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ChapterⅦ:Candle
No111.This just can not be thrown away
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月歌の学校の学園祭に招待された日。今思えば、生命再起会は当時から暗躍していた。明らかに放火とみられる火災の発生。何を血迷ったか、俺は校舎内に取り残された月歌を捜しに、戻ってしまった。
「月歌…!月歌!」
「ッ!要!」
二階階段の踊り場付近で、月歌と合流できた。火が燃え滾っており、降りるのは困難だった。
俺は屈んで手を差し出す。
「俺が担ぐ。」
「え…でも……。」
「いいから。離さないためにも……頼む。」
「……分かった。」
そうして月歌を抱っこし、火の中を突き進んだ。
火花が足元で飛び散る。床も崩れそうだった。俺は月歌の案内の元、玄関に向けて走っていった。
しかし、奴は現れた。
「まだ生徒の避難が済んでいなかったかぁ!……ここの生徒ではないな。そんなのどうでもいいが。」
火炎瓶を持った男。俺はそいつに得体の知れなさを感じた。狂気を感じた。
ゆっくり迫りくる奴に、背後から火が押し寄せる状況に、俺は戦慄するしかなかった。
正直、諦めていたのかもしれない。
「弱者がいっちょ前に戻ってくんなよ。おら。死ねぇ!」
そして、銃声がした。しかし、感覚は消えない。閉じた目を開くと、目の前に一人の男が背を向けて立っていた。銃痕は、その男が持つ鉄板にあった。
背を向けた男が言った。
「早く逃げろ。死にたくなければ。」
そう言うと、男はリボルバーを取り出し、跳躍して火炎瓶の男に発砲した。
「三度目の正直。そろそろ因縁を断ち切るとするか。対魂!」
「こっちのセリフだ。学校襲撃も、どんどんこちらの仕事が増える手段取りやがって。蓬莱が黙ってられないじゃないか。」
その後も、激しい銃撃戦が目の前で展開されていた。
逃げろと言われたが、見惚れていたのか戦慄していたのか、俺は逃げられなかった。今思えば、これも悪手だったな。
しばらく戦闘が続くと、火が急激に勢いを増した。どこかの壁が崩れ、酸素を多く取り込んだようだ。
「ッチ。あばよ、対魂。」
すると、火炎瓶の男は爆弾を投げつけてきた。
「ッ!離れろ!」
「ッ!」
彼はこちらの目を見てそう言ってきたので、俺はすぐにその場を離れた。
すると二秒後、背後から巨大な爆発音が聞こえてきた。だが、命は助かった。
煙が晴れると、先程は火に照らされ顔がよく見えなかったリボルバーの男の姿があった。
「……君は……。」
「何故立ち留まった。お前が避難していたのは確認出来ている。……そこの女を助けに行ったのか。」
「……はい。」
「何やってんだ。あの優柔不断さで、人の命を預かれると思ったか?……何もかもが中途半端。じゃあな。」
そう言い捨てて背を向け立ち去る彼に、俺は言った。
「君は何者なんだ。俺の何が分かるっていうんだ!」
すると、彼は立ち止まって顔だけこちらに向けて言った。
「薔羨。お前の実績を知る者だ。……期待外れもいいところだったがな。」
そして、今度こそ薔羨は去ってしまった。
燈花。奴は俺の方向性を大きく変えた。ずっと誰かにとって手の届かない存在だった俺に、“手が届かない”という感情を感じさせた。薔羨もそうだ。その手が届かない奴に、互角の実力を持っていた。
そして彼が放った言葉“何もかもが中途半端。”が心に突き刺さり、司法の世界への突入を諦めた。退くに退けなかっただけで、絶対という拘りは無かったし。
“優柔不断”という突如突き付けられた弱点を克服するために、人生を捧げる事を決意した。
彼らが生きる“裏社会”で。
「はは……いつまでもこの優柔不断さは、治らない。目標までまだほど遠い……。」
あの後、資格勉強をした時のように時間を費やして、急速に腕を磨いた。そして、サイレンスに所属して、彼の属するEnterに配属できた。
しかし、それでも差は歴然だった。もう一人、文字通りの怪物も居たし。
付き合っていた月歌も、離れたくないって言って、元の人生を捨てて後を着いてきたし、やり遂げなければならない。
「…俺のここまでの人生。優柔不断だった……愛する人も巻き込んでしまったし、五年近くの夢に対する努力も捨ててきた。……今更、考えたって……仕方が無いな……!」
人を駒のように扱い、最後には捨てる燈花。このある意味似た者であるこいつに、一方的に因縁を感じていた。
Enter自体とも、何度もぶつかった因縁がある。それに、こいつはあの事件以降も、正体を隠してるつもりで俺の前に現れていた。
「人生を棄てたエリート。」そんな囁きに、何度折れそうになった事か。今更司法ルートには戻れる訳が無いというのに。
「ねぇ燈花。確かに俺は弱いよ。意思が不安定。散々時間を費やした挙句、勝率が80%に達したら心変わりする。…自分自身でもよく分からないな。ただ、一つ不変な事がある。………仲間を捨てる事は絶対にしない。今も、これからも!」
感情を読むのが得意な俺が、仲間を捨てられる訳が無い。今なら分かるよ。あの時、月歌を助けに行った理由が。
「あの戦慄していた馬鹿がか?笑わせてくれる。」
燈花はそう言って、ショットガンを構えた。
俺もそれに応戦するように、覚悟を決め、武器を取り出した。
確実な勝算は無い。あくまでも時間を稼ぐのが目的だ。ただ、この状態の方が、昔の俺だったら好んでいただろう。
きっと求めていたものは……“スリル”だったんだ。
「月歌…!月歌!」
「ッ!要!」
二階階段の踊り場付近で、月歌と合流できた。火が燃え滾っており、降りるのは困難だった。
俺は屈んで手を差し出す。
「俺が担ぐ。」
「え…でも……。」
「いいから。離さないためにも……頼む。」
「……分かった。」
そうして月歌を抱っこし、火の中を突き進んだ。
火花が足元で飛び散る。床も崩れそうだった。俺は月歌の案内の元、玄関に向けて走っていった。
しかし、奴は現れた。
「まだ生徒の避難が済んでいなかったかぁ!……ここの生徒ではないな。そんなのどうでもいいが。」
火炎瓶を持った男。俺はそいつに得体の知れなさを感じた。狂気を感じた。
ゆっくり迫りくる奴に、背後から火が押し寄せる状況に、俺は戦慄するしかなかった。
正直、諦めていたのかもしれない。
「弱者がいっちょ前に戻ってくんなよ。おら。死ねぇ!」
そして、銃声がした。しかし、感覚は消えない。閉じた目を開くと、目の前に一人の男が背を向けて立っていた。銃痕は、その男が持つ鉄板にあった。
背を向けた男が言った。
「早く逃げろ。死にたくなければ。」
そう言うと、男はリボルバーを取り出し、跳躍して火炎瓶の男に発砲した。
「三度目の正直。そろそろ因縁を断ち切るとするか。対魂!」
「こっちのセリフだ。学校襲撃も、どんどんこちらの仕事が増える手段取りやがって。蓬莱が黙ってられないじゃないか。」
その後も、激しい銃撃戦が目の前で展開されていた。
逃げろと言われたが、見惚れていたのか戦慄していたのか、俺は逃げられなかった。今思えば、これも悪手だったな。
しばらく戦闘が続くと、火が急激に勢いを増した。どこかの壁が崩れ、酸素を多く取り込んだようだ。
「ッチ。あばよ、対魂。」
すると、火炎瓶の男は爆弾を投げつけてきた。
「ッ!離れろ!」
「ッ!」
彼はこちらの目を見てそう言ってきたので、俺はすぐにその場を離れた。
すると二秒後、背後から巨大な爆発音が聞こえてきた。だが、命は助かった。
煙が晴れると、先程は火に照らされ顔がよく見えなかったリボルバーの男の姿があった。
「……君は……。」
「何故立ち留まった。お前が避難していたのは確認出来ている。……そこの女を助けに行ったのか。」
「……はい。」
「何やってんだ。あの優柔不断さで、人の命を預かれると思ったか?……何もかもが中途半端。じゃあな。」
そう言い捨てて背を向け立ち去る彼に、俺は言った。
「君は何者なんだ。俺の何が分かるっていうんだ!」
すると、彼は立ち止まって顔だけこちらに向けて言った。
「薔羨。お前の実績を知る者だ。……期待外れもいいところだったがな。」
そして、今度こそ薔羨は去ってしまった。
燈花。奴は俺の方向性を大きく変えた。ずっと誰かにとって手の届かない存在だった俺に、“手が届かない”という感情を感じさせた。薔羨もそうだ。その手が届かない奴に、互角の実力を持っていた。
そして彼が放った言葉“何もかもが中途半端。”が心に突き刺さり、司法の世界への突入を諦めた。退くに退けなかっただけで、絶対という拘りは無かったし。
“優柔不断”という突如突き付けられた弱点を克服するために、人生を捧げる事を決意した。
彼らが生きる“裏社会”で。
「はは……いつまでもこの優柔不断さは、治らない。目標までまだほど遠い……。」
あの後、資格勉強をした時のように時間を費やして、急速に腕を磨いた。そして、サイレンスに所属して、彼の属するEnterに配属できた。
しかし、それでも差は歴然だった。もう一人、文字通りの怪物も居たし。
付き合っていた月歌も、離れたくないって言って、元の人生を捨てて後を着いてきたし、やり遂げなければならない。
「…俺のここまでの人生。優柔不断だった……愛する人も巻き込んでしまったし、五年近くの夢に対する努力も捨ててきた。……今更、考えたって……仕方が無いな……!」
人を駒のように扱い、最後には捨てる燈花。このある意味似た者であるこいつに、一方的に因縁を感じていた。
Enter自体とも、何度もぶつかった因縁がある。それに、こいつはあの事件以降も、正体を隠してるつもりで俺の前に現れていた。
「人生を棄てたエリート。」そんな囁きに、何度折れそうになった事か。今更司法ルートには戻れる訳が無いというのに。
「ねぇ燈花。確かに俺は弱いよ。意思が不安定。散々時間を費やした挙句、勝率が80%に達したら心変わりする。…自分自身でもよく分からないな。ただ、一つ不変な事がある。………仲間を捨てる事は絶対にしない。今も、これからも!」
感情を読むのが得意な俺が、仲間を捨てられる訳が無い。今なら分かるよ。あの時、月歌を助けに行った理由が。
「あの戦慄していた馬鹿がか?笑わせてくれる。」
燈花はそう言って、ショットガンを構えた。
俺もそれに応戦するように、覚悟を決め、武器を取り出した。
確実な勝算は無い。あくまでも時間を稼ぐのが目的だ。ただ、この状態の方が、昔の俺だったら好んでいただろう。
きっと求めていたものは……“スリル”だったんだ。
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