多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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Chapter Ⅳ:Stealth

No50.Wave of evidence

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 マネージャーは明らかに何か言いたそうな表情を浮かべた。そりゃそうだ。俺が彼らと関連した人物かなんて、外部からは分からない。少なくとも、何らかの繋がりがある事は察していると思うが。

 「これは我々の問題だ。部外者は引っ込んでろ!」

 「確かにそうだ。ただ、そう言い切れるか?弱み……握ってるかもだぞ。」

 ほのめかすようにそう言う。実際、俺も何の理由も無しにわざわざ別界隈に手を出すような奴じゃない。
 正当な理由と、確かな証拠で俺はこいつを敵と判断したのだ。
 後方に居る三人は孤立した所から Everyone's treasureの方へ移動している。撫戯の察しが良くて助かった。さっきの鈍感具合はどうにかしてほしいものだがな。

 「ほら、高校生と本気の口論しよう。手を出したら負けな……。」

 俺がそう提案すると、マネージャーは拳の力を緩め、警備隊も大人しくなった。多分、傍から見ると俺は今ただならぬ雰囲気を醸し出しているのだろう。

 「先に謝る。タメ口で喋る。その方が、お互い話しやすいんじゃないか。」

 「……同感だ。」

 「それと、見せられる物は全て見せる。偽造かどうかはそこの進行役が判断する。それでいいな?」

 「構わない。」

 「わ、分かりました。」

 巻き込んでしまってすまないとは思っているが、これでルールは完成した。
 金持ち相手に権力でやり合っても確実に都合の良いように改変してくるはずだ。そして相手は暗殺者では無い。
 つまり殺すのは絶対駄目だ。

 「まず、どのような過程で Everyone's treasureのマネージャーに任命されたか話してほしい。」

 「私のマネージメント能力を本社から買われた。それだけの話だ。」

 「……経歴は。」

 「難関大学卒業後、芸能界に進出した。それから修行を積んで今に至る。」

 「……何でその道を志し……」

 「さっきから質問攻めばかりじゃないか!これは討論でも口論でも無い。拷問だ。」

 「それは大変失礼。何か物申したいならどうぞ。」

 そう言って遠回しに挑発する。別にこいつに俺を殴らせて勝つつもりはない。事実証明になるデータを自ら出させるためだ。

 「大体、貴様は何者だ!うちの恋音に寄って集る身の程知らず共のを味方する謎の男か、私かなら、世間は私に味方する。世間を制した者こそが、最終的に勝つのだ!」

 こいつが言うと説得力が半端じゃない。逆の意味でだ。
 そろそろ良い具合に暖まったし、頃合いだろう。

 「愁、持ってきな。」

 そう言うと、愁はノートパソコンとUSBを取り出した。反撃開始だ。

 「この映像は、俺が種田さんからお借りしたもの。」

 再生する。そこにはマネージャーが居酒屋で酔っていた時の会話の一部始終が録画されていた。
 
 「なっ!」

 彼は唐突に焦りを浮かべた。そりゃそうだ。その内容は、“秘密裏に金を払ったファンに隠し撮りを提供していた事や、彼女らを実質的な隔離状態にしていた事”を自白しているのだから。

 「こ、こんなのハ、ハッタリだ!」

 そう弁解しようとするが、目が泳ぎまくっている。素人でも嘘だと分かるが、念のため追い打ちをかける。

 「進行役の人……三並さんでしたっけ?心辺りはありますか?」

 「はい。何かあまりにも仕事量が労働基準法に反していると思う時期がありました。トップアイドルだからと割り切っていましたが、流石にヒートアップし過ぎでした。加えて、恋音ちゃんのストーカー被害が激しく、個人情報特定されているとしか思えません。彼女はそんな口軽じゃないですからね。」

 「提供ありがとう。マネージャーさん?反論はありますか?」

 「くっ……しかし、そこの奴の味方をする理由にならない!これが事実だったとしても、彼の行いも事実だ!」

 「そうですよ。撫戯の行いも事実です。ですが……いや、もうカミングアウトしましょうか。俺はお前の“本当”の経歴を知っている。」

 このマネージャーは難関大学卒なんかでは全然無い。羽崎が珍しく役に立った。







 「Everyone's treasureのマネージャーについて知っていますよね?羽崎さん。」

 撫戯が逮捕された後日、俺は羽崎さんにそう質問した。
 羽崎さんは酔うとよく若い頃の話をしだす。その時に、マネージャーの名前を聞いたことがあるのだ。介法のためにわざわざ付き合わされていた事はウザいが、まさか利点になるとは思わなかった。

 「ああ。あいつは俺のクラスメイトだった。自己中心的な性格で、面食い。それでいてカーストカーストうるさい厄介者だったよ。でもどうして急に?」

 「いえ、何でも無いです。ありがとうございました。」







 この会話の録音を聞かせた。

 「ぎ、偽造じゃないのか!」

 「話は最後まで聞け。ここで手掛かりを掴んだ俺は実際に羽崎さんの母校に出向いた。……落ちたんですよね。そして念のため貴方が志望していた大学にも事実確認を行いました。……有名大学に賄賂とは良い度胸だよ。悪い意味で。」

 もう十分な位奴を追い詰めたが、これでも満足できない程には提示出来る情報は持っている。

 「クッ!貴様は一体何が目的だ!」

 「単純かつ清純。そして不純な動機ですよ。……撫戯が一切腐らない方法で代わって復讐すること。彼は俺に明るい世界を見せてくれた。そんな彼をまた闇に戻すわけにはいかない。それだけだ。」

 遂にマネージャーは膝を着いた。彼のライフは流石にゼロだろう。
 俺は彼の前に立ち、見下すような位置で言い放った。

 「この件は本社に報告させてもらう。メディアには黙っといてやるから、大人しく去りな。それか更生しろ。」

 「……私がいなくなれば彼女らがどうなるか分かってるのか!」

 「もっと適任が居ます。少なくとも、俺の知る中なら一番知識があって、一番人の事を考えられる人が……。種田さん。貴方なら経験が浅いながらも優秀だと評判が良いですよね。」

 そう言って視線を向けると、彼は静かに頷いた。

 「もう心配は無いな。後はサイレンスで片付ける。一応、テロリストの動機に関連したって事で。」

 予め待機していた愁が縄でマネージャーを縛り付けた。警備隊も理解した上でやっているようなので、縛った。
 サイレンスの増援が来て、彼らを乗せて拠点にへと向かって行った。
 これで本当に解決だ。







 
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