多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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Chapter Ⅱ:Vicious

No22.Heroes are always late

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 「通知が入ったぞ。『危険信号』だとさ。早く出て正解だったな。」

 旋梨はそう言うと、スマホを閉じて目を瞑った。彼が目を開くと、黄緑の瞳に闘志がみなぎっていた。
 俺と愁も彼のこれまでに無い程の本気を察して、力を込めて弾を入れた。
 営業時間前で昼間、更に経営者が誘拐犯ともなれば先客がテロ集団の端くれの可能性がある。命を奪う真似は出来るだけ避けたいが、もう俺に…俺達に後戻りする気は無い。







 ロックされた扉が開き、男が入ってきた。私はすぐにスマホの電源を落として目を閉じた。

 「さてと起こす……っと連中は無防備が好きなんだったな。」

 すると背後からもう一人の男が入って来て、横から順番に彼女達を別室へ運んでいった。
 ここからは外部の情報が私には分からなくなってしまう。音を頼りに彼らと連携するしかない。
 
 隣にいる波瑠も運ばれ、私も最後に運ばれた。
 ……波瑠。お姉さんの後輩はタイムリミットギリギリの焦らす人達だけど、必ず助けにくるから。







 部屋移しが終わった男達は入口に戻り、山田組の野郎共の案内を始めた。

 「うぉぉぉ!全員めっちゃ好み!」

 「誰でも良いんだな…。」

 山田組の興奮具合に男達も流石に“呆れ”という感情を持った。彼らにとって厳選した人材を適当に反応されるのは嫌なのだろう。
 野郎共は標的を定め、次々と案内されていく中、山田組一の欲望の塊「山城」は悩んでいる様子だった。

 「貴方はこだわりとか無いと思っていましたよ。」

 「これでも山田組副会長だ。欲望を理想と置いて考えるのが定めだろう。」

 「なら凄い娘持ってるんでどうです?我々も手に入れるのに苦労しましたよ。」

 そう言うと男は波瑠の画像を見せた。

 「な……こんな絵のような娘が実在するのか…。しかも未経験。野郎共は見る目が無いな。お前とは美味い酒が飲めそうだ。」

 「じゃ、案内します。」

 そして、男と山城は波瑠のいる部屋へと向かって行った。







 声が近づいてきている。他の人達は大丈夫かな?と不安に思いつつも、私はトラップの起動準備をした。僅かだったが静かなエンジン音がさっきまで聞こえていたため、辿り着いているのは確かだと思う。
 すると、客と思われる男が入って来た。何年ぶりかの演技の時間。







 山城は波瑠の部屋に入りそっと近づいた。小柄だが魅せるべき所はしっかりある彼女の寝顔は、思わず曇らせたくなる可愛らしさがあった。

 「ふふふ……。」

 山城は気色の悪い声で笑い、彼女の布団をめくった。その形相はまさに欲に飢えた獣だ。
 少しずつ接近してくる山城の気配に気づいたのか、波瑠は飛び起きた。



 「え?あ……。」

 私は全てを察した。部屋は密室であり、後ろは壁。逃げる事は出来ないけど、それでも私は本能的に恐怖を感じて、後ろに下がっていった。

 「グフフ。そんなに逃げなくても良いじゃぁないかぁ。おじさんがそんなに怖いかい?」

 どうやらロリコンみたいだ。全然ロリって年齢じゃないけど、童顔っぽさも相まってこの人にはそう見えるようだ。
 そしてどうやら私は壁に追い込まれてしまった。男の手が伸びる。

 「…や、やめて……!来ないでっ…!」

 「終わる頃には嬢ちゃんも虜になっているから、怖いのは最初だけ。」

 男が私に触れるほんの直前まで近づいた瞬間、横から脚が出てきて男は蹴り飛ばされた。そこに現れたのは……。

 「紫藤……さん…?」

 「遅くなってすまない。他の人達助けてたからな。何も言わず着いてきて。」

 「え?あ、うん!」

 私は紫藤さんの手に引っ張られるままに店の外へと誘導された。


 「クソッタレ!音階…。Mythologyか!」

 起き上がった山城はすぐに後を追った。







 外では山田組が気絶した状態で放り出されており、愁が縛っていた。

 「合流しました。」

 そこに愛沙が来た。

 「葉桜さん。気絶させた人は縛りました。運び出しましょう。」

 任務時以外ほとんど開かない口を開き、愁と愛沙は気絶した山田組を監獄行き自動車に詰め込んだ。







 「……ハッ!何が起きた!不快な音に包まれて気を失っていた。」

 誘拐犯の男は起きると、俺の銃口が頭部にゼロ距離で構えられていた。

 「なっ!白薔薇!」

 「山田組の連中は気絶で機能停止。起き上がった奴は爆ぜるのみ。お前はどうなりたい?」

 「チッ。XXX!」

 すると隣からナイフを持った男が飛び出して来たため、俺はもう一丁の銃で肺を殴った。

 「ガハッ!」

 「慈悲だ。次は撃つ。」

 二人の男は立ち上がり、武器を手に取り、敵意を見せてきた。交戦開始だ。







 俺は波瑠を他の人達もいる安全地帯に連れて行った。Mythologyは誰も着いていないが、運転手は戦闘も一応こなせるため、大丈夫だろう。
 俺は再び店の方に行こうとすると、波瑠が引き止めるように袖を掴んだ。

 「待って……!…どうして……?」

 「……詳しい話はまたいつか。俺にはもう一つやるべき事がある。大声じゃ言えないけど。」

 すると波瑠は手を離して小声で「ありがとう」と呟いた。
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