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3章:追憶の雷雨
28日目.援助
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迫りくる炎。まずはこの状況を打破しなければ先に進めない。一度冷静に一周見渡した。
「足場が無くなる前には到底消えそうにない……。火が弱まる様子もない………強引だが、やるしか…!」
隣に立て掛けてあった少し重たい看板を持ち上げて、火の一番弱そうな部分へと投げ入れた。
それから俺はその方向に向かって全力で走り、看板が燃焼するまでのほんの一瞬のタイミングで火から走り抜けた。
「成功……。二十四はまだまだ動ける。」
心臓を落ち着かせた後、建物の方を見た。それは炎に覆われており、長時間の呼吸はままならないだろう。
我ながら、よく抜け出せたものだ。火の中に自ら飛び込むという半ば賭けのようなやり方だったが、結果論だ。
極太い火柱を背に、オシロイバナを求めて歩き出した。
どうやら落雷は一発だけじゃなかったようで、火はあらゆるところに燃え移っていた。まるで地獄のような光景だ。
不思議なことに、こんな様子でも火は道路には何の影響も及ぼしていない。偶然の奇跡なのか、仕組まれているのかは分からないけど、助かった。
そんな左右は燃えたぎり、道は拓かれている道路を進んでいると、その姿は目に入った。
「見つけた………けど、また身体を張らないといけないのか……。」
火だるまとなった花壇。その一番上にオシロイバナは鎮座していた。
「……本来植えられていた花が見当たらない。燃えたという訳でもないようだし、以前の俺の仮説は………いや後にしよう。一刻も早くこの空間から去らないと!」
気持ちを切り替え、俺は首を振って辺りに使えそうな物がないかを確認した。
「駄目だ、何もかも既に炭になってる……。」
標的はすぐそこにあるのに、辿り着く術が思いつかない。良い方法はないものかと経験を振り返ると、一つ絞り出せた。決して得策とは言えないが、そもそもどんな手段を使ったって危険は伴う。
「時間との戦い……。頼むからアクシデントが起こりませんように……!」
そう強く祈って、俺は焦げたレンガのブロックを拾って投げて、先程やったように火の中に飛び込んだ。
実際に火の中からこうやって生存できているのだ。その時の火と勢いはおおよそ同じくらいに見えるため、即死の心配は除外される。
花を摘み取ることさえ出来れば、すぐに元居た場所に戻ってこられることは把握済み。その時に症状は引き継がれていなかった。
しかし、ここで息絶えた場合どうなるかは検証しようがない。ただ、痛みも感じるし、症状も現れているため、普通に死ぬ可能性が高い。
ここでの意識や記憶は引き継がれるため、命は共有されていると見ていいだろう。というより、最悪の場合を想定して動かないと詰む。それでも、安全策はどのみち取れない。
最も有効なのは、息絶える前に帰還するのみ。
身体を焼かれながらも、決死の覚悟で花壇を登って手を伸ばした。刻一刻と命の砂時計が落ちていく中、俺は足を引っ掛けた。
「……ッ!」
『馬鹿……本当に見て…れない……』
とにかく必死で他のことに意識を割けられなかったが、ノイズにまみれた声が何かを言っていた。
“ここで転んだら間に合わない”そう思っていた次の瞬間、火力が急に弱まった。
一旦俺は冷静に片足を止めて、転ぶのを防いだ。気付けばもうオシロイバナはすぐ側にあったため、空いた方の手で摘み取った。すると視界がぼやけ、意識が中断された。
『……彼はどうして……そんなすぐに命懸けの決断ができるの……?』
「はっ…!……無事に…戻ってこられた……?…それより、ここは何処……」
「目が覚めましたか?」
意識が戻り目を開くと、そこは知らない天井だった。寝起きでしばらく頭が止まっていると、人の声が聴こえた。
声を聴いて身体を起こすと、スーツ姿の似合う長身の男性の姿があった。
「雷雨の中、道の脇で貴方が倒れていたのを発見した時は驚きましたよ。すぐに意識が戻って良かったです。」
「心配かけてすみません。運んでくださりありがとうございます。ところで、今は何日の何時なのかを伺ってもよろしいですか?」
そうして、俺は男性に現在の日時を教えてもらった。同日の午後四時だ。
「気絶時間はおよそ四時間か………。」
これまでのように丸一日過ぎ去った訳じゃなくてひとまず安心した。しかし、男性が言うにはあんな雷雨の中道端に倒れていたそうだ。
「助けてくださり本当にありがとうございました。貴方は命の恩人です。」
お辞儀してそう感謝を述べると、男性は言った。
「大人として当然のことをしたまでです。なにはともあれ、貴方に怪我が無さそうで良かったです。もしも何か用事があるなら、私が送っていきましょうか?」
「そんな……そこまでしてもらっては悪いですよ……。現在地は何処ですか?」
「ビジネスホテルです。貴方が倒れていた場所からはけっこう距離がありますよ?雨もいつも以上に強いですし、遠慮しないでください。」
「……よろしくお願いします。」
優しい男性の心配を蔑ろにするのも気が引けるため、お言葉に甘えさせてもらい車に乗せてもらった。
車内。咲淋から安否確認のメールが小刻みに数件届いていたため、ひとまず無事であることを報告した。
一談楽してスマホを閉じると、男性が尋ねてきた。
「ところで、お兄さんは地元の人ですか?」
「はい。生まれも育ちも九州です。都市部からは少し距離がありますけどね……。」
「そうなんですか。お仕事は何をされているんですか?」
「東京で地理学者をやっております。今は長期休暇を頂いて帰郷している最中です。貴方は何をされていますか?」
「私ですか?私はカメラマンを十年程続けております。」
「失礼ですが三十代ですか……?」
「どちらとも言えませんね……。実は明日で三十になるのですよ。」
「それはおめでとうございます?私はまだ二十代前半で至らないところも多いので、貴方のような人を本当に尊敬しています。」
「ありがとうございます?」
そうこう会話しているうちに、俺が倒れていた地点の最寄り駅へ到着して、俺は車を降りた。
「改めて…お気遣いありがとうございました。」
車を降りて、改めて感謝の気持ちを伝えた。
「手は取り合うためにあるものです。ここで会えたのも何かの縁。貴方の大成を祈っていますよ。」
「こちらこそ。」
開いていた窓を閉めて、男性の車は進みだした。世の中には紳士的な人も居るものだ。
時間を確認すると割と押していたため、俺は電車に乗って実家方面に帰って行った。
「足場が無くなる前には到底消えそうにない……。火が弱まる様子もない………強引だが、やるしか…!」
隣に立て掛けてあった少し重たい看板を持ち上げて、火の一番弱そうな部分へと投げ入れた。
それから俺はその方向に向かって全力で走り、看板が燃焼するまでのほんの一瞬のタイミングで火から走り抜けた。
「成功……。二十四はまだまだ動ける。」
心臓を落ち着かせた後、建物の方を見た。それは炎に覆われており、長時間の呼吸はままならないだろう。
我ながら、よく抜け出せたものだ。火の中に自ら飛び込むという半ば賭けのようなやり方だったが、結果論だ。
極太い火柱を背に、オシロイバナを求めて歩き出した。
どうやら落雷は一発だけじゃなかったようで、火はあらゆるところに燃え移っていた。まるで地獄のような光景だ。
不思議なことに、こんな様子でも火は道路には何の影響も及ぼしていない。偶然の奇跡なのか、仕組まれているのかは分からないけど、助かった。
そんな左右は燃えたぎり、道は拓かれている道路を進んでいると、その姿は目に入った。
「見つけた………けど、また身体を張らないといけないのか……。」
火だるまとなった花壇。その一番上にオシロイバナは鎮座していた。
「……本来植えられていた花が見当たらない。燃えたという訳でもないようだし、以前の俺の仮説は………いや後にしよう。一刻も早くこの空間から去らないと!」
気持ちを切り替え、俺は首を振って辺りに使えそうな物がないかを確認した。
「駄目だ、何もかも既に炭になってる……。」
標的はすぐそこにあるのに、辿り着く術が思いつかない。良い方法はないものかと経験を振り返ると、一つ絞り出せた。決して得策とは言えないが、そもそもどんな手段を使ったって危険は伴う。
「時間との戦い……。頼むからアクシデントが起こりませんように……!」
そう強く祈って、俺は焦げたレンガのブロックを拾って投げて、先程やったように火の中に飛び込んだ。
実際に火の中からこうやって生存できているのだ。その時の火と勢いはおおよそ同じくらいに見えるため、即死の心配は除外される。
花を摘み取ることさえ出来れば、すぐに元居た場所に戻ってこられることは把握済み。その時に症状は引き継がれていなかった。
しかし、ここで息絶えた場合どうなるかは検証しようがない。ただ、痛みも感じるし、症状も現れているため、普通に死ぬ可能性が高い。
ここでの意識や記憶は引き継がれるため、命は共有されていると見ていいだろう。というより、最悪の場合を想定して動かないと詰む。それでも、安全策はどのみち取れない。
最も有効なのは、息絶える前に帰還するのみ。
身体を焼かれながらも、決死の覚悟で花壇を登って手を伸ばした。刻一刻と命の砂時計が落ちていく中、俺は足を引っ掛けた。
「……ッ!」
『馬鹿……本当に見て…れない……』
とにかく必死で他のことに意識を割けられなかったが、ノイズにまみれた声が何かを言っていた。
“ここで転んだら間に合わない”そう思っていた次の瞬間、火力が急に弱まった。
一旦俺は冷静に片足を止めて、転ぶのを防いだ。気付けばもうオシロイバナはすぐ側にあったため、空いた方の手で摘み取った。すると視界がぼやけ、意識が中断された。
『……彼はどうして……そんなすぐに命懸けの決断ができるの……?』
「はっ…!……無事に…戻ってこられた……?…それより、ここは何処……」
「目が覚めましたか?」
意識が戻り目を開くと、そこは知らない天井だった。寝起きでしばらく頭が止まっていると、人の声が聴こえた。
声を聴いて身体を起こすと、スーツ姿の似合う長身の男性の姿があった。
「雷雨の中、道の脇で貴方が倒れていたのを発見した時は驚きましたよ。すぐに意識が戻って良かったです。」
「心配かけてすみません。運んでくださりありがとうございます。ところで、今は何日の何時なのかを伺ってもよろしいですか?」
そうして、俺は男性に現在の日時を教えてもらった。同日の午後四時だ。
「気絶時間はおよそ四時間か………。」
これまでのように丸一日過ぎ去った訳じゃなくてひとまず安心した。しかし、男性が言うにはあんな雷雨の中道端に倒れていたそうだ。
「助けてくださり本当にありがとうございました。貴方は命の恩人です。」
お辞儀してそう感謝を述べると、男性は言った。
「大人として当然のことをしたまでです。なにはともあれ、貴方に怪我が無さそうで良かったです。もしも何か用事があるなら、私が送っていきましょうか?」
「そんな……そこまでしてもらっては悪いですよ……。現在地は何処ですか?」
「ビジネスホテルです。貴方が倒れていた場所からはけっこう距離がありますよ?雨もいつも以上に強いですし、遠慮しないでください。」
「……よろしくお願いします。」
優しい男性の心配を蔑ろにするのも気が引けるため、お言葉に甘えさせてもらい車に乗せてもらった。
車内。咲淋から安否確認のメールが小刻みに数件届いていたため、ひとまず無事であることを報告した。
一談楽してスマホを閉じると、男性が尋ねてきた。
「ところで、お兄さんは地元の人ですか?」
「はい。生まれも育ちも九州です。都市部からは少し距離がありますけどね……。」
「そうなんですか。お仕事は何をされているんですか?」
「東京で地理学者をやっております。今は長期休暇を頂いて帰郷している最中です。貴方は何をされていますか?」
「私ですか?私はカメラマンを十年程続けております。」
「失礼ですが三十代ですか……?」
「どちらとも言えませんね……。実は明日で三十になるのですよ。」
「それはおめでとうございます?私はまだ二十代前半で至らないところも多いので、貴方のような人を本当に尊敬しています。」
「ありがとうございます?」
そうこう会話しているうちに、俺が倒れていた地点の最寄り駅へ到着して、俺は車を降りた。
「改めて…お気遣いありがとうございました。」
車を降りて、改めて感謝の気持ちを伝えた。
「手は取り合うためにあるものです。ここで会えたのも何かの縁。貴方の大成を祈っていますよ。」
「こちらこそ。」
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