ痕が付くまで濡れないはず。
「一度全車両のタイヤを確認しよう……。」
計二十台分のタイヤを事故った車以外も含めて調べた結果、見事に全て濡れていた。しかし、後列になるにつれて濡れ具合は大きくなっていた。
水を吸ったかとも考えたが、それなら前列の方が濡れていないとおかしい。
「やっぱりおかしい……。そもそもどこで濡れた?確かパーキングエリアの時点では全て乾いていたはずだし……」
とはいえ、当然だが俺は前を見て運転していたため、道路に濡れた原因のものがあっても細かく確認が取れない。
ここまでしっかり濡れているのなら運転していても流石に気づくレベルの水溜まりであると思うが、念の為スリップ車とそれに巻き込まれた四台の車に乗っていた協力者に話を聞いた。
「スリップするまでの間に、大きな水溜まりはありませんでした…よね?」
「点々と水溜まりはありましたが、氾濫級の水溜まりはありませんでした。」
“流石にそうだよな。”そう思って別の可能性を考えようとした時、彼は続けて話した。
「ですが……ちょっと水質が違いそうな水溜まりがあったんですよー。層は一番薄そうだったんですが、水飛沫や反射具合が異なっていました。そこを通過しておよそ三十メートルくらいしてから、小回りが効かなくなってスリップしていました。衝突された車も、若干滑った結果連鎖したものだと思います。」
その話を聞いて衝突された車を確認してみると、確かにタイヤ痕の長さが勢いに対して長く滑っていたことを表していた。
すると、前方の方から別の協力者が来て言った。
「早瀬さん、私は先日事故現場を訪れていた警官なのですが、その液体、先日の事故でも確認ができています。今回より距離が遠かったので注目はされなかったですが……。」
そういえば、夕焚が“一人は今も現場で調べている”と言っていた事を思い出した。
「その液体の情報って記録してあったりします?」
「すみません……。」
「大丈夫ですよ。その情報だけでも充分です。とりあえず、その液体のところまで行きましょう。」
『定点カメラに液体が収められていました。尾形さんの言った通り、そこから約三十メートル付近です。』
夕焚はそう言って、映像を送ってきた。
恐らく、人手はそんなに必要ないだろう。液体を確認するために採取しなければならない。
先日の現場に携わった警官がそこでも見たと言っているので、恐らくその液体が原因の一つだ。
「分かった。確認してくる。」
そう言ってその方向へと足を進めると、隣を歩いて付いて来た警官が言った。
「自分もお供します。」
「ありがとう。」
三十メートル程度歩くと、その液体溜まりを視界に捉えることができた。
協力者さんの言うように層が薄いように見えるが、範囲はそこそこあった。タイヤ一つくらい浸かっても不思議ではないくらいには。
その液体に当たった雨は水飛沫というには少し重かった。
俺は仕事道具の一つであるピペットを使って液体を回収した。
「警官さん。少し手伝ってくれませんか。」
「構いませんが……一体何を?」
鞄から手袋を取り出して、警官に渡した。
「その手袋は正体不明の液体を触る時に使うものです。大抵のものを染み出しません。それを着用して液体に触れてみてくれませんか?安全性は自分が保証します。」
そう言うと、警官は手袋を着用して、恐れる事なく液体に触れた。
「どうですか?」
「ベタつきますね……。」
「なるほど……。」
俺は片方の靴を脱ぎ、ボーリングのように液体の上を滑らした。しかし、ベタつくどころか氷の上のようにスムーズに滑っていた。
靴とタイヤにはある共通点がある。まだ他の物も試してみないと分からないが、咲淋の方と合わせれば液体の正体は分かるはず。
どちらにせよ、この液体が付着した事により車が滑りやすくなっており、それに加えて視認性が相当悪くなっていたことが原因でほぼほぼ間違いないだろう。
この液体がどこから出てきたのかについては、こちらからじゃ特定できないのでスルーでいいはず。
「……証拠材料はもう充分に揃いました。警官さんは他の協力者のところで待機していて下さい。」
「早瀬さんは……」
「自分には、もう一つすべきことがあるので。一人で大丈夫ですから、心配なさらず……。」
「……何をしようとしているのかは分かりませんが、どうかご無事で。」
「ありがとうございます。」
半ば追い返すような感じになってしまったが、彼は車の方へと戻っていった。
最後の仕上げである花の摘み取りの危険性は未知数。自分に掛かった呪いからのお告げに他人を巻き込む訳にもいかないので、仕方がなかった。
「……探しますか……」
自動車道にあるとはとても思えないが、どこかにはあるはずの花を俺は探し始めた。
「それで夕焚、カメラからはどう見えてた?」
『ドライブレコーダーの映像が乱れていて何とも……。定点カメラからはばっちり映っています。スリップしたようですね……。』
「スリップ?」
一台目の車がスリップして衝突したという事なのか。
「調べてみる。」
ひとまず、俺は事故現場付近に歩いて向かった。
到着すると、既に後列を走っていた協力者の方が調べ始めていた。
「あ、早瀬さん。これ……」
すると、協力者の一人が声を掛けてきたため、彼の指差したものを見た。
それはスリップした車の水のタイヤ痕であった。
「スリップしたっていうのは間違い無さそうだけど……何でタイヤが濡れているんだ……?この車のタイヤは九州製か?」
「そうです。防水機能が備わっています。」
この恒夢前線の範囲内がナンバーになっている車は、改造していなければ防水機能が備わっている。
絶え間なく雨が振り続けるため、道路が水浸しになることもしばしばある。そんな状況の中でも抵抗を減らして安全に走行するためにこのタイヤが採用されている。
ちょっとやそっとの水滴じゃ簡単に弾かれてしまうので、余程大きな水溜まりでもなければタイヤ痕が付くまで濡れないはず。
「一度全車両のタイヤを確認しよう……。」
計二十台分のタイヤを事故った車以外も含めて調べた結果、見事に全て濡れていた。しかし、後列になるにつれて濡れ具合は大きくなっていた。
水を吸ったかとも考えたが、それなら前列の方が濡れていないとおかしい。
「やっぱりおかしい……。そもそもどこで濡れた?確かパーキングエリアの時点では全て乾いていたはずだし……」
とはいえ、当然だが俺は前を見て運転していたため、道路に濡れた原因のものがあっても細かく確認が取れない。
ここまでしっかり濡れているのなら運転していても流石に気づくレベルの水溜まりであると思うが、念の為スリップ車とそれに巻き込まれた四台の車に乗っていた協力者に話を聞いた。
「スリップするまでの間に、大きな水溜まりはありませんでした…よね?」
「点々と水溜まりはありましたが、氾濫級の水溜まりはありませんでした。」
“流石にそうだよな。”そう思って別の可能性を考えようとした時、彼は続けて話した。
「ですが……ちょっと水質が違いそうな水溜まりがあったんですよー。層は一番薄そうだったんですが、水飛沫や反射具合が異なっていました。そこを通過しておよそ三十メートルくらいしてから、小回りが効かなくなってスリップしていました。衝突された車も、若干滑った結果連鎖したものだと思います。」
その話を聞いて衝突された車を確認してみると、確かにタイヤ痕の長さが勢いに対して長く滑っていたことを表していた。
すると、前方の方から別の協力者が来て言った。
「早瀬さん、私は先日事故現場を訪れていた警官なのですが、その液体、先日の事故でも確認ができています。今回より距離が遠かったので注目はされなかったですが……。」
そういえば、夕焚が“一人は今も現場で調べている”と言っていた事を思い出した。
「その液体の情報って記録してあったりします?」
「すみません……。」
「大丈夫ですよ。その情報だけでも充分です。とりあえず、その液体のところまで行きましょう。」
『定点カメラに液体が収められていました。尾形さんの言った通り、そこから約三十メートル付近です。』
夕焚はそう言って、映像を送ってきた。
恐らく、人手はそんなに必要ないだろう。液体を確認するために採取しなければならない。
先日の現場に携わった警官がそこでも見たと言っているので、恐らくその液体が原因の一つだ。
「分かった。確認してくる。」
そう言ってその方向へと足を進めると、隣を歩いて付いて来た警官が言った。
「自分もお供します。」
「ありがとう。」
三十メートル程度歩くと、その液体溜まりを視界に捉えることができた。
協力者さんの言うように層が薄いように見えるが、範囲はそこそこあった。タイヤ一つくらい浸かっても不思議ではないくらいには。
その液体に当たった雨は水飛沫というには少し重かった。
俺は仕事道具の一つであるピペットを使って液体を回収した。
「警官さん。少し手伝ってくれませんか。」
「構いませんが……一体何を?」
鞄から手袋を取り出して、警官に渡した。
「その手袋は正体不明の液体を触る時に使うものです。大抵のものを染み出しません。それを着用して液体に触れてみてくれませんか?安全性は自分が保証します。」
そう言うと、警官は手袋を着用して、恐れる事なく液体に触れた。
「どうですか?」
「ベタつきますね……。」
「なるほど……。」
俺は片方の靴を脱ぎ、ボーリングのように液体の上を滑らした。しかし、ベタつくどころか氷の上のようにスムーズに滑っていた。
靴とタイヤにはある共通点がある。まだ他の物も試してみないと分からないが、咲淋の方と合わせれば液体の正体は分かるはず。
どちらにせよ、この液体が付着した事により車が滑りやすくなっており、それに加えて視認性が相当悪くなっていたことが原因でほぼほぼ間違いないだろう。
この液体がどこから出てきたのかについては、こちらからじゃ特定できないのでスルーでいいはず。
「……証拠材料はもう充分に揃いました。警官さんは他の協力者のところで待機していて下さい。」
「早瀬さんは……」
「自分には、もう一つすべきことがあるので。一人で大丈夫ですから、心配なさらず……。」
「……何をしようとしているのかは分かりませんが、どうかご無事で。」
「ありがとうございます。」
半ば追い返すような感じになってしまったが、彼は車の方へと戻っていった。
最後の仕上げである花の摘み取りの危険性は未知数。自分に掛かった呪いからのお告げに他人を巻き込む訳にもいかないので、仕方がなかった。
「……探しますか……」
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