多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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Chapter Ⅲ:Friendship

No32.Obligations to be fulfilled

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 私達は絆が不在の中目的地に到着した。

 「莉緒菜一人で本当に大丈夫?」

 「僕に任せて。」

 「……分かった。気をつけてね。」

 私はスナイパーで撃ち降ろすために近くにあったビルへと走り、莉緒菜はサイレンス最新型のレーザー式ライフルを構えて遮蔽物に身を潜めた。







 「…柊の娘がいるな。全員で潰せ。」

 豪馬がそう指示すると、取り巻きの三十人弱の組員が一斉に射撃した。
 しかしグレネードが投げ込まれ、三分の一をダウンさせた。

 「ぐぁぁ!」 

 「これが最先端の技術か……。だが、生き残ったのは特に優秀な組員。この人数差なら白薔薇でも無い限りもつだろ。」

 そう口に零し、豪馬は人集りからこっそり抜けてビルの方に接近し始めた。







 私は良いポジションを確保し、狙撃を開始した。ここは中央なので左右から増援が来ることは明白。だからこそ、雪崩を防ぐためにこの安全圏から狙撃する。
 広告なども貼り出されており、射線は十分に切れる環境であった。

 「よーし。」

 スコープに目を覗き込ませ、私は次々と射止めていった。







 ひたすらに走り続けていた。状況確認のために本部に何度か連絡を試みたが、電波が妨害されているようだ。
 微かにサイレントグレネードの爆発音が聞こえる。つまりOrderが戦闘しているはずだ。しかし、どうなるかはわからない。歪達の戦闘音は別の方向から聞こえている。
 二人とも軟では無いとはいえ、相手はあの豪馬組だ。手段を厭わず無差別に打ち壊す。

 「………一方的な因縁になるが奴らは俺が真っ先に消さなければならない。似つかう悪魔が。」

 足を一切止めずに動かし、銃声が徐々に大きくなってくると、路地の横から従業員が飛び出して来た。そいつは怯えた様子でこちらを見ているが、俺は気にせず走る。しかし……。

 『ハロー紅月。』

 俺は思わず足を止めた。そのひび割れた声は、従業員の持つスピーカーから聞こえてきた。

 「あんたか。この騒動の黒幕は。」

 『実質的にはそうなるな。とは言え、俺は案を出しただけで、高みの見物してるけどな。』

 「俺を釣ったのもお前の策略か?」

 『いや、それは豪馬が頼んで来たから仲間のハッカーにお願いした。いいか紅月。Orderは意外にも影響力がある。対策されてんだよ。お前達を“確実に排除する”ために。』

 「……あっそ。今日は豪馬を帰らせないが、いつか必ずあんたを潰す。俺を狂わせた張本人がよ…。」

 『そ。じゃあ俺は聖薇にサプライズを仕掛けるのに忙しいから。じゃあな。
罪無き者と共に…。』

 無線が切れると、スピーカーを持っていた従業員がこちらに走ってきた。血眼だ。
 察した俺はすぐに地を蹴り、退散した。すると爆発が起き、従業員の亡き骸が現れた。自爆特攻だ。

 「……守れなかった。クソッタレが!匿名ぃ!豪馬ぁ!」

 俺は怒りを露わにし、戦場に急いだ。
 匿名…。それが奴の呼び名だ。しかし、どんな顔をしていて、何処に所属しているかは分からない。ただ一つ分かっているのは、この界隈において“最も非道な戦略家”であるという事だけだ。
 奴の手駒の一つ「豪馬組」。これは以前彩良が言っていた前兆の一つなのか。それとも奴の陰謀か。どちらにせよ、何か企んでいるのは確かだ。
 最深の注意を払って臨まなければならない。そんな窮地だ。







 「くっ……!」

 私は今縛られていた。後ろから銃口を突きつけられている。

 「高所にさえいれば良いと思った?俺達は山田みたいな脳筋軍団じゃない。頭で全部解決するんだよ。」

 「なんで撃たないの?今や政府と繋がる暗殺機構のエンフォーサーなんだよ?」

 しかし豪馬は何も言わなかった。目的が分からない事が一番の恐怖だ。それに、私が狙撃しなくなった事が影響しているのか、政府側が押され始めてきていた。
 莉緒菜も最初は殲滅出来ていたけど、援軍が次々と来て遮蔽物から顔を出せない状態になっていた。

 「己の無力さを実感するのは心苦しいだろう?俺が彼らに加担した最大の理由さ。見てるだけでどうしようもできない恐怖。俺は何度も破滅しかけた。……その感情を共有させるのが俺なりの報復だ。国に対してのな。」

 豪馬が飽きたと言わんばかりに引き金を引こうとしたその瞬間、彼の手に高速で飛んでくるナイフが刺さった。

 「うがっ!」

 私は彼の力が抜けてる内に縄を力尽くで解き、ビルを飛び降りた。
 すると、空中で身が軽くなった。

 「もぉー!遅いよ。…なんで助けてくれたの?まず莉緒菜の方をどうにかするべきだったと思うけ……」

 「仲間だからだ。あいつの方が恐らく長持ちする。」

 絆は私が言い終える前に横入りしてそう言った。
 彼は綺麗に着地して抱えていた私を降ろすと、三本のナイフを取り出して跳び上がり、約25m先にいる莉緒菜の潜む遮蔽物に一番近い組員に正確にナイフを投げて仕留めた。

 「流石はリーダー。ひずみんのライバルを自称するだけはある腕だよ…。」







 莉緒菜に群がっていた組員のヘイトが俺に向き、奴らは一斉に射撃してきたが、俺は乱雑に散らばる廃自動車やダンボールを遮蔽物にしながら、距離を詰めた。

 「月に食われろ。紅月…真昼を駆ける。」

 俺は奴らの銃弾を歪のように躱しながらナイフを振るった。
 気付けばそこに居た分は全滅していた。現在時刻は十五時。非常に長い道のりだった。

 「こっからは我々Orderの反撃タイムだ。全員まとめて掛かってこいや!」

 近くに落ちていたメガホンを手に取り、俺は天に向かって叫んだ。
 すると、先程怯ませた表向きの主犯がビルの階段からのそのそとこちらを睨みつけて降りてきた。

 「よくもやってくれましたね!しかしこれは消耗戦。何時間もお前が走っている間にも、お前達は数を減らし、我々の数が相対的に増えてるんだよ。」

 「承知の上だわ!……その上で自信しか無いんだ。やろうぜ豪馬。俺とお前の本気一騎討ちをさ…?」

 「いいだろう。乱入させようにもどうせ白薔薇共も流れてくるだろうしな。」

 軽い挨拶を終え、俺達は歩み寄りながら臨戦態勢を整え仕掛けた。

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