亡花の禁足地 ~何故、運命は残酷に邪魔をするの~

やみくも

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4章:想疎隔エレベーター

34日目.閉扉

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 エレベーターに乗ると勝手に扉が閉まり、勝手に昇降する。降りた先はまた別のエレベーターに繋がっている。
 窓から差す月明かりだけが唯一空間を照らしてくれていて、非常に暗い。おまけに同じような景色が続く。不安感で押しつぶされてしまいそうだ。

 「今までとは状況が全然違う……。呪いが本気を出したのか、それとも……聖穂の意識が混ざった結果なのか…?」

 途中まで現実かどうかの区別が着かないほど差異が要所要所にしかない前例とは違い、今回は一目でおかしいと気付ける。その反面、より一層奇妙だ。
 そんな空間をヒントも宛てもなく、目的を果たすために彷徨い歩く。方角も分からない、連なる密室を行き来しながら…。







 「八回目の挑戦……。なんかずっと同じ場所を回っている気がする。実際、何処に居るか把握出来てないけど……。」

 エレベーターを乗り継ぎ続けること八回目。本当に辿り着けるのかという疑問も抱いていた。
 そうしてまた停止して扉が開く。すると、目新しい場所に出た。

 「エントランスらしい雰囲気だ……。」

 しっかりとした閃緑岩の床があり、中央の太い柱に液晶パネルが付属しているやや広い空間だ。しかし、依然として天井は果てしなく、エレベーターが大量に稼働している。
 
 「少しは進んだ……ということか。いや、下がった可能性も……そもそも上下が存在するのか…?考えても意味無いか……。」

 自問自答し、俺が次のエレベーターに乗ろうとしたその時、古びた液晶パネルに砂嵐が映った。
 刹那、空間が揺れ始めた。

 「……ッ!」

 俺はすぐにその場にしゃがみ込み、頭部を守った。しばらくすると、揺れはすぐに収まった。

 「地震か……幸い、規模はそれほど大きくなくて良かった……。…!」

 安全を確認して顔を上げると、液晶パネルの砂嵐が映像に変わっていた。その映像には、エレベーターの裏側が故障している場面と、聖穂が眠っている場面が映し出されていた。

 「聖穂……!」

 那緒の助言通り、危険な箇所が少なくとも一つ以上はあることが、映像により確定した。そうなると、聖穂が心配だ。
 彼女は今、自己防衛できる状態じゃない。画面に映る彼女は悪夢にうなされているかのように眠っているように見える。もしくは、金縛りと捉えることも出来るだろう。
 どちらにせよ、早く合流しないと命を保証できない。経験上、このような妨害トラブルは時間と共にエスカレートされていく。ゆっくりはしていられない。

 「……けど、総当たりなんかじゃ間に合うはずが……。第一、軽い気持ちで賭けていいことじゃ……!」

 一度エレベーターに乗ったら、同じ場所に戻ってこられるか分からない。ひとまず、手掛かりになるようなものがないかエントランスを調べてみることにした。素早く、そして正確に。



 中央の正八角形の柱の周りを囲む花壇を調べていると、配置に違和感を覚えた。

 「……全て扉に向いているみたいだけど、どうしてこの一角だけ乱雑なんだ……。」

 五輪の花が八角形のそれぞれに植わっており、その花は目の前にある扉に綺麗に向いている。
 しかし、ある一角だけは方向が統一されていなかった。
 気になった俺はその一角の指すエレベーターを見上げた。すると、チェーンが歪んでいることに気が付いた。

 「……!映像にある、故障しているエレベーターはこれか…」

 念の為、他七つのエレベーターの裏側も確認したが、特に問題は見当たらなかった。

 「こんなにも分かり易いヒント……。那緒が改変を加えてくれたのかな?……あまり頼らずにいきたかったけど、ノーヒントじゃ停滞していた気がする……。ありがとう。」

 目に見えない那緒にそう感謝を告げて、俺は迷わず故障しているエレベーターに乗り込んだ。
 映像の下側に、監視カメラ型番が記載されていた。聖穂と故障エレベーターは近い数字の型番だったため、同一の場所である可能性が高い。
 それに、最も危険が伴う場所に呪花も合わせて集約されているとしたら、理にかなっている。なぜなら、この空間は俺を拒んでいるから。







 ゆっくり、しかし着実に、そのエレベーターは上昇していた。乗り込んで数十秒後にエレベーターは停まり、扉が開いた。

 「……聖穂!…読みは当たったか……。」

 今乗っているエレベーターを降りた部屋の開いた密室の中に、聖穂の姿はあった。彼女と合流するためにそのエレベーターに乗り込もうとしたその時、扉が閉まりかけた。

 「ッ!」
 
 完全に閉め切る前に靴を脱ぎ、咄嗟にそれを扉の隙間に滑り込ませた。しかし、扉はそれをものともせずに無理矢理閉まった。

 「待て!」

 そう叫びながら扉を叩くが、その中には既に聖穂を乗せた密室は入っていなかった。

 「……くっ!あと一歩だったのに…!」

 “あと一秒でも早ければ……”そんな悔しさを胸に抱き、今乗っているエレベーターで下降した。







 悪夢に魘される聖穂の耳元で、影は同じことを何度も何度も囁いた。

 『お前とあの男は住む世界が違う。お前の心はいつまでも孤独のままだ。本当のお前を愛してくれる人間なんて、この世に一人も存在しない。』

 「……もうやめてよ!私は……私は……」

 涙を浮かべながら、聖穂は思い返した。そして、一言発した。

 「私は……本当に、誰かに振り向かれていたのかな………」
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