多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

文字の大きさ
105 / 150
ChapterⅦ:Candle

No105.Brilliant talent

しおりを挟む
 再び故郷に帰還して数日。どうやら火災が連発しているようだ。しかし、仲間からその類の情報は入っていない。
 すると、聖薇先輩から連絡がきた。

 『進展があった。今すぐ会えるか?』

 「はい。」

 『夕憧も連れて渋谷駅で。』

 そうして電話が切れた。夕憧の部屋をノックした。すると、彼女は出てきた。

 「聖薇先輩からお呼びが。行くよ。」

 「分かった。」   

 支度が済んだ自分達は、徒歩で渋谷駅へ向かった。







 渋谷駅で五分ほど待っていると、彼らが到着した。

 「お待たせしました。」

 「全然。……さて、場所を移そうか。前線基地に案内する。」

 二人を連れて、前線基地に戻った。







 「けっこう広いですね。」

 「プレデスタンスは経済的にも余裕があるらしいな。」

 サイレンスは三代目に入り、緊急で本部も移したため、資金がギリギリだ。とは言え、サイレンスの支部的な扱いでプレデスタンスの傘下となっているため、そこまでピンチでは無い。
 統合したといっても過言では無いだろう。

 「それで、要件というのは……。」

 夕憧がそう声を出したので、俺は要さんの言っていた燈花についてと、彼らの学校が狙われるかもしれない事を説明した。



 「それは少し心配ね。」

 「少しなのか?」

 「私達だけでどうこうする訳じゃないし、八人も主戦力がいればそこまで……」

 「今回、旋梨と愁は参戦出来ないぞ。」

 夕憧が言いかけた時、撫戯がそう割り込んできた。

 「え?何故?」

 思わず俺はよくわからないテンションで返す。

 「別件だとよ。東京外へ行っているから、すぐには帰れない。そして、正六角形が完成した今、タイムリミットは少ない。」

 「六人か……。」

 相手が燈花だけとは限らないし、救助も一応任務対象内だ。心許無い人数だ。
 俺達も日々強くはなっているが、実践してないので通用するかは別問題であり、尚且つ失敗が許されない任務になる事が予想される。
 
 「それで、何か対策はした方がいいんです?日時までは流石に分かりませんよね。」

 「放課後だね。」

 夜空が質問を投げかけると、丁度帰ってきた要さんがそう答えた。

 「何故分かるんですか?」

 「過去三回が、日中だった。下校寸前の時間だったよ。一番混乱させやすいんだろう。対策に関しては特に必要無い。時間帯は予想出来ても、結局はゲリラだ。手遅れなくらい火が広がる前に、誰かに連絡して。こっちはいつまで駆けつける準備をしておくから。」

 「分かりました。聖薇先輩に連絡します。」

 「了解。いつでもスタンバっとく。」

 「まぁ場所も言わば傾向だからね。外れる可能性だってある。ただ一つ教えておくよ。……俺のコードネームは透念。見透かしのプロフェッショナルだ。」

 そう言って、要さんは階段を上がっていった。

 「要は本当に何でも分かっちゃうから!あんまり心配し過ぎないで、肩を軽くね。でも、油断は禁物だよ。」

 月歌さんもそう言って、階段を上がっていった。
 不思議な人達だ。華隆さんや兄上にとって大事な仲間。彼らの本質は、素人目じゃ見抜けない。

 「自分達はこの辺で失礼します。忠告ありがとうございました。」

 「先輩方。また会いましょう。」

 そう言い残して、凍白姉弟は帰路に着いた。

 「撫戯、世の中凄い人ばかりだ。お前も含めて。」

 ふとそう思い、気づけばそう口にしていた。すると彼は答える。

 「歪も十分にその仲間だ。挫折を知らない。例え記憶が消されようが、執念で完全には消えなかった男じゃねぇか?」

 「はは……そうだったな。……撫戯。お前はたった一人で守り続けた。そして、俺に知らない世界を見せてくれた。感謝してる。」

 「遺言か?……まだ死ぬのは早ぇよ。大切な人、取り返していないし、問題も全然解決していない。希望を勝ち取った後が、最高の墓場だろ?」

 「そうだな。まだ何も果たせていない。」

 そう覚悟を決め直し、俺達もそれぞれの自室に戻った。







 最近、全然夜空君と話せていない。あからさまでは無いけど、少し冷たくなった気がする。
 私だけへの対応じゃないから、嫌われた訳では無さそうだけど、少し不安になってしまう。
 無意識に忘れようとしていたけど、私失恋しているんだった。お姉ちゃんも行方不明になっているし、私の心の拠り所はすっかり無くなっている。

 「はぁ…人生、上手く行かないよ。」

 ため息を溢し、屋上から景色を眺めていると、何やら人集りが目に入った。
 何だろうと思って目を凝らしたけど、その人達は何処に行ってしまった。
 校外を一周していたようだけど、何だったんだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...