多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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Chapter Ⅲ:Friendship

No36.True bond

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 「……ん?」

 目が覚めると、俺は本部の待機室にいた。旋梨と絆が近くのソファーに座ってノートパソコンで何か調べていた。

 「あ、目覚めた。催眠剤を投与されていたぞ。後遺症は無いタイプの代物だったぞ。」

 「…そうか。」

 状況を把握し、俺は起き上がった。すると絆がパソコンを閉じ、こちらに近づいて、声を掛けてきた。

 「ちょっと良いか。」

 「ああ。」

 俺と絆はその場を後にし、屋上へと向かった。旋梨は仲間の元へ俺の生存を報告しにいったようだ。







 「ありがとう。あんたのお陰だ。」

 扉を開けると、絆はすぐにそう言った。

 「この前の件か?…俺は何もしてないさ。ただ個人の主観を話しただけ。出来ればで良いが、聞かせてくれないか?」

 そう質問すると、絆は過去について話してくれた。







 「なるほどな。それで本当の友情を疑ったと…。」

 「……そうだ。関わった人を俺の知らない間に殺める。だから、任務以外で関係を持ちたく無い。だから、普通の生活は送れなかった。ただ、気付いたんだ。とっくにもう一つの人格も吸収したんだと。神からの試練だったのかもな。」

 何はともあれ、彼の悩みが一つ解決して良かったと思う。しかし、今回の事件で謎は余計に深まった。

 「矢匿八…。Leviathan…。俺さ、昨日Leviathanと遭遇したんだよ。」

 そう言うと、絆は何か察したような面構えになったので、詳細を話した。







 「……正体不明の存在Leviathan。今回の件に確実に関与しているな。」

 俺と絆の話を照らし合わせてみても、豪馬組を陰で操っていたのは彼らだ。しかし、目的が分からない。彼らがこんな派手な事をするとは到底思えないからだ。
 だからこそ、幻の存在のようなチームだったのだ。

 「…これは司令に相談だな。個人で調べるには難し過ぎる。お前もフリーの間に壊れた物を修復する努力をしておけよ。…いや、もうしているか。」

 「了解。ライバルに恥じない人間に必ず返り咲く。」

 「……?まだ、お前は廃れていない。若くして退化することは思い込み。怪我だってそう。不治と思い込むのは辛い事だ。」

 「華隆先輩モードか。…口調真似ただけのオリジナルだった。」

 それだけ言い残して、絆は屋上を去って行った。



 「華隆さん……か。崇高な理想ではあるが、成り代わりたくは無いんだよな…。」

 彼に近づいている事を比喩される事は、嬉しくもあり、寂しくもある。
 その事や撫戯に言われた事が頭を渦巻き、複雑な心境である。
 そんな中、俺は日常に戻るべく帰路に着いた。







 俺は屋上を後にし、ある場所に向かっていた。そこは、俺が変わるきっかけをくれた場所でもある。

 「遅かったじゃん。何処で何していたの!」

 「悪い。」

 その場所には既に彩良と莉緒菜が居た。丁度日没時、Orderの結成が決まった日も確かこんな風景だった。







 サイレンスに加入後、しばらくの間はどこのチームにも属さずに裏方作業を行なっていたが、一ヶ月後に再編成が行われ、数合わせの下っ端からチームに昇格した。
 編成は司令と戦術家が強さや相性を見て独断で決めているらしい。特にこだわりが無かった俺は希望は出さず、上層部の決めた編成のチームでいく事となった。






 「今日から君達は一つのチームとして動いてもらう。チーム名は…自分らで決めてくれ。では……。」
 
 司令室を後にして、俺は本部から少しした所にある川沿いに座った。
 日没の最中だ。ビルの隙間から差し込む夕日が、何かをフラッシュバックさせようとしている気がした。

 「はぁ……また同じ結末になるのかな……。」

 「何黄昏れてるの?」

 つい心の内を声に出していると、不思議そうに見つめる彩良と目を合わせようとしない莉緒菜が隣に座ってきた。

 「いやぁ、ハーレムだね!二人の美少女に対して男君一人じゃん!」

 「からかうな。後、自己評価高すぎ。少しは謙遜しろ。」

 「細かい事はいいのー。…私は石川彩良。狙撃手だよ!君は?」

 「励領絆。近接戦闘型。で、隣は?」

 「僕は柊莉緒菜。司令の娘です。」

 「皆よろしくねー!…絆リーダーね。」

 「は?待て。誰も了承していな……」

 「毒舌君は統率むいてるんじゃない?確か秩序がどうとか試験で言ってなかった?」

 何故ばれた?答えは簡単。莉緒菜が流したからだ。

 「仕方無い。Orderの統率者に任された。」

 「え?それがチーム名のつもり?」

 「……捻りがない。」

 根性ねじ曲がってやがる。リーダーに勝手に指名してこの仕打ちだ。…だが、この時から月食は死滅していたのかもしれない。自覚は無かったが、その現れが血に染まる食われた月「紅月」だった。







 「……懐かしいな。この景色。」

 「何黄昏れてるの?うちのリーダーはいっつも似合わない発言を!」

 「おい。」

 「皆一緒だよ。これからも…。」

 「莉緒菜の言う通り!誰も欠けさせない。この混沌の中で奇跡を起こすよ!」

 フラグを建てる二人であったが、俺は彼女らを守らなくてはならない。これまで失った仲間の分まで、今の友情「絆」を大切にしなければならないから……。



Episode「Kizuna」Fin

 
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