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Chapter Ⅳ:Stealth
No59.Target
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底沼はグレネードを上に投げ、上空で爆ぜて看板やガラスなどが降り注いだ。
自分はハンティングライフルを構え、自分達の真上に落ちる物体を撃ち抜いた。
不愉快な音が鳴り、周りに遮蔽物が出来る。一瞬にして渋谷のある一角は廃墟のようになっていた。
「……ありえない!」
夕憧はそう言ってクロスボウを構える。この男が相当冷酷という事を改めて認識させられた。
「は……これで心置き無くやれる。底沼!……その息の根………絶対止めてやる…。」
「やれるものならやってみな。」
刹那、瓦礫の上に立つ底沼は遮蔽物に潜伏を始めた。
夕憧はクロスボウを放物線を描くような射線になるようにして矢を放った。矢の先端には催眠瓶が取り付けられている。
しかし、矢は届いたが、肝心の瓶は銃声と共に着弾前に割れた。ピンポイントで撃ち抜かれたようだ。
「嘘?!……なんてエイム力…。」
「お返しだよ。翠光…。」
遮蔽物横からグレネードが三つ投げ込まれる。自分はすぐにポジションを移動し、ハンティングライフルの尖端で突いて軌道を変え、撃ち抜いた。
だが、相手は甘くは無かった。底沼から目を離しているその間、彼はポジションを変えていた。
槍型に切り替えて瓦礫を跳び箱のように飛び越えて襲撃しようとしたが、その場所には勿論もう居ない。
「あのさ、命狙われてる自覚ある?……余所見しすぎな。」
左斜め裏から銃を構えた音が聞こえた。刹那、発砲されたが、事前に来る事は予測出来ていたので、すぐに射線を切れた。
発砲直後の隙を突き、潜伏していた愛沙先輩が飛び出して発砲するが、底沼は壁に向かって走り出し、壁を蹴って空中で軸を合わせながら、発砲した。
「ああっ!」
急な攻撃で愛沙先輩も対応できず、左腕から血が流れていた。
彼女が反射的に躱そうとした事と、底沼の軸合わせが合わなかったため腕を負傷しただけで済んだが、噛み合わなかったら首に直撃だっただろう。
「……先輩をよくも!」
「……ッチ。」
自分も狙撃で援護するが、底沼はあの着地後の状況にも関わらず、落ちていた鉄板で心臓が撃ち抜かれるのを防いだ。
「貫通しない……。」
中距離型とはいえ、ボルトアクション式は並大抵の金属では受からない。
恐らく先を見越して、戦闘道具を瓦礫に隠して撒いていたのだろう。
判断力も立ち回りもエイム力も一級品のこの男に、最早絶望しか感じない。
「今のは結構危なかったよ。ただ、その程度では僕の心臓を止められない。どうする?Mythology……。」
文字通りの悪魔だ。
次々と敵を薙ぎ倒し、先へ先へと進んでいた。そこら中に設置されたオートタレットが、我々を待ち構えるように射線を置いている。
恐らくシステムをハッキングして操作している。つまり、ハッカーはこちらを直接消しに来ている。
「焦ってるな?…余裕が無くなってきたんじゃないか。」
二丁拳銃で目の前のタレットを破壊して監視カメラに対してそう言い放つと、スピーカーの電源が付いた。
『関東では楽に成果を得られなかった。お前達にも集中しないといけなかったお陰でな…。……早急にこの世から去ってもらう。白薔薇、音階、虚霧。』
「追跡だっけな?悪いが、俺達もただで死ぬ気は無いもんでね。な?歪、愁。打倒Leviathanだわ!」
「勝手に含めないで。」
地味に波長が合わない。だが、志しとチームワークは、何一つ変わる事が無い。
相手がどんな手法を使おうが、俺達の“力”の前には無力だって証明してみせる。殺さない、殺す以外の選択が出来る場合がある俺達にとって、強敵一人撃破くらいなら、粘ればいける。
『好きにすればいい。その行動、後悔させてあげるから。』
スピーカーの電源が切れ、タレットが一斉にこちらを向き、赤外線センサーが一気に張り巡らされた。
彼の本気のセキュリティシステムが作動したようだ。
「旋梨。」
「機械に対してか?あまり舐めるなよ?俺は常日頃から開発にも勤しんでるんだよ!」
球体型の機械を取り出して赤外線センサーに投げつけると、警報音が鳴り響くが、すぐに鳴り止んでセンサーは消えた。
彼が投げたのは電子基盤を一時的に機能停止にする周波を発生させるボム。
開発しているとは小耳に挟んでいたが、もう完成しているとは思っていなかった。
ただ、これで攻略難易度は低下。奴の元に消耗を抑えて直行できる。
「乗り切るぞ!前進!」
敵の補給はだんだん遅くなっていた。もう動員できる人が僅かなのだろう。
「そろそろ素顔明かしなよ。矢匿…!」
長い廊下の角。そこからずっと面識はあるはずなのに、未だに直接顔を合わせていないあの“元凶”が姿を現した。
「……あんたが矢匿八。通称匿名か…。この前はよくも騙してくれたな。」
「お久しぶり……でもあり初めまして。矢匿八。Leviathanの戦略家。」
「ああそうか。……あんたには話したい事が山程あるんだが、何から喋ってくれる。」
「……残念だが、真相を明かす気は無い。一生曇ってろ。紅月。」
そう言って奴はショットガンを取り出した。最初からその気だが、交戦するしか無さそうだ。
「半殺しで無理矢理にでも話させてやる……。やっと見つけた悪魔!」
俺はナイフを取り出し、応戦体制に入った。莉緒菜も援護射撃の構えを取っており、彩良は邪魔にならない場所に潜伏している。
遂に奴に辿り着いた。この勝負、敗北は許されない。
自分はハンティングライフルを構え、自分達の真上に落ちる物体を撃ち抜いた。
不愉快な音が鳴り、周りに遮蔽物が出来る。一瞬にして渋谷のある一角は廃墟のようになっていた。
「……ありえない!」
夕憧はそう言ってクロスボウを構える。この男が相当冷酷という事を改めて認識させられた。
「は……これで心置き無くやれる。底沼!……その息の根………絶対止めてやる…。」
「やれるものならやってみな。」
刹那、瓦礫の上に立つ底沼は遮蔽物に潜伏を始めた。
夕憧はクロスボウを放物線を描くような射線になるようにして矢を放った。矢の先端には催眠瓶が取り付けられている。
しかし、矢は届いたが、肝心の瓶は銃声と共に着弾前に割れた。ピンポイントで撃ち抜かれたようだ。
「嘘?!……なんてエイム力…。」
「お返しだよ。翠光…。」
遮蔽物横からグレネードが三つ投げ込まれる。自分はすぐにポジションを移動し、ハンティングライフルの尖端で突いて軌道を変え、撃ち抜いた。
だが、相手は甘くは無かった。底沼から目を離しているその間、彼はポジションを変えていた。
槍型に切り替えて瓦礫を跳び箱のように飛び越えて襲撃しようとしたが、その場所には勿論もう居ない。
「あのさ、命狙われてる自覚ある?……余所見しすぎな。」
左斜め裏から銃を構えた音が聞こえた。刹那、発砲されたが、事前に来る事は予測出来ていたので、すぐに射線を切れた。
発砲直後の隙を突き、潜伏していた愛沙先輩が飛び出して発砲するが、底沼は壁に向かって走り出し、壁を蹴って空中で軸を合わせながら、発砲した。
「ああっ!」
急な攻撃で愛沙先輩も対応できず、左腕から血が流れていた。
彼女が反射的に躱そうとした事と、底沼の軸合わせが合わなかったため腕を負傷しただけで済んだが、噛み合わなかったら首に直撃だっただろう。
「……先輩をよくも!」
「……ッチ。」
自分も狙撃で援護するが、底沼はあの着地後の状況にも関わらず、落ちていた鉄板で心臓が撃ち抜かれるのを防いだ。
「貫通しない……。」
中距離型とはいえ、ボルトアクション式は並大抵の金属では受からない。
恐らく先を見越して、戦闘道具を瓦礫に隠して撒いていたのだろう。
判断力も立ち回りもエイム力も一級品のこの男に、最早絶望しか感じない。
「今のは結構危なかったよ。ただ、その程度では僕の心臓を止められない。どうする?Mythology……。」
文字通りの悪魔だ。
次々と敵を薙ぎ倒し、先へ先へと進んでいた。そこら中に設置されたオートタレットが、我々を待ち構えるように射線を置いている。
恐らくシステムをハッキングして操作している。つまり、ハッカーはこちらを直接消しに来ている。
「焦ってるな?…余裕が無くなってきたんじゃないか。」
二丁拳銃で目の前のタレットを破壊して監視カメラに対してそう言い放つと、スピーカーの電源が付いた。
『関東では楽に成果を得られなかった。お前達にも集中しないといけなかったお陰でな…。……早急にこの世から去ってもらう。白薔薇、音階、虚霧。』
「追跡だっけな?悪いが、俺達もただで死ぬ気は無いもんでね。な?歪、愁。打倒Leviathanだわ!」
「勝手に含めないで。」
地味に波長が合わない。だが、志しとチームワークは、何一つ変わる事が無い。
相手がどんな手法を使おうが、俺達の“力”の前には無力だって証明してみせる。殺さない、殺す以外の選択が出来る場合がある俺達にとって、強敵一人撃破くらいなら、粘ればいける。
『好きにすればいい。その行動、後悔させてあげるから。』
スピーカーの電源が切れ、タレットが一斉にこちらを向き、赤外線センサーが一気に張り巡らされた。
彼の本気のセキュリティシステムが作動したようだ。
「旋梨。」
「機械に対してか?あまり舐めるなよ?俺は常日頃から開発にも勤しんでるんだよ!」
球体型の機械を取り出して赤外線センサーに投げつけると、警報音が鳴り響くが、すぐに鳴り止んでセンサーは消えた。
彼が投げたのは電子基盤を一時的に機能停止にする周波を発生させるボム。
開発しているとは小耳に挟んでいたが、もう完成しているとは思っていなかった。
ただ、これで攻略難易度は低下。奴の元に消耗を抑えて直行できる。
「乗り切るぞ!前進!」
敵の補給はだんだん遅くなっていた。もう動員できる人が僅かなのだろう。
「そろそろ素顔明かしなよ。矢匿…!」
長い廊下の角。そこからずっと面識はあるはずなのに、未だに直接顔を合わせていないあの“元凶”が姿を現した。
「……あんたが矢匿八。通称匿名か…。この前はよくも騙してくれたな。」
「お久しぶり……でもあり初めまして。矢匿八。Leviathanの戦略家。」
「ああそうか。……あんたには話したい事が山程あるんだが、何から喋ってくれる。」
「……残念だが、真相を明かす気は無い。一生曇ってろ。紅月。」
そう言って奴はショットガンを取り出した。最初からその気だが、交戦するしか無さそうだ。
「半殺しで無理矢理にでも話させてやる……。やっと見つけた悪魔!」
俺はナイフを取り出し、応戦体制に入った。莉緒菜も援護射撃の構えを取っており、彩良は邪魔にならない場所に潜伏している。
遂に奴に辿り着いた。この勝負、敗北は許されない。
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