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4章:想疎隔エレベーター
31日目.堅い信頼
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正午前、二度寝後は快眠して疲れはかなり取れた。俺は起き上がって、改めてメールを確認した。
「遊ぶってもなぁ……。あんまり場所が思いつかない。」
提案しようにも何も思いつかない。俺も聖穂も長らくこの辺りを離れていた。それに、遠出もあまりした事がない。一番充実する時期を、辛苦を抱えて過ごしていたから。
ひとまず、聖穂に電話を掛けてみた。
『聖穂だよ。あ、メール見てくれた?』
「見たよ。それで何処に行くか決めようかなって……。どういう場所に行きたいとかある?お互いに久々の九州だからさ。」
するとスマホ越しで悩んでいるのかしばらく会話が止まり、また声が聴こえた。
『夜景が見たいかな~!私、夜景がすごく好きで、こっちでも目に焼き付けておきたいの。蓮君もそう思わない?』
「俺も合わせなしでそう思うよ。」
六年近く東京の夜景を見てきた。上京したばかりの頃は本当に見惚れていた。日を重ねるにつれて慣れてしまったけど。
だけど、地質調査などで遠方に行く時はまた新たな夜景に見惚れていた。そうしているうちに虜になった。
「夜景が綺麗な場所…探しておくよ。」
『本当?よろしくね。楽しみにしてるよ!』
そう言って、彼女は電話を切った。俺はスマホを枕の側に置いて、早速ノートパソコンで場所探しを始めた。
いつ、何処に行ってもあいにくの天気ではあるが、それでも綺麗な場所は沢山あるはずだ。
長いこと調べ物に集中していると、扉をノックして咲淋が入ってきた。
「暇になったから訪ねてみたよ。何を調べているの?」
「再会した友人とちょっと出掛けることになってね…。行き先を調べてた。」
「素敵ね。そういえば、サークル内で旅行に行くってなった時も蓮斗が率先してプランを作っていたよね。」
「そんなこともあったな。莉乃のペースに掻き回されたけど……。」
「確かに、莉乃は自由奔放だからね……。蓮斗が柔軟にプランを変えてくれたから、やり残し無く楽しめた覚えがあるけれど。」
結局、予定をきめ細かくし過ぎてもつまらない。“絶対にここには行きたい!これは食べたい!”という風にピックアップして、おおよそで予定を組む。
散策だけでも充分に楽しめる俺達にとっては、それくらいが丁度良かった。
「成功するといいわね。……ところで話が変わるのだけれど、昨日の雷雨の観測結果について話してもいい?」
咲淋はポケットからUSBを取り出してそう尋ねてきた。俺も一度インターネットエンジンを閉じて、雰囲気を変えた。
「お願い。」
「雷自体は私達の知っているものと同様で、そのメカニズムにも差異は無かった。だから、この辺りだけ落雷が珍しい理由について主に調べてみたの。やっぱり何層にも重なった雲の影響だったよ。」
「積乱雲とは全然異なるのか?」
「ええ。一つ一つの役割も性質も全然違うし、そもそも積み重なっているかと聞かれたら……」
「なるほど…。となると、雷雲の発達が別の雲に阻害されて、間隔が空いていると考えるのが自然か。……低所に落ちやすい原因はどうなの?」
「一番気になるのはそこだと思うけど、……ごめんなさい。」
「咲淋が謝ることじゃないよ。……恒夢前線の概要は分かってきたけど、一番知りたい情報は全然現れないな…。」
咲淋の調査は順調でとりあえず良かったが、事故にまつわる事でピンとくるものは一向に現れる気配がない。
そもそもミスリードだったのか、超常現象過ぎて掴めずに空振っているだけなのか。
「まだまだこっちは時間がかかりそうだ……。」
そう呟いて、ひとまず俺は調べものを再開した。
午後の時間を費やして、良い場所が見つかった。咲淋のアドバイスも込みで、プランは割と緩めにすることにした。
「さて……早めに寝るか…」
__________________
早く寝て正解だったかもしれない。どんな情報が入ってくるか分からないので、意外と集中力が要るのだ。
「昨日は大丈夫だったか……?」
そう尋ねると、彼女は姿を現した。
『ギリギリね……。』
「教えてほしい。今、君に起こっていることについて……。」
以前彼女は“あまり時間がない”だとか“不安定”だとか言っていた。あの悶え苦しむ様子やノイズ、唱に教えてもらったことも含めて、彼女は何か事情を抱えているはず。
すると彼女は少し黙り込んで決心をしたのか、一息ついて話し始めた。
『……唱が言ってた事で全部合ってるよ。私は貴方と結合している。死後、気付いたら漂着していたの。』
「不安定な理由は……?魂だけの存在だからなの?」
『それは違うよ。……私は呪いの根源を知っている。だけど、私の口から話したら、貴方にどんな厄災が降りかかるか分からない。言えることは、私が不安定な理由はそれなの。』
「……呪いの正体は君じゃないんだよな…?」
『半々…?……ちゃんと言えないのがもどかしいよ…。でも、貴方なら分かってくれるって信じてるよ……。』
初めから俺は彼女のことを疑ってなんかいなかった。最初から、彼女は協力的だった。半々というのは、全く無関係ではないけど、意思には反している。そんなところだろうか。
「君が悪くないのは、ずっと行動が示していた。……呪花って言うんだよね。あれを摘み取り続ければ、君は安定化するの…?」
『うん…。だけど、時間が本当に迫ってきているの。摘み取る度に延長するはずだけど、呪いも勢いを増してる……。あと四本…私も頑張ってサポートするから、よろしく…ね……』
徐々に話し方がスムーズじゃなくなっていた。余力が減っている証拠だ。
「分かった。君を絶対に守ってみせる。今度こそ………。」
『やっぱり…頼も…しいね……れ…』
彼女が眠ると同時に、俺は夢から覚めた。
__________________
起き上がると、今日も今日とて雨の朝だ。スマホを確認すると、昨日寝る前に送ったメールが返信されていた。
『門司港レトロ展望室?いいね!明日で大丈夫?』
その内容に俺が“いつでも大丈夫だよ”と返すとすぐに既読がついて、返信された。
『どんな所に連れてってくれるのか、楽しみだよ!』
“聖穂が楽しんでくれると良いなぁ。”そう思いつつ、明日のために残り僅かで完成の仕事の報告書を仕上げ始めた。
「遊ぶってもなぁ……。あんまり場所が思いつかない。」
提案しようにも何も思いつかない。俺も聖穂も長らくこの辺りを離れていた。それに、遠出もあまりした事がない。一番充実する時期を、辛苦を抱えて過ごしていたから。
ひとまず、聖穂に電話を掛けてみた。
『聖穂だよ。あ、メール見てくれた?』
「見たよ。それで何処に行くか決めようかなって……。どういう場所に行きたいとかある?お互いに久々の九州だからさ。」
するとスマホ越しで悩んでいるのかしばらく会話が止まり、また声が聴こえた。
『夜景が見たいかな~!私、夜景がすごく好きで、こっちでも目に焼き付けておきたいの。蓮君もそう思わない?』
「俺も合わせなしでそう思うよ。」
六年近く東京の夜景を見てきた。上京したばかりの頃は本当に見惚れていた。日を重ねるにつれて慣れてしまったけど。
だけど、地質調査などで遠方に行く時はまた新たな夜景に見惚れていた。そうしているうちに虜になった。
「夜景が綺麗な場所…探しておくよ。」
『本当?よろしくね。楽しみにしてるよ!』
そう言って、彼女は電話を切った。俺はスマホを枕の側に置いて、早速ノートパソコンで場所探しを始めた。
いつ、何処に行ってもあいにくの天気ではあるが、それでも綺麗な場所は沢山あるはずだ。
長いこと調べ物に集中していると、扉をノックして咲淋が入ってきた。
「暇になったから訪ねてみたよ。何を調べているの?」
「再会した友人とちょっと出掛けることになってね…。行き先を調べてた。」
「素敵ね。そういえば、サークル内で旅行に行くってなった時も蓮斗が率先してプランを作っていたよね。」
「そんなこともあったな。莉乃のペースに掻き回されたけど……。」
「確かに、莉乃は自由奔放だからね……。蓮斗が柔軟にプランを変えてくれたから、やり残し無く楽しめた覚えがあるけれど。」
結局、予定をきめ細かくし過ぎてもつまらない。“絶対にここには行きたい!これは食べたい!”という風にピックアップして、おおよそで予定を組む。
散策だけでも充分に楽しめる俺達にとっては、それくらいが丁度良かった。
「成功するといいわね。……ところで話が変わるのだけれど、昨日の雷雨の観測結果について話してもいい?」
咲淋はポケットからUSBを取り出してそう尋ねてきた。俺も一度インターネットエンジンを閉じて、雰囲気を変えた。
「お願い。」
「雷自体は私達の知っているものと同様で、そのメカニズムにも差異は無かった。だから、この辺りだけ落雷が珍しい理由について主に調べてみたの。やっぱり何層にも重なった雲の影響だったよ。」
「積乱雲とは全然異なるのか?」
「ええ。一つ一つの役割も性質も全然違うし、そもそも積み重なっているかと聞かれたら……」
「なるほど…。となると、雷雲の発達が別の雲に阻害されて、間隔が空いていると考えるのが自然か。……低所に落ちやすい原因はどうなの?」
「一番気になるのはそこだと思うけど、……ごめんなさい。」
「咲淋が謝ることじゃないよ。……恒夢前線の概要は分かってきたけど、一番知りたい情報は全然現れないな…。」
咲淋の調査は順調でとりあえず良かったが、事故にまつわる事でピンとくるものは一向に現れる気配がない。
そもそもミスリードだったのか、超常現象過ぎて掴めずに空振っているだけなのか。
「まだまだこっちは時間がかかりそうだ……。」
そう呟いて、ひとまず俺は調べものを再開した。
午後の時間を費やして、良い場所が見つかった。咲淋のアドバイスも込みで、プランは割と緩めにすることにした。
「さて……早めに寝るか…」
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早く寝て正解だったかもしれない。どんな情報が入ってくるか分からないので、意外と集中力が要るのだ。
「昨日は大丈夫だったか……?」
そう尋ねると、彼女は姿を現した。
『ギリギリね……。』
「教えてほしい。今、君に起こっていることについて……。」
以前彼女は“あまり時間がない”だとか“不安定”だとか言っていた。あの悶え苦しむ様子やノイズ、唱に教えてもらったことも含めて、彼女は何か事情を抱えているはず。
すると彼女は少し黙り込んで決心をしたのか、一息ついて話し始めた。
『……唱が言ってた事で全部合ってるよ。私は貴方と結合している。死後、気付いたら漂着していたの。』
「不安定な理由は……?魂だけの存在だからなの?」
『それは違うよ。……私は呪いの根源を知っている。だけど、私の口から話したら、貴方にどんな厄災が降りかかるか分からない。言えることは、私が不安定な理由はそれなの。』
「……呪いの正体は君じゃないんだよな…?」
『半々…?……ちゃんと言えないのがもどかしいよ…。でも、貴方なら分かってくれるって信じてるよ……。』
初めから俺は彼女のことを疑ってなんかいなかった。最初から、彼女は協力的だった。半々というのは、全く無関係ではないけど、意思には反している。そんなところだろうか。
「君が悪くないのは、ずっと行動が示していた。……呪花って言うんだよね。あれを摘み取り続ければ、君は安定化するの…?」
『うん…。だけど、時間が本当に迫ってきているの。摘み取る度に延長するはずだけど、呪いも勢いを増してる……。あと四本…私も頑張ってサポートするから、よろしく…ね……』
徐々に話し方がスムーズじゃなくなっていた。余力が減っている証拠だ。
「分かった。君を絶対に守ってみせる。今度こそ………。」
『やっぱり…頼も…しいね……れ…』
彼女が眠ると同時に、俺は夢から覚めた。
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起き上がると、今日も今日とて雨の朝だ。スマホを確認すると、昨日寝る前に送ったメールが返信されていた。
『門司港レトロ展望室?いいね!明日で大丈夫?』
その内容に俺が“いつでも大丈夫だよ”と返すとすぐに既読がついて、返信された。
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