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ChapterⅥ:Signpost

No83.Pros and cons of each

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 任務を引き受けて四日が経過した。Cosmosの進展は未だに無い。いや、これから一気に動くだろう。

 「見て薔羨。」

 射撃訓練をしていると、慈穏はそう言って手招きしてきた。

 「な………だが、好都合だ。計算して居場所を特定できるぞ。」

 彼のスマホに映し出されていたのは、失踪事件に関する記事だ。真似かもしれないが、手口の特徴がCosmosと一致している。
 仮にCosmosでなかったとしても、捕縛して本部に送るだけだ。どちらにせよ、犯罪行為だから。

 「仮説を立てるなら要だな。緊急招集を掛けようか。」







 二時間後、本部に要と月歌が到着した。
 早速慈穏は記事と、調べてきた発生位置、時刻を資料にまとめて、彼に見せた。

 「夕暮れ時を狙っているようだね。日が沈みきる前、そして未成年中心……やっぱりCosmosで間違い無さそう。」

 「要もそう思うよな。お前の事だ、資料見ながら仮説も立っているんだろ?」

 要の思考を読み取る力は異常に近い。心理学者を志した過去があるだけあって、慈穏からも俺からも絶大な信頼がある。(勿論Enter全員信頼はあるが。)

 「勿論。発生位置、時刻から東に活動域がずれている事が分かる。さて、問題。ここから更に動いて南に動いた場合の目的は?月歌。」

 「学校だね……。」

 「そう。学校だ。しかも小、中、高と固まっていて、大きい図書館もある。複雑な道故、潜伏場所も多い。……目的は分からないが、傾向的に餌場にはなるだろうよ。これを踏まえて慈穏はどう動く気?」

 「そこを見張る……って言いたいけど、Enterだけでは人手が足りないし、サイレンス全体を動かすとバレて避けられそう。現実味が無いかな……。」

 それが当然の反応だろう。ただ、俺はこいつの解決策を既に理解した。

 「つまり視野が広ければ良いわけだろ。黄牙なら開発しているはずだ。“レーダー”を。」

 「流石は薔羨。慈穏、これで計画を立てる材料は揃ったでしょ?」

 「ああ。ありがとう。明日、全員を招集してまとめたものを提示する。」

 「分かった。また迷った時は呼べよー。」

 軽いフットワークでそう言って、要は来た道を引き返して行った。

 「あ!置いて行かないでー!」

 それを追うように、月歌も来た道を引き返して行った。
 残された俺達は会議室に入り、適当に荷物を広げた。







 「たまには薔羨が計画を組み立ててみない?」

 突然、慈穏がそんな事を言い出した。

 「おいおい。こんな難任務の計画を素人に任せる奴が何処にいる。これはリーダーであるお前がすべき事じゃないか。」

 「俺は何回も計画を立てている。だけど、結局当初の通りにはいっていない。」

 「最初から完璧なんてあるはずがないだろう。機転を効かせて順応する。それだからこその達成率であって……ん?」

 言いかけた時、俺は気が付いた。葵の事細かな戦況報告を取り入れて、動きながら指示を促しているのが誰か。

 「なるほど……。分かった。任せろ。」

 「任せたよ。俺は久々で鈍ってそうな身体を動かしてくるから。」

 そう言い残して、慈穏は射撃演習場に向かった。
 彼の言いたい事を要約すると、“最短で特定できる計画を設計しろ。”だろう。
 失踪した人の安否が確認出来ていない以上、一秒でも早く動きたいが、彼の考案だと時間が掛かる可能性があるため、俺に任せたのが有力だ。
 彼は俺ほど身体を動かしていないため、大仕事の前に時間が欲しかったのだろう。
 サイレンス最強の男、華隆慈穏。二番手の俺とは純粋な実力では差があるが、それぞれの分野に得意不得意があるため、チーム全体が活きる。
 誰が欠けても本来の実力が発揮できない。それがEnterの綺麗なバランスだ。
 対等である事。それが成長に直結すると考えている。







 後日、メンバー全員が揃い、改めて計画の確認を始めた。

 「揃ったね。じゃあ薔羨。よろしく。」

 そう慈穏に振られたので、俺は口を開いた。

 「俺と慈穏、葵は中心部に位置する図書館で待機。要と月歌でレーダーで人体信号を確認しながら見廻る。Cosmosは束で動くため、見落としが減るだろう。黄牙は本部で待機し、信号が届いたら座標を愛沙に送る。愛沙は座標の位置に移動し、周辺の確認。何かあったら図書館待機組に連絡して。」

 「私が座標の位置に行く理由はヘイト集めって事?」

 「そうだ。得意分野だろ。どうせすぐ助けに行くとはいえ、被害は未然に防ぐべきだ。」

 「俺を信号確認係にした意図は。」

 「お前の情報管理能力なら、他のカメラの情報も漁って、より絞れるだろう。愛沙の無駄な体力消費を抑えるためだ。」

 それからも役割の存在意義と、補足説明をして、全員が完全に把握した。



 「お前に任せて良かった薔羨。お前には劣るよ……。」

 「なこと無い。総合すると俺の方がお前に負けている。ただお前は対等だと言ってくれた。その理由は何故だったか。」

 「得意不得意ね。言うようになったな。」

 「はいはい。」

 冗談を言い合える仲。大仕事を直前にしても、こういう雰囲気でいられ、やる時は本気で熟す。
 これもまたEnterが最強たる所以だったのだろう。

 「決行は今日だ。各準備を始めるぞ。」

 そうして俺達は各々動き始めた。
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