多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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ChapterⅥ:Signpost

No96.Hesitation

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 旋梨から連絡がきた。

 『黄金のネックレスの男を追う。お前も来い。』と。その直後、座標が送られてきたので、その場所に向かった。







 愁に座標を送って二十分後、彼は到着した。

 「メンバー全体に送信しないってことは、私的?」

 「まぁな。ただ、もしかしたら暗黒政府が絡んでいる可能性もゼロでは無い。確実性が無い中、まとまって動くと怪しいだろ?……愁はライブジャックの被害を陰で抑えていた。裏方得意だよな。」

 「把握。で、何をすればいい。」

 「捜索の手伝いと、場を整えること。話し合いがメインになると思うから、周囲の細かい警戒をお願いしたい。」

 そう言うと、彼は頷いた。
 俺達は手始めに、先日愁が目撃した場所に向かった。







 住宅街。金屋は、Mythologyの活動範囲を絞るために、黒服達に聞き込みをさせていた。
 彼はネックレスを手に取り、呟いた。

 「……何故、世界はこうも両極端なのか。」

 上の空な様子の中、一人で黒服が戻って来た。

 「音階、虚霧と思わしき人物を発見しました。」

 「やっとか。……これで皆救われるぞ。周囲の連中に路地裏に誘い込むように指示しろ。………人質、取れるか?多分高校周りにおる。」 

 心苦しそうにそう言って、彼らはある場所に向かった。







 道中で明らかに不審な黒服を見つけ、俺達は追っていた。だが、どうにも誘い込まれてる気がする。とはいえ、ここを嵌まったフリで押し通す。そのために愁が潜伏しながら追っているんだ。
 ある程度のところまで行くと案の定、包丁が投げられた。しかし、気にせず回避し、先に行った。

 「はじめまして音階。」

 「天守閣……。」

 「あ?知ってんのか。かつてのコードネームではあるけどな。」

 黄金のネックレスの男金屋岳が、奥で待ち構えていた。その手には、斧が握られ、腰には火炎瓶がぶら下がっていた。

 「岳、お前は何故俺を狙っている?波瑠を精神的に追い詰めたの……お前だろ。」

 「はぁ?彼女には多少の恨みはあるが、事実を伝えただけ。その後は何もしていない。」

 信用に値するかは分からない。ただ、話が通用しそうな雰囲気では無い。

 「もう一度聞く。お前は何故……」

 「Hadesの役目だからってのは理由にならないか?邪魔者は全員排除と命令が下っているのでね。ほら、ショータイム。」

 すると、黒服が足を揃えて行進してきた。その手にはライフルが握られており、一部の連中は、縄を持っていた。
 その縄には、何人かの同級生が催眠状態で縛られていた。

 「あぁ……人質とか取ってくる奴なのか。……嫌いだな。そのスタイル。」

 「俺だって嫌いだ。」

 彼は一瞬複雑な表情を浮かべたが、すぐに笑い始めた。
 やはり、何か様子がおかしい。全ての動作に、迷いが見られる。なので、揺さぶりをかけてみる事にした。

 「Uroborosってチーム知っているか?」

 「柊と羽崎の………いいや、聞いた事も無い野郎だ。」

 「柊司令は清心に殺された。あいつはドローンをコントローラー無しで操れる能力を持っているんだな。」

 「お前知らないのか?蝙蝠とかいう引き籠もりが遠隔で管理してるって……あっ。」

 案外簡単に自白した。こいつは別に生命再起会の幹部格では無い。そうでなければ、秘密事項をそう安々と割る事はないだろう。
 そして、羽崎さんの言う通り執念が垣間見える。消息不明のKerberosを捨て、Hadesに居るのには確実に訳がある。

 「やっぱりな……。何か、背負ってるだろ?」

 そう言うと、彼は斧をこちらに向けてきた。そして睨みつけて口を開いた。

 「俺が背負ってるのは生命再起会の看板のみ。よりよい社会の実現のために、上層の命令に従うのだ。」

 「お前達の掲げるよりよい社会というのは、クローンを量産し、日本国民の歴史をリスタートさせる事か。その過程で、何人欠けても構わないという事か。」

 すると、一瞬歯を食いしばり、斧を人質の首に当たるか当たらないかのギリギリに近づけた。

 「口を止めなきゃ殺るぞ。」

 「必ずしも奴らに付いて行けば、よりよい社会が保障されるのか。」

 「おい、本当に……」

 「どうして、“Kerberos”の名誉より生命再起会を優先するのか。」

 「黙れェェ!」

 そう叫び、岳は斧を降ろした。
 そして、手を上に掲げると、黒服達は一斉に射撃してきたが、俺はそれを回避した。
 すると、ミストが展開され、俺はその中で黒服達を蹴りで気絶させた。
 ミストが晴れ、俺は岳の目の前に立った。

 「俺はあそこまで条件を破ったのに、お前は人質を殺そうとする素振りを見せない……ってよりは、恐れてる。……救えるかどうかなんて分からない。ただ、真相が知りたい。」

 すると、岳は斧を地面に落とし、膝を地面に着けた。

 「こんな精神状態じゃ俺が負ける。話してやる。奴らの凶悪さと、俺に起こった出来事を。」
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